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移りゆく世界の果てに。  作者: 奏 そうま


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第二頁『邂逅』

「ここはどこだ・・・なんでこんなとこに・・・?」


真士は無意識に足を踏み出したがすぐに違和感を覚えた。


「あれ?」


足元を見ると見慣れた靴があった。スーパーにいた時の格好だ。


「・・・まぁ、いいか。ここにいるのも訳わかんないしな。」



しばらく歩くと町らしき物が見えてきた。しかし見慣れた町ではないことにすぐに気付いた。


「なんだ、この町。なんか見たことあるような。」


明らかに日本ではない。だが好奇心が真士の足を進めさせた。


町は大きくはないが、人の気配が濃かった。

石造りの建物と露店が並び、見慣れないはずなのに、どこか近所の商店街に似た空気がある


「話しかけてみようかな・・・言葉通じるのかな。」


何らかの答えがほしい真士は優しい笑顔で商売をしている女性に近付いていった。


「あの・・・」


「はい、いらっしゃいませ。あら、見慣れない顔ですね。冒険者の方かしら?」


冒険者という言葉に真士は思わず眉をひそめた。佑矢の言葉がまた脳裏をかすめるが顔には出さず会話を続ける。


「えっと・・すみません。ここってなんていう町ですか?」


「町の名前を知らないってことはやっぱり冒険者の方?ここはね、ヴィドっていう町よ。」


ヴィドと聞いて真士はハッとした。ついさっき佑矢が読んでいた漫画。それは強く勧められた漫画でもある。


「同じだ・・・。町の雰囲気も、人々の風貌も・・・」


町は大きくはないが、人の気配が濃かった。

石造りの建物と露店が並び、見慣れないはずなのに、どこか近所の商店街に似た空気がある真士の考えを遮るように店の女性は話しかけた。


「あなたもマリアンヌ様を探しているの?」


まとまらなかった考えがその一言で一気にまとまった気がした。


「・・・ああ、そうなんだ。じゃあ、急いでるから。」


状況を受け止める時間が欲しかった真士は早々に話を切り上げベンチに座った。


「分からないことばかりだ。何にせよ、考えるより行動だ。」


自分の置かれた状況をもっと知るため、町の中へ向かった。


この辺りはさっきよりも賑やかで、世界は違っても売り手と買い手はどこも同じだなと真士は目を細めた。

商店というよりはフリーマーケットのような感じだ。

看板も文字は読めないがゲームや漫画で得た知識でだいたい想像できた。



「ん?」


中央通りと思わしき通りを歩いているとふとある人物が目に留まった。


「あの人、剣の刃じゃなくて鞘の方を見ている、、?なんでだ?」


剣士にとって鞘を見るのは不自然ではない。がその人物は刃は一切見ず、鞘だけを見ているのだ。


「この仕上げ方は遥か昔、東方の国で開発された麟脈の紋ではないか?」


「お客さん、麟脈の紋を知っているのかい?お目が高いと言いたいところだが、これは贋作だよ。」


「いや、そんなはずは、、、分かった。贋作でもいいから貰おう。」


「ほんとに買うのかい?まぁ買ってくれるなら売らない理由はないけど。まいどあり!」


真士は二人のやり取りを興味深そうに見ていた。


「佑矢がなんか興奮気味に言ってたな。思い出せないけど確かただの武器じゃなかった気がする」


思い出そうとしていた真士に先程の人物が話しかけてきた。


「おや、そこの君。」


「え?あ、俺ですか?」


いきなり声をかけられた真士はその理由に何となく勘づいていた。


「君、なかなか奇抜な服装をしているね。こんなデザインは見たことがない。よほど未開の地か遠方から来たはずなのに何の装備も持っていない・・・」


真士の格好はお世辞にもオシャレとは言えないがどうやらこの世界では奇抜らしい。


「え、ええ。うちの国ではこれが普通なんですよ。」


「どこの国だ?私は世界も旅していて知らない文化にはとても興味がある。」


「しまった・・・」


変に誤魔化すのは得策ではないと思い無難な返事をしたが、それが逆に興味を持たれることとなった。


「に、日本という国です。」


「ニホン?聞いたことがないな。君はそこから来たのかね?」


「そ、そうです。小さな島国なのであまり知られてないかもしれませんね・・・」


頭を掻きながら真士は必死に答えた。その時、学者の目が輝いた。


「ちょっとそれ、見せてくれないかね!」


「え?それ?」


学者の視線は真士の手首に向いていた。


「その手首に付けているベルトのようなものだよ。」


「こ、これは・・・」


真士の返事を待たず、学者は半歩踏み込み、腕を掴んだ。

真士の腕を引き寄せ、まじまじと観察した。


「この金属製のベルト、そして謎の文字盤と一定間隔で動く針。測魔計のようであるが、このような小型のものは世界一の技師でも作製は不可能だ。」


「そくまけい?」


「これは一体どこで?これも君の国の物なのかね?」


真士の疑問は無視され、矢継ぎ早に質問をしてきた。


「そうですね。俺の国で作られた物です。」


「な、何ということだ!この様な技術が存在するとは!私をどうかニホンに連れて行ってくれないか!?」


「えぇっ!?そ、それはたぶん無理なような・・・なんて言うかこの世界とはまた違うと言うか・・・」


「では、それを譲ってはくれないか?!いくらでも出すぞ!」


学者はおもちゃを欲しがる子供の様に目を輝かせていた。出会った時の紳士風の態度とは真逆だ。


「いや、でもなぁ。」


真士がはめているのはそんなに高価なものではない。とりあえず時間が分かればいい程度のものだが、ここまで興味を持たれると悪い気はしなかった。

それにこの世界で一人で動くより、誰かに繋がっておいた方がいい。

腕時計一つで、それが手に入るなら安いものだ。


「分かりました。では差し上げます。ただ幾つかお願いがあるのですが・・・」


腕時計を外しながら渋々と言った感じで交渉に入ろうとしたが、その心配は言い終わる前にあっけなく吹き飛んだ。


「おぉ!ありがとう!できる限りの力になろう!」


「この世界じゃ役に立ちそうもないですし、それに知りたいこともたくさんあるので。」


「そうか、ニホンと文化が違い初めてこの地に来たなら分からないことが多いのも当然だ。ここじゃなんだから、うちに来ないか?」


「いいんですか?」


知らない人に着いて行くなと幼少の頃から散々言われてきた真士だが、自分の目を信じるに悪い人ではないと判断した。それに腕時計の礼も受け取る必要がある。


「構わんよ。私も聞きたいことがあるからな。さぁ行こう。」


学者が歩きながら振り向いた。


「そう言えば名乗ってなかったね。私はエルンスト。

魔導史と古代遺物を研究している者だ。

もっとも、この町じゃ変わり者扱いだがね。」


「エルンストさんですね。俺は真士って言います。よろしくお願いします。」


真士が言い終わる前にエルンストは腕時計を嬉しそうに眺めながら歩き始めていた。真士は「ちょっと失礼なやつだな」と思いながらエルンストの後について行くのだった。

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