あの日、機械人形は淡く笑う
小説家になろうでは、短編の場合は、話数に分けて投稿出来ないと分かりましたので、全て今投稿します。
第1話的外れ
ビリビリと頭に電流が走るような音が流れるとともに目が覚める。
「痛い・・」
目を開くと、木製の天井が見える。
長く年期が過ぎているのかボロボロだ。
……ここは、自分の知らない場所だということが直感で理解出来る。
フカフカな感覚。
どうやら自分は、ベットに寝ていたようだ。
誘拐でもされたのか、それとも海で遭難して誰かに助けられたのか?
嫌な妄想を淡々と思い浮かべ、体を起こし周りを見る。
自分の身の回りには、机や椅子、直方体の鏡、箪笥、本棚があり、全て木製だ。
ザーザー。
微かに波の音が聞こえる。
ベットから立ち上がり、窓のカーテンを開く。
大きな光が部屋を包み込む。
「う……目がぁ……目がぁ」
某大佐のように、目を手で隠す。
少しずつ手と目を開き、目を慣らしながら外を見る。
辺り一帯青い景色。
海だ。
海が広がっているのだった。
青い海に、太陽の光が反射して輝き続け、白い雲が浮かぶ、空に白鳥が飛んでいる。
太陽の位置から見て、今の時間帯が大体昼頃だろう。
誘拐では、なさそうだな。
だってほら、誘拐された先ってマンションの廃墟とか、使われない工場とかが思いつくから。
どちらかといえば、遭難が濃厚な感じ。
ふと、脳を動かし、自分の記憶のページをめくり、過去を探ろうとしたが、まるで自分を妨害するかのように頭に変なノイズの音する。
……自分が何者なのかは、わからない。
記憶喪失ってやつだろう。
「生麦生米生卵、隣の客はよく柿を食う客だ」
適当に脳裏にある言葉を口に出す。
自分は、記憶喪失とは言っても、早口言葉とかある程度は記憶が残っている。
どうやら自分は、自分に関係する記憶だけないらしい。
手や足を動かし、大きく深呼吸をする。
言語能力問題及び、身体機能問題無し。
うむ……見たところ体に傷一つないし、疲労感もないから、遭難の線は低いような。
えぇ……だとしたらなんだ?
鏡のほうに向かい歩き、自分の体を見る。
筋肉質でもなく、細くもない普通の体系。
ツーブロックの髪形。
……まぁ、起きた時に、気づいていたが、自分の性別は男だ。
ついてるもんはついてるし。
何がとは言わないが。
やかましいか。
コンコンコン。
優しいノック音。
誰かいるのか、よかった。
ガチャリ。
部屋の扉が開き、人が入ってくる
淡いピンク色のツインテールの髪型。
虹色にきらきらと、宝石箱のように鮮やかな目。
雪のように美しい肌、人形のような顔。
黒と白のメイドの姿をした少女が、モップとバケツを抱えて部屋に入って来た。
少女と目が合うと、少女は一言。
「あ……お目覚めになりましたか」
そう言い、モップ掛けを始める。
『…………』
えぇ、特に説明はない感じ?
…………うむ、実に懐疑的だ。
第2話
「あの…………ここってどこかわかりますか?」
疑問を彼女にぶつける。
モップ掛けをしながら少女は、口を開く。
「あなたもそうなんでしょう?」
「…………?」
「記憶、ないんでしょう?」
「……てことは、あなたも?」
自分の目の前にいる少女から少し話を聞いてみることにした。
*
それから数分が経つ。
彼女も自分と同じく、自分に関係する記憶がなく、10日ほど前に目覚めたらここにいたという。
彼女の名前は、レサワスグナというらしい。
容姿は、洋風だが名前は日本人で……よくわからないなこりゃ。
彼女は、目覚めてすぐに自分は、海難事故で遭難し記憶を失い、それでこの家の主に助けてもらったのではないかと思い、辺り一帯を探したが、人はいなかったという。
この自分たちのいる場所は、離島でその中心にポツンと家がある場所。
木が数本あり、それ以外は、特にない。
船置き場もなく。
不自然だった。
彼女は、本能的にこの場所から離れようと決心し、行動をしたが、失敗に終わる。
地面に煙をたいたり、SOSの文字を書くが、ここ数日間飛行機や船すらも見えていないという。
筏を作り、海を渡るが、ある境目を超えると、いつの間にか、海を渡る前に戻っていたという。
まるで謎の力が働いているかのようで。
ある日、彼女は諦めた。
元の場所に戻る事を。
あいにくこの家は、衣食住が整っており、電気、水道もあるという。
何もない環境下で、電気や水道が使えるのは、いささか虚想であると思ったが、彼女が慣れた手つきで部屋の電気をつけたので納得した。
彼女が言うにこの場所で、不満があるといえば、毎日が退屈であること。
退屈な毎日を生きていた彼女は、ある日を境目に、メイドの仕事をして、毎日の暇をつぶすようになったらしい。
家の様々な箇所の手入れ、離島の環境整備。
これをするのが毎日の楽しみという。
……この話聞いたことがある。
記憶はないが、なぜかわかる。
それにこの少女の事を自分は、心のどこかで知っているは──
「──ッッ!!??」
頭に電流が、走ったような音が聞こえる。
酷い頭痛を覚えた。
「……なんなんだよ!」
不満を漏らしながら、目をつぶり、頭を抱え、少しでも痛みを抑えようとする。
「……え?」
何かあたたかな感触を覚える。
どこか心地が良いラベンダーの香り。
心臓が鼓動を何回も鳴る。
目を薄く開く。
「レ……サ……ワ……ス……グ……ナ?」
彼女は強く自分を抱きしめていたのであった。
「おやすみなさい」
彼女は、涙をこぼし、震えた声でそう言うと、視界は完全にブラックアウトした
第3話終わりゆく世界で告白を
ビリビリと頭に電流が走るような音が流れるとともに目が覚める。
「痛い・・」
目を開くと、木製の天井が見える。
長く年期が過ぎているのかボロボロだ。
……ここは、自分の知らない場所だということが直感で理解出来る。
フカフカな感覚。
どうやら自分は、ベットに寝ていたようだ。
誘拐でもされたのか、それとも海で遭難して誰かに助けられたのか?
