雪原にて
なし
白い粉雪
くらい世界が
ゆっくり
ゆっくり
あたたかい光に
あふれていく
無音
盆地の低い山々
昔、昔、大昔
氷河が山をけずって
平らになったとか
ならないとか
ひがしのやまやまの
まん中から
日が昇り始めた
山端がかがやく
力があふれてこぼれるように
山の端から日がでる
雲にかくれた
二重に雲がかさなっている
またもとの世界
がんばれ 自分を応援するように
応援する
あつい雲とくもの間に
パラダイスか
セカンドインパクト
空中にいろいろなものが
うかびあがるよう
ひときわ明るい空間
天使のほほえみ
パラダイスか
雲にまけるな
空間が無くなる
そして
一筋の光がこぼれだす
そしてまた小さくなる
二重の雲がなくなる
シャッター音がひびきわたる
「いいものみせてもらったな」
妻のお父さんの笑顔がいい。
よかった。
日の出の写真を撮り続けているそうで
どうやら
珍しい光景だったようだ
昨日から
いや正確には昨夜から
私は妻の実家に来ている
昨夜はいきなりの
大雪で
雪道に不慣れな私は
ただひたすらに到着を
祈るばかり
しかしながら
私は東京育ちなので
雪道を運転したこともなく
こればかりはどうしようもない
きっと
妻は、まだ運転疲れで寝ているだろう
実家に
着いた当初もひと悶着
「あんたら、おそかったなし」
義理のお母さんのやさしい一言も
「だから電車にせいよと
いったべ」
義理のお父さんがぴしゃりと
一言
その後の、妻の不機嫌なこと
この上ない
子どもが冬休みに入って
早めに
妻の実家に帰省
それでも
取りなしての夕食
なべをつつきながら
義理のお父さんと
お母さんが
おもしろい話を
わたしたちの
通った国道の山道
ものすごい数のサルがいるらしい
そして
集団化している
時々
車を囲むらしい
だから停車厳禁
ここらの人も何人もみてるそうだ
昨夜は前が見えずに
それどころではなく
にわかには
信じられない
そんな話から
話題は来年の干支にうつっていき
来年は申年で
妻の大好きな風水やら
陰陽五行では
ひのえさるは「大変革」の
年らしい
私もダメ夫から
変革しようか
そんなことを酔った頭で思うも
さらに皆の話から
厄年も判明
小一時間まつも
その後ますます
雪雲に覆われて
天候は回復しなかった
小雪もちらつきはじめた
太陽はみられず
白い世界になっていく
お義父さんが
「こりゃあ、
またふぶくぞ。
それにしてもまあ、珍しいもの
みせてもらえたな」
「あんたが来てくれた
おかげかもな」
口の端で笑う
車に戻って
雪を払いながら
ぼそりと一言
「まあ、いろいろあるけど
娘をよろしくな」
なんでもお見通しなのだろう
その一言に
思わず
涙ぐむ
「今年もいい年でしたね」
フロントガラスの雪を払い
鼻水をすすりながら
その一言を
かえすのが
精いっぱいであった。
来年もよい年に
なるだろう
雪原をひたすらに
とばす風景を
みながら
そう思った。
結局は帰省してしまい、パチンコ大負けはいえずじまい。。。
この後は、毎年恒例年末企画。
「Top of the world」、けやきの物語です。お楽しみに。