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JKときどき死神  作者:
第四章 眠り姫
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会議は踊る

 その日の授業が終わり教科書とノートをカバンに詰めた僕はやや憂鬱な気分で席を立った。

「大吉、今日も部活か?」健が尋ねた。

「ああ、一応」

「最近人が変わったみたいに熱心だな」堂島が冷やかしてきた。

「本当は行きたいわけじゃないんだけど――色々あるんだ」

 イニシエーションを無事終えた遠藤はオカ研の正式な部員として迎えられることとなった。どうにか廃部の危機を乗り越えたまでは良かったが、ここにきて新たな問題が発生していた。部活動として何もすることがないということだ。遠藤が入部してはや一週間が経つがいまだに活動らしい活動をしていない。

 実を言えばこの問題は「黄金世代」が卒業してからずっと存在し続けていた。ただ僕が幽霊部員になっていたため、それが表面化しなかったに過ぎない。「黄金世代」が健在だった頃は黙っていても彼らが部活動の企画全般を積極的に進めてくれたので、轡と僕はそれに乗っかっていれば良かった。

 しかし、楽をしていたツケがここにきて回ってきた。本来頼みの綱である舟木部長は、もともと部に縛られず自由気ままに好きなときに好きなことをするタイプであったため、現に今は流浪の民となり戦力外である。僕はそもそもオカルトに興味がないうえ面倒くさがりなので企画など絶対に嫌だ。残るは轡だが、彼女も自分から積極的に動くタイプではない。だから先のイニシエーションを彼女がすべて企画したのはある意味奇跡だったと言って良い。

 したがって新生オカ研の記念すべき最初の一週間は極めて不毛な会議に費やされることとなった。議題はずばり今後どういった部活動をすべきかであった。轡は「黄金世代」がいた頃のように色々なオカルトスポットに行ったりしたいようであったが、自分でそれを企画するふんぎりがつかなかった。

 僕は本音を言えば前と同じように幽霊部員に戻りたかったため、轡の提案にああでもないこうでもないとケチをつけていた。そんな僕たちが織り成す出口の見えない議論に遠藤は辛抱強く耳を傾けていた。一週間も。しかし良い加減彼女の堪忍袋の緒が切れるのも時間の問題だと思われた。

「……では……第6回……オカ研戦略会議を始めたいと思います」轡がホワイトボードに「6」と書き込んだ。

「……意見のある人は……挙手してください」

「はい」

 それまで沈黙を守ってきた遠藤が手を挙げた。

「……遠藤さん……どうぞ」

「新入部員なのであまり口出ししない方がいいのかなって思ってたんですけど、このままだと一向にらちがあかないので発言させてもらいます――」

 遠藤の口調は淡々としてはいたが、その毒のこもった言葉遣いからいって相当頭にきているのだろう。

「――まず、大吉せんぱいは轡せんぱいの意見をもっと肯定的に検討してください。どんな意見も頭ごなしに否定してるばかりで、そのわりに代替案も出さないのは無責任です」

「すみません」僕は謝るほかなかった。

「そもそもオカ研の部長代理は大吉せんぱいなんですから、本来積極的に動かなくちゃならないのはせんぱいなのに、何でこの会議をしきってるのが轡せんぱいなんですか?」

「おっしゃるとおりです」

「何より私をこの部に勧誘しといて自分はさっさと幽霊部員化しようとしてるのが見え見えなので腹が立ちます」

「万死に値します」

「……やめて……蒲生君を責めないで」轡がおどおどしながら遠藤をなだめつかせようとしていた。

「轡せんぱいも轡せんぱいです。大吉せんぱいを甘やかしすぎなんです」

「……」

「とにかく大吉せんぱいは轡せんぱいの提案の中で実行できそうなものを選んで企画してください」

「了解しました」反論は許されそうにない雰囲気だった。

「ただ轡せんぱいの案は遠出するものが多いので、どうしても休日がメインになってくると思います。問題は平日の活動をどうするかなんですが――そういえば、悩み相談とか受付けてないんですか?」

「いや、してないけど。なんで?」

「だってそこの入り口のところに貼ってあるじゃないですか」

「ああ、あれのことか――」

僕は部室の廊下側に貼ってある〈オカルト研究会 求ム! 怪奇現象情報 相談等も随時受付けてマス〉と書かれたポスターのことを思い出した。

「俺たちが入部する前からあれは貼ってあるけど、相談に来た人なんて今までいたっけ?」僕は轡の方を見たが、彼女は首を横に振った。

「そもそもオカ研の存在を知ってる人自体が珍しいから」

「そんなに知名度ないんですか……」

「面目ない」

「……蒲生君のせいじゃない」

「いえ、むしろ大吉せんぱいはすごいと思います。まがりなりにもこんな状態の部を潰さずに存続させてきたんですから。それにこれは私の勘ですけど、じきに相談をしたいという人がやってくると思います」

「え? それはどういう――」

 僕の質問を遮るように部室のドアを叩く音がした。

「どうぞ」

「轡っちいるー?」そろりと開かれた扉の隙間から顔を出したのは宇賀神だった。

「……いる」

「お、大吉君もいるね。悪いんだけど、今時間大丈夫?」

「いいけど……」

「ほら、オッケー出たよ。入って入って」

 予期せぬ人物の訪問に轡と僕は少なからず驚いたが、それ以上に宇賀神に促されて姿を現した人物の方が意外だった。

「ごめんね、忙しいところ」

 それは誰であろう委員長であった。

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