呼び出し・・・?
連作に行き詰った時にふと思いついたお話。
突っ込みどころ満載ですがスルースキルを発動させてください。
下駄箱に一通の封筒が入っていた。
宛名は龍崎美夜
差出人不明
一緒にいた友人たちは色めきだっているが……
これは呼び出し状だ……
決して友人たちが騒いでいるような『恋文』ではない
男ではなく女からの手紙だからな
捉えずカッターの刃などがない事を確認して封を開ける。
『放課後、1-Bの教室まで来てください』
便箋にはそれだけしか書かれていない。
だが、私はこれが誰が出したのか分かった。
それに気づかないふりをして友人たちにわざと手紙を見せる。
「ねえ、こんな事を書かれているのですがどうしたらよろしいかしら」
困惑の表情を浮かべると友人たちは
「美夜様。ご不安なら私達もご一緒いたしますわ。手紙にはひとりできて欲しいとは書かれていませんもの」
「不埒な事をされそうになったら大声で叫んでくださいな、必ずお助けいたします」
などと私を心配するそぶりを見せながら興味津々のようだ。
「ありがとう、皆様。とても心強いわ」
手紙を鞄にしまい、私たちは教室に移動する。
あとは周りが勝手に噂を流してくれるだろう。
なんたって昇降口で少し大きな声で話しているのだから…
朝のSHRが終わる頃には、私の下駄箱に入っていた手紙の件は全校生徒が知ることとなった。
ただし、一部除く。
放課後
指定場所に向かうと1年生のフロアが騒然としていた。
1-Bの教室で誰かが喚いているみたいだ。
「……龍崎様」
誰かが私の名をつぶやくと、騒がしかった廊下が一瞬にして静まり返った。
「状況を説明していただけますか?」
近くにいる生徒に声を掛けると、小さく頷いた後教室の扉を開ける。
「あの女生徒が教科書をその・・・・・・龍崎様に切り刻まれたと生徒会役員の方達に訴えているのです」
「そう、ありがとう。あとは私が引き受けます」
私の言葉に説明してくれた生徒は一礼をして後ろに下がった。
私の後ろにいる友人たちに視線を送ると小さく頷き廊下にいる生徒達を誘導し始める。
「一体何の騒ぎです」
私の声に教室内で騒いでいた女生徒が私を睨みつける。
彼女の側にはわが校の権力者である生徒会役員が……会長以外全員揃っていた…
「あなたが……あなたがこれをやったんでしょ?」
切り刻まれた教科書を指差し、私を睨みつける少女。
肩を震わせている少女のを優しく抱きしめているのは副会長殿。
その傍らには会計殿と書記殿が心配そうに少女を見つめております。
少女は、ここ数か月、生徒会役員の周りをうろちょろしていたかと思うと、あっという間に彼らを堕落させた。
「私が?なぜそんなことをしなければいけませんの?」
「あたしが目障りだって思っているんでしょ?」
「なぜです?」
「なぜって……」
言葉に詰まる少女。
「それよりも聞きたいことがあるのですが」
「なによ」
「あなた、合宿に参加していないのですか?」
「え?」
「1年生は今日のお昼まで隣の市にあるわが校の合宿施設で全教科の勉強合宿だったはず。全部の教科書持参の合宿にあなたは教科書をもっていかなかったのですか?」
「…………」
黙る少女に廊下から教室内を覗いている1年生に尋ねる。
「彼女は合宿には?」
「「「「参加しておりました!」」」」
複数の声が元気よく返ってきた。
「教科書は?」
「「「「ちゃんと持っていました」」」」
これまたきれいにハモりながら返事が返ってきましたわね。
にっこりと微笑みながらお礼を言うと1年生たちは顔を真っ赤にさせて嬉しそうに笑みを浮かべた。
「今日の午前中まであなたが使っていた教科書を私がいつ切り刻んだとおっしゃるの?」
「それは……」
「ちなみに私、午後は2年全クラス合同の研究実験でそこにいらっしゃる青葉様(副会長)、白石様(会計)、近田様(書記)とご一緒でしたわよ。研究実験終了後はクラスメートとずっと一緒におりましたの」
「…………」
「ねえ、いつですの?私はいつあなたの教科書を切り刻んだとおっしゃるの?ここから一番遠い教室で実験をしていた私がいつ、どうやって?」
「…………」
「はい、そこまで!」
パンパンと手を叩く音が教室に響いた。
一人の男子生徒が教室に入ってきた。
「美夜、例のモノ出して」
「西条様……?」
「今朝、下駄箱に入っていたモノ」
「ああ、はい」
私は鞄から例の手紙を取り出し手を叩いた西条様…生徒会長様に渡した。
西条様は手紙を手に取ると一瞬嫌そうな顔をされたがすぐにいつもの鉄仮面に戻った。
「1年生は知らないだろうけど、今朝この手紙が龍崎美夜の下駄箱に入っていた。放課後この1-Bに来るようにと書かれた手紙がね」
手紙を掲げ廊下にいる生徒にもわかる様に西条様は説明されている。
「この手紙から微かに匂う香りってそこの女がいつもつけている俺が嫌いなドキツイ香水の香りと一緒なんだよね」
西条様は手紙を彼女に向けて放つと手紙はひらひらと床に落ちた。
その後、教室の防犯カメラに彼女自身が教科書を切り裂いている姿が映っていると警備員から報告があった。
なぜ、そんなことをしたのか改めて問いただしたら
「生徒会役員の方たちと仲がいい龍崎先輩が羨ましかったのです。私といてもいつもいつも『龍崎が…』とか『美夜が…』って龍崎先輩の事ばかり話すから悔しくて…………」
ああ、なるほどね。
私は確かに生徒会役員たちと仲がいいほうだろう。
会長以外は中学の時からの付き合いだしな。
つまり、私に嫉妬して私の評価を落そうとしたってことね。
なんちゅう浅はかな行動をとったんだよ。
別のアプローチの仕方があったんじゃないのか?
