10日目 ー秘密ー
10日目 晴れ
佳澄ちゃんがいつ死んでも可笑しくない状況まで陥っていることに気付いた私は、今日痛む脚を引き摺りながら探索に出掛けてきた。
極度の空腹感、疲労感、絶望感、虚無感に襲われても尚、私は這いずることを止めなかった。
脚の激痛に狂いそうになりながらも、この地特有の褐色土塗れになりながらも、涙で視界が暈けながらも…。
「絶対に佳澄ちゃんを助ける…!」と…そう、強く意志を持って。
しかし、待ち受けていた現実はどこまでも非情だった。
私の保持していたすべての気力を使い果たしても尚、距離にすれば数十m程しか進むことができなかったのだ。
自分の不甲斐なさに泣いた。泣き続けた。涙が枯れるまで泣いた。
気付けば日が暮れ始めていた。そして、泣き疲れて地面と同一化した私の耳元に、律動的な足音が響いた。
その足音の主は…
佳澄ちゃんだった。
瀕死状態のはずの佳澄ちゃんだった。
だが、目の前で平然と私に手を差し伸べてきた彼女は、重症であることを感じさせない。
「高熱は…?佳澄ちゃん、もう身体は大丈夫なの…?」と訊くと、私のお陰で治ったと言う。
そこから、佳澄ちゃんに導かれて、私は拠点まで戻ることができたのだ。
彼女は常に笑顔を絶やさなかった。
何度も高熱が下がった理由を尋ねたが、“秘密”としか答えてはもらえなかった。
拠点に戻った頃には、辺りは星もない暗闇に染まっていた。日記は到底執筆できそうになかったので、その日の朝…つまり、11日目の朝にこれを書いている。
昨日は一日で色々な出来事が遭ったせいで、非常に長い文章になってしまった。そろそろ筆を止めようと思う。
今は水を得た魚のように元気になった佳澄ちゃんに、食料調達に向かってもらっている。私は殆ど動けないので、佳澄ちゃんだけが頼りだ。