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移りゆく世界の果てに。  作者: 奏 そうま


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第一頁『遷界』

初めまして。

奏 そうまと申します。

初投稿ですが、ラストまでは書き切りますのでどうぞよろしくお願い致します。

「あとは豆腐くらいかな?」

「あ、ビールも買って行ってやろう。」


通いなれたスーパーでメモを頼りに買い物をしている男。平日だが夕方の割引セールで主婦や仕事帰りのサラリーマンがレジに列を作っている。


「まぁ、急ぐこともないしな。あいつはあいつでいつも通り漫画でも読んで待ってるだろ。」


お菓子売り場ではしゃぐ子供たちを横目に列は進む。

レジまでもう少しといったところでスマホが着信を知らせる。


「もしもし?」

「あ、真士?ちゃんと買えてる?」

「大丈夫だよ。そっちこそ準備できてる?」

「当たり前よ。じゃあ待ってるから。」


スマホを直すとちょうどレジの番が回ってきたので慣れた手つきで真士は会計を済ませた。


外は暗くなり始め、肌を刺すような冷たい風が頬を撫でる。灰色の空が余計寒さを感じさせる。肩をすぼめながら真士は今日の1番の話題になるであろう初めての彼女のことと、それを知らされる友人・佑矢の驚く顔を交互に思い浮かべながら笑みを浮かべた。



「買ってきたよ。」


上着を脱ぎながら、真士は部屋へ上がり相変わらず綺麗とは言えない部屋へ入っていく。見慣れた部屋。


「おお、お疲れ。思ったより遅かったね。」


漫画を見ながら佑矢は出迎えた。こいつは昔から変わらないなと真士は思いながら上着を脱いだ。


「うん、ちょっと混んでてね。ほら、ビールも買ってきたよ。」


「さすが!気が効くね!じゃあサッと野菜とか切って始めようよ。」


ビールを冷蔵庫に入れ、二人は野菜を切り夕食の準備を進めた。


「鍋なんて久々だよ。一人じゃなかなかしないからなぁ。」


「だよなぁ。あ、紙皿とかどこだ?」


「その辺に置いてない?ちょっと探してもろて。」


乱雑に置かれた雑誌や服をかき分けて探す。


「おい、ないよ。お皿とかは佑矢が買っとく話だったろ。」


「まじか、ごめんごめん。『魔眼のアリアンヌ』の新刊は忘れずに買ったんだけどね。」


「そんな漫画知らねぇよ。そんなマニアックな漫画ばかり集められる資金はどっから出てるんだよ。」


「まぁまぁ。じゃあちょっと買ってくるわ。」


「もう鍋出来あがっちゃうよ。早めで頼むよ。」


「分かってるよ!」


ハンガーにもかけずに置いてある上着を着ながら玄関へ向かう佑矢。漫画のこととなると他はそっちのけなのも昔からだ。


「あ、火弱めといて。」


「あー、あとでやっとくよ。」


玄関が開くと同時に冷たい風が流れ込んでくるが既に温まったこの部屋のおかげで寒さは感じなかった。


一人になり、改めて部屋を見渡す。人のことは言えないが、やはり綺麗とは言えない。「汚い」とも表現は出来るが敢えて「綺麗ではない」と思うのはせめてもの友人としての心遣いだ。


が、その中で本棚だけは綺麗に整頓されていた。殆ど知らない漫画だが佑矢の趣味にまで口を出す必要もない。

立ち上がって本棚を見渡してみる。知っているものもあるがやっぱり殆ど知らない漫画だ。

その中で漫画に追いやられた懐かしい薄紫の表紙に目が留まった。


「あいつ、これはちゃんとしまってるんだな。」


それ【卒業アルバム】を手に取ろうとしたら、ふと窓を叩く音に気付いた。


「雨か。あいつ、洗濯物干してるじゃねえか。」


ただでさえ乾きにくいこの季節に、また濡らされたらたまったものではない。


「仕方ない。取り込んでおいてやるか。」


窓を開けるとまた冷たい風が部屋に入ってきた。


その瞬間、部屋が歪む感覚を覚えた。


「あれ?なんだ?」


そう発する暇もなく視界も真っ白になっていく。風の冷たさももうない。

周囲は真っ白で音も何も聞こえない。

頭が周囲の出来事に追いつかない。


数秒後、視界が戻ってきた。


「え?」


さっきまでいた佑矢の部屋ではない。

暗くもないし寒くもない。

真士は山道に立っていた。


「は?なに?」


周りを見渡しすがまだ理解が追いつかない。

異様な静けさに真士は戸惑っていた。


「夢じゃないよな。なんなんだ。」


ふと佑矢の言ってた馬鹿げた言葉が頭をよぎる。


「ねぇ、真士はさ転生出来るとしたらどんなのがいい?無双とかハーレムとかさ色々あるけど。」



「・・・転生?佑矢ならまだしも俺はないだろ・・・?」


意味不明に佑矢を引き合いに出しながら真士は状況を理解しようとした。


「あいつの部屋にいたのは絶対に現実だ。窓を開けて洗濯物を取り込んで---転生って死んだらするものじゃないのか?」


佑矢がよく話していた転生物の話の断片をパズルのように組み合わせようとするが、なかなか噛み合わない。あり得ない状況だが深呼吸をすることで一旦心を落ち着かせた。


「ふぅ。なんか分からないけど、とりあえず行動するか、、、夢なら夢で佑矢に話してやろう。」


真士は何ひとつわからないまま山道を進んで行った。

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