白金高校 佐倉梨玖の日常
西暦2032年夏 日本 首都 東京
「じゃあまた明日な~。」
チャイムが鳴る。どっと教室は騒がしくなる。
いつもの光景だ。そういえば課題なんだっけ。
そんなことを思いながらうとうとしていると、拓也がやって来る。
「おーい梨玖~ゲーセン行こうぜ、ゲーセン!」
「うぃ~あいよ~了解~かしこまりっ」
ふざけた返事をし、鞄にノートをしまう。
俺―佐倉梨玖は、いつも通り、友達の拓也と教室を出た。
「なぁ~梨玖、お前今朝のニュース見たか?」
拓也が下駄箱で言った。
「ん?いや知らん。何かあったの?」
朝はニュースなんて見る暇ないしなぁ。
「それがさ、聞いて驚け?なんとまた殺人だよ…それも5人!なんかすげえよな、最近」
「そだねー」
はぁ、殺人事件か……
ここ1ヶ月の間に、都内で殺人事件が10件報道されているらしい。それも拓也に聞いたものは全て複数人が被害者になっていて、全員死亡。犯人の顔もわかってないとか。
こう身近の事件となると、怖いもんだなぁ…
「なんか最近物騒だよな……っておいおい、それより早くゲーセン行こうぜ!」
「あぁ、ごめんごめん。じゃ行くか」
ふぁぁ…眠い……靴を履き、校門を出て…って、
「あれ?」
「どうした?」
「やっべ、今日の課題忘れてた!」
「えぇ~、早く取ってこいよ~」
あぁ、と返事をして、俺は走って下駄箱へ向かう。
「はぁ~、にしても課題多いよな……授業にもついてけてるか不安だし」
独り文句を言いながら、校門に戻ってくる。
「学校なくなんねぇかなぁ、いっそドカーンと!はは…」
自分の教室―三階の辺りを見ながら走っていると、急に顎に何かがぶつかった。衝撃が走る。
「っ痛ってぇ!あぁ、ごめんな、大丈夫?」
相手は一回り小さな女の子だった。後輩だろう、制服を着ている。金髪だ。珍しい。
「別に大丈夫。」
小さいながらもよく通る声で、怪我も無さそうで安心した。
「そっか、じゃあ俺行くから」
「不幸な人……」
「え?」
そのままささっと走って行ってしまった。最後の言葉、よく聞こえなかったな…
いけない、早く教室へ急ごう。
再び走り出した、その時――
俺は昇降口から噴き出した爆風に吹き飛ばされた。