8 泥棒とギルド
町の中央にきてみると、噴水はすぐに見つかった。
石垣で囲まれた池の中央に、天使をモチーフとした像がたっている。
天使というより、女神だな。
女神が持つ壺から、水が溢れ出している。
綺麗な町だな。
町の造りはおおよそレンガか。
まるでヨーロッパだ。行ったことないけど。
辺りを見渡すと、大きな看板が三つ並んでいる。
字は読めないが、武装した人が出入りしているので、間違いなくあのどれかがギルドだろう。
ギルドの隣が武器屋。でその次がアイテム屋なので、真ん中が武器屋なのはわかるが、どちらがギルドか?
まっどっちでもいいか。
左端の店に入ると、内装は銀行の様な造りになっていた。たぶんここで正解か。
銀行と違うところといえば、壁一面に紙切れが貼り付けられていて、武装した人がそれらを眺めているところか。
受け付けが空いていたので、訪ねてみた。
「すいま……」
「はい?」
「せ、あ…の…」
び
美人だ。
見たことないぐらいの
美人だ。
あまりの衝撃に時が止まった。
長く透き通るような金髪。
大きくて、優しい瞳。
そこから伸びる睫毛は、長く微かにカールしている。
鼻筋は通り、白い肌にピンクの唇が可愛らしい。
そんな美人が上目遣いで、こちらを見ている。
その長く尖った耳に
尖った耳ッ⁉
「あの、どうかなさいましたか?」
声まで透き通っとるで!
でも耳ッ⁉
なっまさか、そんな
エルフか⁉
「こちらは冒険者ギルドになりますが、御用件は?」
「あの、その」
ダメだ。
顔みたら喋れねぇ。
「はい?」
エルフが笑顔でこっちを見てる。
やめてくれぇ〜
て、照れてしまう。
そんなまっすぐ、こっちを見ないで〜
仕方が無いのでこちらが視線を外し、俯きぎみに話した。
「冒険者っやつについて詳しく聞きたいのですが。」
「はい。冒険者ですね。ではご説明致します。」
美人エルフの言うには、冒険者とは基本的に誰でもなれるらしい。
冒険者は壁に貼り付けてある依頼から、自分の実力に見合った仕事を受け、成功すれば報酬をもらうことができる。
だが、冒険者にはランクがあり、それぞれのランクにより受注できる依頼が異なる。
依頼には犬の世話から、採取、討伐などいろいろあるようだ。
「ギルドって、ここだけしかないんですか?」
「他の町にいけばありますが、この町では冒険者ギルドはここだけです。商人ギルドや、工業ギルトは町の商工業エリアに。また工業ギルトとは別に武器などを作る鍛……」
美人エルフはマシンガンのように喋りだした。
真面目だ。
この人、美人だけどド真面目だ。
一つひとつ丁寧に説明してくれる。
聞いてないことまで。
まだ喋ってるよ。
この町の人は喋り好きばっかりなのか?
ともあれ、相手は美人エルフなので、正々堂々と顔を見つめられるのは正直嬉しい。
チラチラとしか視線を合わせられないが、たっぷり堪能させて頂きました。
いろんな意味を込めて
「ありがとうございます。」
「他にお手伝いできることはありますか?」
ん〜特に興味深いギルドもないし、冒険者ギルドに入ろうかな。
手続きをしてもらうと、案外簡単なものだった。
書類を書いたりすることもなく、こっちの世界の文字の読み書きができない俺としては助かった。
いくつか質問に答え、右手を硝子のような透明な板に貼り付け終了。
一瞬眩しく光ったが、特に痛みなどは感じなかった。
ただ
「登録名をお願いします。」
どうしよう。
日本人としての名前はこっちの世界からするとどうなんだろう?変ではないだろうか?
というより、転生したってことは生まれ変わったわけだから、今の俺は名無しか?
「人に名前をたずねるときは、まず自分から名乗るものだ。」
申し訳ないと思いつつ、とりあえずエルフさんの名前を聞いて参考にしよう。
てか、自然に名前を聞けたじゃん!
グッジョブ俺!
「失礼いたしました。エルフ族の本名は人間族には聞き取れませんので。人間族の言葉で一番発音が似ているシーラとお呼びください。」
シーラさんかぁ、綺麗な名前だなぁ。
「ちなみにエルフ族の言葉では、聖なるという意味を持っています。」
聖なるか。シーラさんにはピッタリの名前だ。
じゃあ、俺は
「俺の名前はシュンです。俊足、俊敏という意味を込めました。」
「込めました?」
「あ、いや、込められています。」
「はい、ではシュン様でご登録いたします。」
シーラさんの笑顔が眩しい。
あぁ、これが恋ってやつか。
「これで登録は終了です。ギルドカードの提示を求められたら、右手をかざして、ギルドカードオープンと唱えてください。ギルドカードを直すときは、右手に押し付けるだけで大丈夫です。」
ほうほう
「ギルドカードオープン」
うわっ、なんかカード出てきた。
青く澄んだ色のカードが自分の掌から現れた。
なんか変な気分だ。
「ギルトカードの種類やランクによってカードの色が変わります。」
「なるほど。」
「ギルトカードの取り扱いにはお気をつけ下さい。再発行はできませんので。あとこれは大きな声では言えないのですが」
シーラさんが声を潜めて、グッと近くに顔を寄せてきた。
ヤバイ、心臓止まりそう
「我々のドロップアイテムはギルトカードになります。闇社会にはギルトカードのコレクターもいるという噂ですので、お気をつけ下さい。特に冒険者ギルドカードが人気らしいのです。」
ちょっ、おまっ
そういうことは先に言ってぇぇぇえ