「そういうことね。ねえ、西条様、彼女を生徒会庶務に任命してあげれば?副会長たちのお目付け役としてさ……」
「はぁ?なんでだ?必要ないだろうが」
苦虫を潰した様な顔をする会長様。
「彼女がいかに優秀かをそこでぼけーっと立っている副会長共に見せつける為だよ。彼女は鍛えれば次期生徒会役員になれる逸材だ」
「美夜が断言するってことはかなり使えるってことだな」
西条様は深くため息を吐くと彼女を睨みつける。
「わかった。ただし条件がある」
「条件?」
「香水は付けないこと。仕事は真面目に行うこと。生徒会室内では副会長といちゃつかない事。この条件が飲めないなら認めない」
西条様の条件に彼女は一も二もなく頷いた。
彼女はあの事件以降同級生たちに白い目で見られていたが、私が生徒会に推薦したという”噂”が流れ再び注目を集めるようになった。
生徒会長が認めた『次期生徒会役員』…という意味で。
今では腑抜けにしてしまった副会長たちを会長様と共にスパルタで鍛え直しているそうだ。
副会長たちは嬉しそうにしごきを受けているとか……あいつらMなのか?
私はそれを遠くから傍観していた。
そもそも私は生徒会役員じゃないからね。
そしてなぜか、彼女は私の周りをうろちょろするようになった。
薄らと頬を染めながら……
なぜだ?
【余談:西条透里と龍崎美夜のコソコソ話】
「なあ、いつまでもその格好しているんだ?」
西条の声に読んでいた本から視線をあげると呆れた表情の西条が目の前に座っていた。
「ん?そうだな……高校卒業までが限度かな……」
「お前のその格好と行動のギャップが女生徒を虜にしていると気づかないのか?」
「変か?」
「いや、似合っているから何とも言えない……女装やめる気ないんだな」
「好きな子できたら速攻やめるけど…いまのところいいなって思う子がいないんだよな。慕ってくれる子達はかわいいんだけどな……だけど、結構快感なんだよな。この格好していると」
「…………」
「この姿なら女の子達の警戒心がグッと減るから楽しいんだよ。俺の事、女だと思っているから余計にな」
「ハァ…………お前は昔からそうだよな。まあ、好きになった女に嫌われないように気を付けろよ。美夜」
「そんなヘマしねえよ。透里じゃあるまいし」
「な!?」
「未だに告白してねえんだろ?何年片思いしてるんだよ。俺の妹…紗綾はかわいいからな~毎日ラブレター抱えて帰ってくるぞ」
「ぐっ……」
「俺が女装をやめるのと、透里が紗綾に告白するのとどっちが早いかな~」
「なんで皆、気づかないんだ……小さい頃ならいざ知らず、第二次性徴が過ぎているのになぜ気づかない…」
唸る透里に美夜はにやりと笑うと
「それは俺が完璧な女を演じているからだ」
とない胸を逸らしていた。
龍崎美夜
学校内で知らぬ者がいないほどの背の高い美少女。
常に周りに誰かしらいる。
生徒会役員…特に会長である西条透里とは幼馴染であり、かなり仲が良い。
一部では付き合っているのではないかと噂されている。
青葉(副会長)、白石(会計)、近田(書記)とは中学からの知り合い。
生徒会の影の支配者という噂もある。
実は女装が趣味の男である。
そのことを知っているのは西条透里と職員のみ。
一応名簿では『男』となっているが意外と知られていない(笑)
学校内では完璧な女性を演じ、学校外では本来の姿に戻っている。
学校内でも透里と二人きりの時はしゃべり方も男に戻る。
妹の紗綾を溺愛している(公私共に認めるシスコン)変態である。
お読みいただきありがとうございます。
美夜の女装は幼稚園の時からなので年期がすごいです(笑)
妹の紗綾から『お兄ちゃんが女装している時はお姉ちゃんって呼んでいい?』と男装している時は近づかないが、女装している時はベッタベタに甘えてくるので女装をやめる機会を幾度となくのがしてきている。
という裏設定あり(笑)




