表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第1話(エピローグ)

 5月のゴールデンウィークが明け、実力テストも終わって最初の木曜日がやってきた。

 時刻は1時。あと15分でいつもの警告音サイレンと共にバトルロイヤルがスタートする。

 グラウンドには中等部高等部からの選りすぐりの生徒たち――勇者候補生の皆さんが打倒魔王を旗印に集まっている。

 その目は爛々と正義に燃え――いや、そうじゃないな。魔王が叶えてくれるという欲望に熱く燃えていらっしゃる。


 地位でも名誉でも、金でも富でも何でも全てを叶えてくれる。

 学園1の美姫を部下にすることも、彼女を恋人にすることだって出来ちゃうのだから燃えない方がどうかしている。

 ちなみに校内報道部が取ったアンケートによると、魔王を恋人にしたい希望者はなぜか女生徒の方が圧倒的に多いらしい。どうなっているんだ一体この国は。


 前回のバトルからゴールデンウィークや中間テストを挟み、期間がだいぶ空いたせいか今日のバトルはかなりの人数が戦線復帰している。前回様子見していた者も参加して今回は400人を超えてる大人数らしい。これは大乱戦になりそうだ。


「……まさか」

 ぼくは顔面が蒼白になるのを感じた。

 そんな馬鹿な――有り得ない人物が敵軍に混ざっているではないか。

「真琴君。君が魔王側にいるのは非常に残念だが……いや、これはむしろ好都合と言うべきか?」

 そう呟いて極黒の天姫は少し考え込んだ。そしてにんまりと嬉しそうに微笑む。

「君と遠慮なく戦り合えるのは2年ぶりだからな。前回は私の敗北だったが今回はそうはいかんぞ!!」

 この学園で魔王と唯一タメを張る、もう一人の学園のトップアイドルがなぜか参戦していらっしゃる。

「なんでイオ姉が参加しているのさ!? 生徒会は参加しないんじゃなかったのっ!!」

 そう叫んだぼくは背後から強烈な殺気を感じて、慌てて振り返った。

 じと目でアリエステルさんがぼくを睨んでいる。

「真琴くん、私を『アリエステルさん』って相変わらず他人行儀に呼ぶクセに、何で伊織のことはイオ姉って呼ぶんですか!?」

 プンとむくれる魔王さま。

「ふふっ……悪いな魔王。私と真琴君との間には10年もの歴史の積み重ねがあるのだ。それはたった1ヶ月やそこらで追いつけられるほど甘くないのだよ。我らの絆はな」

「ついこの間まで疎遠だったけどね……」

 ぼくは大きな溜息を吐いた。

「うるさいわねっ。天使は天界メールの配達人でもやってなさいよ!!」

 アリエステルさんの罵声にフッと伊織さんは鼻を鳴らし、サッと華麗に黒髪を掻き上げ胸を張る。

 天然のキューティクルと眩いエンジェルハイロウがきらりと輝く。爽やかかつ絵になっている。比良坂くんとは大違いだ。

「安心しろ。私は先日公僕を首になったのでな。これからはまた24時間真琴君と一緒にいてあげることが出来る。そうだ、また剣道の練習を一緒にしようじゃないか。遠慮するな真琴君」

「はぁっ!?」

 アリエステルさんが声を荒げた。

「それに安心しろ。私が魔王に勝って、お前は正式に鴇島真琴となるのだ」

「はぁぁぁぁぁ!?」

 今度はぼくが素っ頓狂な声をあげる。

「面白いことを言いますわねこの腐れ天使ビッチ。人の弟にちょっかいをだそうなんて100万年早いですわよ?」

 魔王さまの額に青筋が浮かんでらっしゃいます。

 ああっ、背景には巨大な鉄巨人が陽炎のようにズゴゴと現れて。

「フッ。真琴君がいさみと結婚すれば晴れて真琴君は私の義弟だ。なに、そう心配するな魔王。真琴君の姉役はこの10年私がやってきた。もちろんこれからも私がしっかり真琴君を守護してやる……守護天使兼姉として。いやむしろ姉オンリーでも私は一向に構わんっ!」

「ちょっと待ってよ!? 何言ってんのイオ姉っ!!」

 伊織さんの背中をポカポカ叩く鴇島勇。なぜか顔が真っ赤っかになっている。

 ああ、ユウちゃん今回も参加する気なのね。


 ゴゥ!!――凄まじい怒りの魔力オーラがアリエステルさんの身体からほとばしり、彼女の身体が宙に舞う。漆黒の銀河――魔王のガウンをその身に纏った彼女の姿に観客席から歓声が沸き起こる。

 ちなみに先のゴールデンウィークに封魔結界が1つ解かれたせいで、彼女の力は元の3万2768分の1になっている。


 バサッ!!――伊織さんが大きな白い翼を広げ宙に舞った。同じく観客席からの大歓声が沸き起こる。

 真白い銀の羽根を広げる天使。この日本でただ一人、正天使の認定を受けた本物の天使の姿だ。

 極星ここにあいまみえる。その姿に試合会場の興奮ボルテージはMAX寸前。

「言っておきますけど、親友だからって手加減はしませんよ、このシスコン冷血天使!」

「上等だ。こい、ブラコン純愛魔王!!」

 二人は同時に高らかに叫んだ。

「この勝負、勝った方が真琴くんにお姉ちゃんと呼ばれるんですからねっ!!」




「いやぁー大変だねぇ。柊くんも」

 観覧席から望遠レンズの付いた一眼レフデジタルカメラを片手に呟く比良坂浩介。

 今日はサイコーのシャッターチャンスに恵まれそうだ。

「そぉ? 私は面白いけどなー」

 隣にいるのはポップコーンが山盛り詰まった紙バケツを片手にした奥寺由香里。

 報道部に入部した彼女は柊姉弟の密着取材を只今敢行中だ。

 彼らはすっかりこの状況を楽しんでいた。

 ゴールデンウィークの事件もなかなか面白いものだったが――果たしてこれからどんな事件に巻き込まれるのやら。運命特異点からはますます目が離せない。


 もう既に地上では大乱戦が始まっている。


 現在魔王軍は魔界軍地上派遣征夷大将軍・柊真琴を含めてたったの12名しかいない。

 でも、もしかすると今後は勢力が大拡大するかも。


 魔王が育てる勇者たちがこの世界をどう救うのか――それはこれから彼らが行動する未来の選択肢次第。



【おわり】



お姉ちゃんは○○さまっ、最後までお読み頂きありがとうございました。


今作はライブドアblogのライトなラノベコンテンスと向けに執筆した作品に修正を加えたものです。

元々はブログでの不定期連載だったので、分割パートを編集して1本にまとめようかな、とも考えたのですが結構面倒そうなのとテイストは残しておきたかったのでそのままにしました。


現在2話を構想中です。

宜しければ感想など頂けると嬉しいです。

(ごっち)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