ちくわライダー見参 ~お残しは許さない!~
俺は生まれは分からない。
気が付けば、白い皿の上にいた。
横にはキュウリの輪切り。
下にはほんの少しのマヨネーズ。
そして俺は理解した。
「……俺、ちくわだ」
そう。
ただのちくわである。
意識はある。
だが動けない。
叫べない。
転がることすら出来ない。
ただ、皿の上で料理として存在するのみ。
だが、俺は絶望しなかった。
なぜなら。
俺の胸には――正義があったからだ!
「お待たせー」
少女が皿をテーブルへ置く。
居酒屋だった。
「おっ、ちくわキュウリじゃん」
「旨そうじゃん」
その時だった。
一人の男が、箸で俺を掴み――
一口だけ食べて戻した。
皿に。
しかも半分。
半分だけ!
俺の中で、何かが弾けた。
許せない。
食材を。
命を。
作った人の想いを。
そんな風に無駄にするなど……!
その瞬間。
俺の中の魂が燃え上がった。
「ちくわ……キュウリ……」
視界に映る緑。
そして窓の外を走る一台のバイク。
雷鳴のように脳内へ走る閃き。
「そうか……!」
俺は悟った。
「バイクだ!!」
なぜかは分からない。
だが正義のヒーローにはバイクが必要なのだ!
それが宇宙の法則!
俺は己の肉体を震わせる。
限界を超えろ。
練り物の可能性を信じろ!
「ぬおおおおおおおおおっ!!」
すると。
俺の身体が回転した。
ちくわが自力で転がった。
「うおっ!? ちくわ動いた!?」
「酒飲み過ぎじゃね!?」
黙れ人類。
今、俺は覚醒する!
俺は皿から飛び出し、キュウリと融合!
さらに店の外へ転がり出る!
そこに忘れ去られた子供のおもちゃのバイク!
俺は飛び乗った!
『PIIIIIIN!!』
なぜか変身音が鳴った。
知らん。
だが鳴った。
そして俺は叫ぶ!
「変ッッッ身!!」
ちくわのボディ!
キュウリの装甲!
バイクの機動力!
三つの魂が今、一つとなる!!
爆風!
閃光!
そして現れる白と緑の戦士!
『ちくわライダー!!』
店内の客が悲鳴を上げる。
「なんだあれぇぇぇぇ!?」
「ちくわがバイク乗ってるぅぅぅ!?」
「しかも変身したぁぁぁ!!」
俺はポーズを決める。
右手を掲げ。
左腕を胸へ。
そう、完璧な変身ヒーローの構え!
「俺、見参!」
マフラーが風になびく。
ちなみに素材は大葉だ。
「俺は――お残しを許さない戦士!」
その時だった。
店の奥から黒い気配。
ぬるり、と現れる怪人。
顔はピーマン。
身体は黒焦げソーセージ。
名は――。
『残飯怪人ノコシターイ!!』
「ふはははは!! 人類は残す! 食べ残す! それこそ文化ァ!!」
「貴様ァ!!」
ノコシターイはテーブルを蹴り飛ばす。
焼き鳥!
枝豆!
ポテト!
次々と床へ落ちる料理!
「やめろぉぉぉぉ!!」
俺は怒った。
激怒した。
ちくわなのに。
いや、ちくわだからこそ!
「行くぞノコシターイ!」
『来い! 所詮は練り物!』
俺はバイクを走らせる!
ブオオオオオオン!!
時速たぶん20キロ!
おもちゃなので遅い!
だが魂は最速!
『くらえぇぇ!!』
ノコシターイの残飯パンチ!
俺は回避!
キュウリ装甲を回転させながら飛ぶ!
「ちくわキック!!」
『ぐわああああ!?』
炸裂!
練り物の脚が怪人へ突き刺さる!
さらに!
「必殺!!」
ベルト中央のちくわコアが輝く!
「フードロス・キイイーーック!!」
俺は高速回転した。
ちくわとして。
限界まで。
『ば、馬鹿なぁぁぁぁ!!』
ドカァァァァン!!
爆発。
そして怪人は消滅した。
静寂。
店内に沈黙が落ちる。
やがて。
一人の少女が、そっと呟いた。
「……すごい」
俺は振り返る。
「ありがとう、ちくわライダー」
少女は、皿に残っていた半分のちくわを見つめながら言った。
「私、ちゃんと食べるよ」
その言葉を聞いた瞬間。
俺は満足した。
そうだ。
それでいい。
食べ物は。
誰かの命は。
ちゃんと最後まで大切にされるべきなのだ。
俺はバイクへ跨る。
「覚えておけ」
夜風が吹く。
「お残しは――許さない!!」
ブオオオオオン!!
走り去るちくわライダー!
彼の戦いは終わらない!
世界からお残しが消える、その日まで――!!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
何をどう間違えたら、
「ちくわ+キュウリ+バイク=変身ヒーロー」
になるのか、自分でもよく分かっていません。
ただ、一つだけ言えることがあります。
お残しは良くない。
その気持ちだけは、本物です。
この作品は、
勢いとノリとちくわで構成されています。
深夜テンションで読むと、たぶん少し面白いです。
真面目に読むと、もっと危険です。
ちなみに作者は執筆中、
「これ投稿して大丈夫か?」
を三回くらい考えました。
でも、ちくわライダーが、
「行け」
と言った気がしたので投稿しました。
もし少しでも笑っていただけたなら、
ちくわライダーもキュウリも喜ぶと思います!
最後にもう一度だけ――
お残しは、許さない!!!
ありがとうございました!




