96話 サブローの作戦
ロレンスが執事らしく、皆に茶を振る舞う中、サブロー・ハインリッヒは、マリーとロー・レイヴァンド、ポンチョ・ヨコヅナにセル・マーケット、スナイプハンター、ウマスキ・ダイスキを前に話し始める。
「先ず、よく集まってくれた。早速、軍議を始めよう。皆も聞いての通り、ナバルがチャルチとマリーカの連合軍を率いて、ワシヅ砦に迫っておる。タルカは単独でハザマオカ砦に迫っているとのことだ。そこで、皆に問いたい。何か策はあるか?」
マリーが口を開く。
「ワシヅフォートでは、連合軍の攻撃を凌げないかと。ここショバタキャッスルに退かせて、籠城するのが宜しいのでは?」
「ふむ。他に何かあるか?」
続いて、ロー・レイヴァンドが口を開く。
「若、確かに一見すれば、籠城するのが良いのは明白と言える。しかし、相手は急遽作られた連合軍、足並みは揃わないかと。奇襲からの野戦にて、敵の数を大いに減らせよう」
「一理あるな。他のものは、ワシはどんな意見にも耳を傾ける。採用するかはわからんがな。だから、遠慮なく申せ」
そこで、ポンチョ・ヨコヅナが口を開く。
「サブロー様においどんは従うだけでごわす。頭が悪いおいどんには、わからんでごわす」
「横綱らしいが戦となれば、自分で考え頭を働かせることも覚えねばならん。だが、お前には優秀な副将を付けているから大丈夫であろうな。セル、言いたいことがあるなら申せ」
突然名前を呼ばれたセル・マーケットは、ビクッとしつつも考えを述べる。
「恐れながら申し上げます。現在の状況は、こちらが反乱軍に対して、押している状況です。この勢いを失えば、反乱軍に押し戻される危険性があります。ただでさえ、今反乱軍では、連合軍の援軍に沸いているでしょう。ワシヅフォートを放棄するのは得策ではありません。こんなこと僕だって言いたくありませんが、ワシヅフォートが耐えている間に、敵総大将マーガレット・ハインリッヒの首を討つべきです」
言い終わって、セル・マーケットはしまったという顔をする。
サブロー・ハインリッヒにマーガレット・ハインリッヒを討つべきだと言ってしまったからだ。
「そのような顔をするな。セルよ。お前の策は見事だ。ワシもそれしか無いと考えていたからな」
そこでスナイプ・ハンターが口を開く。
「サブロー様が御自身で手を下さずとも命じてくだされば、この俺が弓にて、射殺」
そこで言葉を止める。
そう、サブロー・ハインリッヒに母を殺せと言っているのと同じだったからである。
「フッ。気遣いは必要ない。セルにも言ったが、それしか無いと考えていたからな」
「軽率な発言でした。お許しを」
「いや、良い」
そこで、暫く考えていたウマスキ・ダイスキが口を開く。
「サブロー様は、ワシヅフォートにいる民を見捨てるしか無いと本気でそう考えていらっしゃるのですか?」
「うむ。このようなことは言いたくは無いが犠牲のない戦はない。そしてその犠牲は、いつも民となる。ワシとて、このような策を好んで取りたくはない。だが、計算違いの苦境に立たされているのは、見て取れよう。この状況で、全てを守れる程ワシは万能では無い」
「そうですか。サブロー様も悩んでのことでしたか?私たちがもう少し、頼りになれば、申し訳ありません」
「そのようなことを言うでない。お前たちは、十分にワシの力となってくれておる。この戦の犠牲の責任は、ワシにある。お前たちが思い悩むことはない。ワシヅ砦は見捨てる。だが、救える命を救うことを忘れたわけでは無い。既に、伝令を走らせ、ワシヅ砦にワシの言葉を届けている。希望者以外の非戦闘員を脱出させるようにとな」
「それがせめてもの救いですね」
「だが、ワシヅ砦が簡単に落ちるとは思わん。そこでワシは、向こうの旗頭を奪うことを決めた」
そこでセル・マーケットが口を開く。
「では、サブロー様は、マーガレット・ハインリッヒを討つことをお決めに」
「いや、ナバルの旗頭は母上では無い。寧ろナバルにとっての泣きどころが母上だ。故に、先ずは母上を神輿に担いだ爺様に報いを受けてもらう。我らが首を取るのは、レーニン・ガロリングである!」
マリーが声を荒げる。
「若様、無茶です!ワシヅフォートで、連合軍を押さえ込むことは不可能。押し寄せる連合軍はそのままここショバタキャッスルを落として、拠点を作りますよ!」
「ワシヅフォートは、簡単には落ちん!」
「何を根拠に!」
「テキーラだ。アイツの目は、ワシのために命を捧げる覚悟を持った武人の目であった。そのような男が守る砦は、何よりも固い!城が難攻不落となるのは、人だ。人なのだ。例え落とされたとしてもテキーラならば、ワシのために時を稼いでくれる(そうであろう可成に似たバッカス卿よ。この世界でもワシは、大事な忠臣を守ることはできんのだな。すまない)」
「たった2千で、10万を超える敵兵を相手に何日も耐えられるわけがありません!ここの守りを固めて」
「マリーよ。ワシは、もう決めたのだ!例え、この作戦が悪手であったとしてもワシはテキーラを信じて、後ろは振り返らぬ。一本の槍となって、援軍が来たことで安心しきっている爺様の喉元を貫くのだ!」
「若様は、本当に頑固すぎます!たまには、私の言うことを聞いてください!」
「マリーよ。やめよ。若の目を見よ。涙を堪えているのがわからんのか!若は、仲間を見捨てる決心をしたのだ。そして、バッカス卿が死ぬこともわかっているのだ。だが、そうだとしても先に向こうの旗手を潰せたとしたら、何か変わるかもしれない。若とて、心苦しいに決まっているだろう!」
ロー・レイヴァンドに強く言われたマリーは、それ以上何も言わずサブロー・ハインリッヒの作戦に従い、ショバタ城にいる全軍と共に、レーニン・ガロリングの籠るスエモリ城を目指すのだった。
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