98話 揉める連合軍
ナバルとチャルチとマリーカの連合軍とマッサカー・ゲスターは、揉めていた。
ナバルの代表として、兵を率いているサム・ライが先ず、口を開く。
「今のは何だと聞いている!」
「ゲババババババ。そんなの抜け駆けに決まっているだろう」
抜け駆けと聞きチャルチの代表として、兵を率いるライアン・プリストという若者が糾弾する。
「ゲスター辺境伯、これは君たちの戦だってことは、わかっているよな?こちらはあくまでも援軍という立ち位置。抜け駆けなんかしなくても、こちらはもう既に、ベア卿とガロリング卿との間で、こちらが被ることについてのやり取りは成立してるのだが、ここに来る時にこの説明はしたよな?聞いてたのか?」
「ゲババババババ。そんなもんは知らん。戦とならば武功をあげるのが武人の務めじゃ」
今まで黙っていたマリーカの代表として、当主のリチャード・パルケスが口を開く。
「それは、そうだね。で、君は大事な兵士をどれだけ殺して、敵を葬ったんだい?」
「ゲババババババ。見てたのならわかっていよう。0じゃ。してやられたわ。じゃが、次はお前たちと突撃すれば、あんな兵数など踏み潰せるわ」
「はぁ。呆れて物が言えないよ。これは、僕の落ち度だね。犠牲が減るならそれに越したことはないと顔見知りの彼なら降伏を呼びかければと考えたんだからさ。こんな馬鹿だとは思わなかったよ」
「ゲババババババ。口には気をつけるんじゃな。その首、刎ねてやろうか」
ガキーンと簡単に吹き飛ばされるマッサカー・ゲスター。
「君こそ口に気をつけた方が良い。僕は、かなり怒っている。あのような無駄なことで、兵を失わせた君に対してね。彼らにも守るべき家族がいたということを忘れないことだね」
「フン。偽善者が吠えよって」
この連合軍は、考えで常に揉めていた。
セイントクロス教の敬虔な信徒であるリチャード・パルケスは、無駄に流れる血を嫌うあまり、先ずは対話からという姿勢を貫き。
リチャード・パルケスの甥であり、キチョウ・プリストの兄であるライアン・プリストは、野心が高いが慎重派で何を考えているかわからない。
サム・ライは、この戦の援軍で手に入れることとなったマーガレット・ハインリッヒのことをデイル・マルの追及で、話してしまった手前、先に確保してしまおうと焦っていて、イライラしている。
マッサカー・ゲスターは、部下の損害など考えず血に飢えていて。
こんな奴らの集まりで纏まるはずがない。
「だから、さっきはこんな話の出来ない。ゴホン。作戦の理解できていない男を使者に立てたから失敗したのであって、まだ対話する可能性は残されているはずだよ」
「馬鹿を言うな!これ以上、遅れれば、マーガレットをデイルに取られるだろうが!ここは、対話は無理だったということにして全軍での突撃ということで良いな?」
「ゲババババババ。その方が俺はシンプルで好きだぜ」
「俺は、叔父上の作戦も一理あるし、サム殿の言も一理あるかと。それにこの場では、叔父上が1番位が高いのですから従うべきかと」
そうこの中では、公爵の位を賜っているリチャード・パルケスが1番貴族の中では偉い。
だが。
「そんなんじゃダメだよライアン。戦においては、貴族の位なんて、全く意味はない。自分の意見を言わないとね」
とこのようにリチャード・パルケスは、貴族にしては珍しく位にも囚われない男である。
だからこそ、惜しい人材である。
彼が現在敵であることが。
「しかし、貴族は爵位によって、厳格に。何も申すことは、ありません」
「はぁ。サム殿、全軍突撃するとして、あの柵はどうするんです?あのようなものを地面に埋め込んで、気付かれないようにしてるなんて、相当な知恵者が向こうにいるのは明らかですが」
「リチャードよ。そんなものは、一つ一つ斧で壊せば良い!」
「その間にどれだけの兵が死ぬと考えて」
「くどい!貴様らは、ドレッド様に従っておけば良い。そうすれば、デイルの事、どうにかするように説得してやろう」
「はぁ。そんなことこそ今はどうでも良い。それにそうすることで今度はドレッド殿がチャルチと我が郡を利用しようと考えているのは見え見えだ」
「フン!だとしてもお前たちは、もう俺たちに協力したのだ。運命共同体であることは、忘れるなよ?」
「そんなことは、君なんかよりも百も承知さ」
「ゲババババババ。話は一斉攻撃で纏まったようじゃな。では、参るとしようぞ」
「いや、今のでどう纏まったと?マッサカー殿。はぁ。どうして、あんな自分勝手な人間が貴族の位に付けてるのか不思議でならないよ」
「フン!飛び出したあの男を見殺しにできるのかなお優しいリチャードは」
「ぐっ」
あの融通の効かない男が向かったのは北門の方か。
良いように向こうの軍師の掌で転がされている気がするよ。
でも、あんなのでも家族がいるかもしれないし、セイントクロス教の教えは、隣人を愛せよです。
はぁ。
全く、若きハインリッヒ卿といい、どうしてオダ郡にはこれほどの人材が埋もれていたんでしょうね。
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