世界にぼくがいなければ
ぼくはきっと。この世界に要らない。
ずっと思っていた。
悲しくて苦しくて辛い毎日だったけれど、今日はなんだか、自分の気持ちがどんな状態なのか、よくわからない。
ただただ、重くて鈍い、何かが自分を取り巻いて、自分のまわりに膜がはっているような感覚。
この世界で自分は、取り除かれた方がいい異物なんだ。
邪魔で、迷惑で、いない方が良い。
毎日言われ続けてきたことじゃないか。
そうだった。
よく、わかったよ。
ようやく、わかったよ。
立ち止まった足は、学校とは違う方向へ向きを変え、ゆっくりと歩いて行った。
今は何時だろうか。
でも、もうどうでもいいや。
あてもなく歩き続けて、気がつけば大きな橋の上にきていた。
死を考えたこともある。でも、電車に飛び込むとか、たくさんの人に迷惑はかけたくない。
例えば車に引かれそうな人を助けて身代わりに死んで、こんな自分が少しでも役に立って、いなくなって、いろんなひとがよかったねって思って、そしたらこの世界は普通にまわっていくんだろう。
そんなことをぼんやり考えていた。
広い河川敷、遠くでは子供がボールで遊んでいる。
小学校1、2年くらいだろうか。もう下校時刻なのか。
学校サボっちゃったな。もうどうでもいいけど。
小学校は楽しかったな、中学校も部活だけは何も気にせず打ち込めて、あれが青春というやつだったかもしれない。頑張って全国コンクールに出たりして…
そのとき、子供が勢いよく蹴り上げたボールが、川へ入ってしまった。
浅瀬からゆっくりと川の中ほどまで流されていく。
あー、残念。諦めるしかないな。
この川の中央はとても深いから、泳ぎに入るなと言われている。
新しいボールを買ってもらえばいいよ。
そう思っていたら、1人の子供がボールの後を追って川に入ってしまった。