織姫、太る。
本当は7月7日に短編でうpしたかったものですが、間に合わなかったので連載にします・・・。
織姫、彦星の本当のお話とは桁違いにかけ離れたストーリーとなっております。
織姫と彦星なのにハイテクノロジーの産物(PCとか)がたくさん出てきます。
織姫は頭を抱えた。なんとしてでもこの状況を打破せねばならないと思った。次の逢引まであと1ヶ月半。このままでは彼に嫌われる・・・!
織姫と彦星はご存知のとおり、毎年七夕の日にだけ逢引をする儚いカップルの代名詞であるが、逢引までの間にも彼らは何かしらの手段で交流をしている。時は2012年。技術が進歩したこの時代では、織姫や彦星もインターネット越しに楽しく交流をしているのである。
織姫と彦星はSk●peを使用し、PCとwebカメラを駆使してテレビ通話で顔を見ながら交流している。先ほどまでまさに通話をしてお互いの愛を確かめているかと思われていた。
彦星がログインしたのを確認し、すかさず織姫は通話を飛ばした。7コールの後、愛しの彦星が通話に反応した。
「やあ織姫ちゃん、こんにちは。」
「彦星くん!あと1ヶ月半ぐらいかな、また会えるのね!あたし今からとっても楽しみで…」
彦星の顔と声を見るや嬉しくなってやたら有頂天で喋りだす織姫をよそに、彦星は何やら神妙な面持ちでいた。
そして、真剣な顔つきでふと口を開いた。
「織姫ちゃん、前からずーーーーーーっと言おうと思っていたんだけど。」
「……それからそれからー!って、どうしたの!?」
いつになく真剣な表情の彦星に、織姫のマシンガントークも思わず途切れた。
―もしかして、もしかしてもしかして、プロポーズクルー!!?―
勝手な期待を膨らませ、いつでも受け入れOKの姿勢で織姫は再度聞きなおした。
「それで、言いたかったことってなぁに?」
期待で胸が膨らんで大はしゃぎしている織姫をよそに、彦星の口から出たのは思いもよらぬ言葉だった。
「ねぇ織姫ちゃん。織姫ちゃんと出会ってからたくさん時間経つけどさ、あの…織姫ちゃんって太ったよね、かなり。」
織姫は持っていた扇子を床に取り落とした。
「あ…えーとね、うん、ちょっと太ったかもしれない、ちょっとね。」
「ううん。見るたび見るたび、織姫ちゃんが昔の織姫ちゃんじゃなくなってきた。今じゃ牛舎の大将の奥さんとも殆ど変わらないや。もうこんな織姫ちゃんを見ているのはつらいよ。」
「えっ…。」
もはやショックで言葉も出ない。織姫はおもむろに下腹部に手をやった。今まで気にしていなかったけど、ここ、かなりお肉が付いてる…。彦星は続けた。
「だからさ、こうしようと思う。もし今度の七夕までに織姫ちゃんが痩せられなかったら、今年の七夕はきみには会わない。」
「そんな…。」
フラっとよろけた椅子の背もたれがバキっと音を鳴らして折れた。
―かくして、織姫のダイエット大作戦が始まった。