91話 焦るレーニン・ガロリング
マルネキャッスル・ナルミキャッスル・オオタカキャッスルの三城を失い包囲されつつある現状に焦るレーニン・ガロリングは、なりふり構わずナバル郡を治めるドレッド・ベアとタルカ郡を治めるデイル・マルの両方に檄文を送る。
「あのクソガキに付いた過去の栄光どもが。ベア卿に手紙を送りつけろ。マーガレットを妻にオダ郡を差し出すゆえ、援軍を送れとな」
「しかし、それではオダ郡の統治は」
「煩い!あんなクソガキにやるぐらいならオダ郡に拘る必要などない。マーガレットにも良い加減、動けと言え」
「はっはい」
イライラして、荒れてそこら中の椅子や机を蹴り飛ばし、台をバンバンと叩き怒り散らすレーニン・ガロリングを前に、従うしかなかった。
「そう。お父様が迷惑をかけたわね」
「それでは、ようやく動いてくださるのですね?」
「それとこれとは話は別よ。前も言った通り、この地はお父様だけでなくサブローにとって、喉元なの。私が動けば、サブローはショバタを捨ててでもここを取るわ」
「それならそれで勝ちでは、ここはあくまで急造した城。それに引き換えショバタは、本拠地の城です」
「わかっていないわね。他の城は急造した城に落とされたのではなくて?」
「それは。だからこそ、ここでショバタを落とせば、我らの勝ちです」
「馬鹿ね。ここで、ショバタを落としてもサブローの負けでは無いわ」
「もしや、息子可愛さに我らの提案を拒んでいるのでは、ありませんな!」
「息子可愛さならそもそもお父様に付きはしないわ。それよりも動かす人員がいるのではなくて?サブローは、ショバタに民を置いてなかったそうね」
「そこまでは、わかりかねます。囮として使いモンテロ様を壊滅させたとしか」
「えぇ。そんなこともわからないようね貴方は。貴族のあり方を変えようとするサブローが囮として使う城に民を置いておくかしら?答えは否よ。なら、その民はどこに配置したか。後方に突然現れた城が1つあったわよね?」
「はい」
「なら、そこを攻めてみるべきだと思うわよ。残りの貴族たちを連れてね」
「そのような後方の城など攻める必要など無い。早くショバタを」
「もう。はいはい。わかりました。攻めれば良いんでしょ」
「あ、ありがとうございます」
「私も動くから後方の城は攻めなさい。良いわね?」
「だから後方の城など」
「揺動もできないのかしら?」
「か、かしこまりました」
こうして去っていく、レーニン・ガロリングの伝令を見送り溜め息をつくマーガレット・ハインリッヒに、毛布をかけるルルーニ・カイロ。
「マーガレット様、夜は冷えますよ」
「ありがとうルルーニ。はぁ。まだ早いのだけどサブローの顔を拝んであげましょうか」
「ここを降りれば、サブロー様は」
「間違いなく、今も機会を伺っているでしょうね。全く、お父様は遊び感覚だから困るわ。まぁ、お陰で多くの貴族が死ぬことにはなったけどね。サブローもサブローよ。城をこの速さで落としたらどうなるか。ふーん。成程ね。私を釣り出したいのね。クスクス。まぁ、そろそろ佳境ではあるし、ここを返しても良いのだけど。息子の方から会いたいだなんて、母として嬉しいわね」
「マーガレット様」
「あら、しんみりさせてごめんなさいね。ここは寒いわ。中に入るわ」
「はい。あったかいココアをお入れします」
「まぁ。それは嬉しいわ。でもルルーニ、貴方は私の執事じゃ無いんだからそこまで世話を」
「前も言いましたが好きなんですマーガレット様が。一方的に世話を焼くぐらいは良いでしょう?」
「ふふっ。私を堕とせるようにせいぜい頑張りなさいな。でもロルフの壁は高いわよ。良い為政者ではなかったかもしれないけど私にとっては、たった1人の愛する人であり、子を成したのですもの」
「今は、その言葉だけで充分です」
「そう」
数日後のナバル郡。
「ほぉ。俺にマーガレットを輿入れさせるとな?」
「はい。ですので、どうかこの内乱に乗じて、オダ郡を」
「ふむぅ。魅力的な提案だが。そんなことをすれば、俺が陛下に睨まれるのでな。養女として貰い受けることを許可するのであれば、援軍を送ってやろう。こちらとしてもサブローを放置すれば、いずれ我が領地にも影響があることはわかっているのでな」
「わかりました。レーニン様に掛け合います。しかし、現状、追い込まれているのは明らか。お願いします。どうかどうか」
「わかった。わかった。マリーカ郡とチャルチ郡にも参戦させるゆえ、俺の提案はきちんとレーニンに伝えよ」
「かしこまりました」
レーニン・ガロリングの伝令がその場を後にするとドレッド・ベアは含み笑いをしていた。
「追い詰められて、こうも上手くいくとはな。レーニンよ。お前は、娘を陛下にとっとと差し出して、介入させれば良かったのだ。しかし、それをしなかったからこそ。俺の手元に最強のカードが来るのだがな」
「しかし、ドレッド様。マル卿は頑なに動きません。パルケス卿もプリスト卿も動かないでしょう。どうされるつもりか?」
「サム。何、誓紙ではなく血判状で、4郡の繋がりを確実にするのだ。デイルに届けるのだ。良いな」
「本当に良いのですな?最悪、陛下を敵に回すことに。成程、そのためのマーガレットでしたか。心得ました」
「察しが良くて助かる」
この危機にサブロー・ハインリッヒはどうするのか。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
ブックマーク・良いね・評価してくださいますと執筆活動の励みとなりますので、宜しくお願いします。
それでは、次回もお楽しみに〜




