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JKときどき死神  作者:
第四章 眠り姫
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ハイパーソムニア

「――で、あるからして、君たち学生の本分は学業であり、しっかりとそれに専念してもらいたい。少なくとも私の三十年の教師生活においてこのような理由で全校集会を開くというのは前代未聞であり、まことに遺憾としか言いようがなく――」

 延々と続く校長の説教に僕は周囲に気取られないようどうにかあくびを噛み殺した。そして退屈を紛らすためにあたりをキョロキョロと観察した。たいして広くもない体育館に全校生徒が起立して詰め込まれていたが、なかには案の定立った状態で舟をこぐ器用なやつがいる。注意されてこれだもんなあ。

 イニシエーションを行った翌週の月曜日に臨時の全校集会が開かれ、生徒たちは体育館に集められた。本当に情けない話ではあるのだが、その理由は授業中の居眠りがあまりにも多いということであった。たしかに今年の二月ごろから僕の教室でも居眠りする生徒が明らかに増えていた。

 僕なんかは不真面目な生徒であったから、もとより授業中だろうが何だろうが睡魔に襲われれば無抵抗で寝ていたのだが、平素は授業態度が良好な生徒までその頃からうつらうつらとしている光景が見られるようになった。最近ではクラスの半数以上の生徒が意識を失っていることも珍しくなくなっていた。季節の変わり目で気温も徐々に上がってきていたから、きっとそのせいだろうと生徒側はのんきなことを考えていたが、学校側は「気が緩んでいる」と判断したのかこうして全校集会が開かれる運びとなったのだ。

「ふぁあ――眠い――」ようやく全校集会が終わり教室へ戻る途中、周囲をはばかる必要がなくなった僕は顎が外れそうなほど大きなあくびをした。

「別にそんな夜更かししてるわけでもないのに――ふぁあ――なんでこんなに眠いんだろな」健もつられてあくびをした。

「ちょっと異常だよな――ふぁあ――ていうか眠いもんは眠いんだからどうしようもないよな。こっちだってなるべく寝ないようにしてるけど――ふぁあ――それで我慢できれば苦労しないわけで」堂島までつられてあくびをしていた。

「でもこれで改善されなかったら今度はどうなるんだろうな。全校集会なんかじゃ効き目がないって分かったら?」

「立ったまま授業を受けさせるんじゃないか? それならさすがに寝れないだろ」

「いや、さっき立ったまま寝てたやついたぞ」

「じゃあ一回寝るごとに服を一枚ずつ脱がせていくとか?」

「冴えてるなあ堂島。それなら本人だって起きるし、周りだって気になって目が覚めるから一石二鳥だな」健が感心したように言った。

「野球拳かよ――脱ぐのは女だけにしてほしいな」

「お前、遠藤さんというものがありながら他の女の裸も見たいのかよ。知らない間に随分贅沢になったな」堂島が突っかかってきた。

「いや、この前も言ったけど遠藤とはそんな仲じゃないから」

「またそんなこと言って――肝試しのときだっていい雰囲気だったろ。ただお前には轡さんもいるからな。どっちか一人に絞れよ」

「大吉は轡さんと遠藤さん、付き合うならどっちがいいんだ?」

 健としては何気ない質問のつもりだったのだろうがこれはなかなかの難問であった。遠藤はそもそも人間ではないしあまりに謎が多すぎる。何を考えているのかも良く分からない。ただ、外見に関しては圧勝だった。

「うーん、遠藤かな」とりあえず率直な意見を述べておいた。

「大吉ってメンクイだよな」健がやや呆れた様子で言った

「うるせえよ。じゃあお前は今の彼女と宇賀神さんだったらどっちがいいんだ?」

 隣まちの高校に通う「メグちゃん」はもともと同じ中学だったので顔は知っていたが、はっきり言ってものすごくかわいいといった感じではなく宇賀神の足元にも及ばない。

「論外だよ、俺はメグちゃん一筋だから」健は平然と言ってのけた。

「またきれいごとを……」

「顔だけで恋愛はできないんだよ。それに女の子は無数にいるんだから、他にもっとかわいい子がいるかもしれないなんて考えてたらきりがないだろ。自分にこんな素敵な彼女がいるってことを幸運に思うべきなんだ。足るを知らなきゃな」

「なに悟ったようなこと言ってんだよ。それになんだか遠回しに俺が最低なやつだって言われてる気がする」

「安心しろ大吉、俺はお前のナチュラルクズなところを評価してるから。反対にこいつみたいにきれいごとしか言わないやつが一番許せない。どうせこのあいだは宇賀神と二人きりでいちゃついてたんだろ?」堂島が恨みがましく言った。ていうかナチュラルクズってなんだよ。ただのクズじゃないか。

「別になにもなかったって。なんか向こうがぐいぐいリードしようとするから、ただ疲れただけのような気がする。宇賀神さんあんな所でも全然ビビらないんだもん、相当度胸あるよ。でもそのくせ俺の腕をぎゅっと抱きしめてくっついてくるんだよな。それがまたおっぱいスゲーでかいからスゲー当たるんだよ」

「……健、もうそれ以上は言わんでいい」僕は堂島の心中を慮って話を中断させた。

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