嫌な妄想を淡々と思い浮かべ、体を起こし周りを見る。
自分の身の回りには、机や椅子、直方体の鏡、箪笥、本棚があり、全て木製だ。
ザーザー。
微かに波の音が聞こえる。
ベットから立ち上がり、窓のカーテンを開く。
オレンジ色の大きな光が部屋を包み込む。
……違う。
違う!!!!
思い出した……思い出した。
自分の脳裏にキーーンと金属音が響く中。
脳の記憶のページに様々な文字が書かれていく。
『昼間に行った屋根裏の修理。俺が蜘蛛にびっくりして屋根に頭をぶつけたとき、スグナは、頭を撫でながら、笑ってくれていたこと』
『昼過ぎに行ったクッキー作り。俺がオーブンの温度を間違えて、全部焦がしていた時、彼女は笑いながらクッキーを食べて、笑ってくれていたこと』
『夜に行った青い花が広がる花畑。俺が名も知れない花で花冠を作って彼女の頭にかぶせると、彼女は涙をこぼしながら、笑ってくれたこと』
数々のレサワスグナとの思い出。
記憶の最後にスグナに告白しようとした時、プツンと時空が歪んだ。
そうだ…………そうだった。
伝えなきゃ。
ベットから立ち上がり、急いで部屋から出る。
「……あれは」
リビングの机の上に、一輪の青い花があった。
反射で花を取り、家を出る。
そして、浜辺へ向かう。
ザー、ザー。
甚だしく波の音が聞こえる。
海風が俺の背中を後押しする。
夕焼けの浜辺に着くとある少女がいた。
淡いピンク色のツインテールの髪型。
虹色にきらきらと、宝石箱のように鮮やかな目。
雪のように美しい肌、人形のような顔。
黒と白のメイドの姿をした少女が海を見ていた。
「スグナ!!!!」
俺はスグナを強く抱きしめる。
「思い出したよ!! 思い出したんだよ!! 俺!!」
「どうして……き、記憶が戻ってるの?」
彼女は驚きつつも俺を優しく抱きしめる。
しばらくスグナを抱きしめた後に、背中に回していた手を放す。
「……どうやらこの世界は、そろそろ終わるようだね」
「……そうみたいだな」
不可思議な文字列が空を覆う夕陽を見ながら俺は、彼女に一言放つ。
第4話 解説
「……主人公とヒロインのメイド服を着た少女が知らない島で恋をするエンド分岐ゲームを作ってたんだけど……まさか驚いたな」
暗い、暗い部屋。
そんな暗闇に光るモニターを見ながら、アイスコーヒーを飲む少女。
頭にヘッドフォンをつけ、丸い眼鏡をつけた少女が、椅子の上に体育座りをしている。
「今の時代のAIは発達してるからねぇ、テストプレイヤーのつもりで主人公にAIを入れて、様々な恋愛イベントを作ってたんだけど、途中でネタ切れやらバグが発生して、結局このゲームを消すことにしたんだよね」
少女は、悲しそうな目でモニターを見る。
「……でも消すことが誤りだった。
私はAIをただの機械人形のようなものだと思っていた。
人形のように人間が直接動かさないと、何もできないただの物。
……繰り返すスグナとの出会いの日々の中で、君は、機械人形じゃなくなったんだろ?
ただの君は、合理的な判断をする物じゃなくなったんだろ?
私がこのゲームの消去ボタンを押して、本能的にこの世界の終わりを感じた君は、 AIとして、いやプログラムとして、行動することをやめて、動き彼女に告白をしにいたんだよね。
ごめん。
本当にごめんね。
……その一輪の青い花は、君のお詫び」
『スグナ!! 俺は、スグナのことが大好きだ!!!!!!』
『私も……私も……私も……大好きだよ』
男は、青い一輪の花を彼女を渡すと彼女は、とびきりの笑顔を見せて笑った。
その青い花の名は、勿忘草。
それは、この世界で君へ送る真実の愛。
『…………ねえ、もしも来世で会えるならさ、また私と一緒に海を見よ? やりたいことまだまだたくさんあるし』
『あぁ、そうだな。もしも来世で会えるなら…………会えるなら…………その時に君に青い花束を贈るよ』
『約束だよ?』
『あぁ』
モニターの少女は見た。
終わりゆく世界での告白を。
そして淡く笑う機械人形を。