84話 動揺する反乱軍
夜明けと共に攻め込む準備をしていたレーニン・ガロリングの元に、勝手な真似をして奇襲を仕掛けたモンテロ・ハルトがサブロー・ハインリッヒに一騎討ちの末、討ち取られたと報告が入ってきたのだ。
この情報を流したのは、勿論サブロー・ハインリッヒである。
「馬鹿な!?モンテロの奴は、本当に死んだのか?」
「はい、こちらを届けるようにと一部始終を見ていたものから」
四角い桐の箱を開けると中から、モンテロ・ハルトの首が出てきた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ」
「騒ぐな馬鹿者。確かにモンテロの首だな。馬鹿なやつだ。俺の命令を聞かずに独断専行の末、返り討ちに遭うなど。それも、クソガキに討ち取られる雑魚っぷり。これだから成り上がりに公爵など勿体無いとロルフに申したのだ。まぁ、当然の結果であろうな」
平然と言ってのけるレーニン・ガロリングと違い、他の貴族たちは、躊躇なく首を斬り落としたサブロー・ハインリッヒにすっかり怯えていたのである。
この世界は階級社会、1番上に位置するのが貴族なのである。
今まで、内乱が起ころうとも追放されるぐらいで、殺されることなど無かった。
だが、サブロー・ハインリッヒは、一切の迷いなく斬り捨て、その首を送りつけてきたのである。
これが意味する所は、次はお前たちだという警告である。
そして、彼らの元に更なる絶望の報告が届けられる。
「か、か、各地に突如として、城が出現!恐らく、サブロー・ハインリッヒがハザマオカで作った砦なるものかと」
「な、なんだと!?我が城のまた鼻の先にもあるでは無いか!何故、誰も気付かなかったのだ!馬鹿ども!」
次々にこの場に集まっていた貴族たちが自分たちのところのまた鼻の先にも同様の城があると聞き、領地に帰るものが後を立たない状態となった。
「馬鹿者、何処に行く。僻地の領地など敵にくれてやれ!これは、我々を分断する策ぞ!」
しかしパニックとなった反乱軍にレーニン・ガロリングの言葉は響かない。
彼らを再び奮い立たせたのは、紛れもなくマーガレット・ハインリッヒの行動だった。
本拠地側の砦を奪取したのだ。
これは、どちらが当主かを明確にさせることとなる。
レーニン・ガロリングは、これを快く思わなかった。
たとえ娘といえど、自分より立場が上になるのは許せないのである。
だが、ここでマーガレット・ハインリッヒを更迭でもしようものなら今度は自分が総スカンをくらうだけだと。
逆に責任をこれで全て押し付けられるとそう考えることにしたのだ。
だから、笑顔を浮かべる。
「流石は、我が娘よ。当主に立てたのは間違いでは無かったな。貴族どもに号令をかけるのだ。今が攻め時だとな!」
「はっ」
この話を牢獄で聞いていたガイアは、頭を抱えていた。
「何ということじゃ。全てが仕組まれておったんじゃ。マーガレット様とサブロー様によって。奇襲があることを知っていなければ、完璧に防ぐことなど不可能であろう。それを城を餌に誘き寄せて、殲滅するなど。今にして思えば、マーガレット様がワシの策に意見するなどおかしかったのだ。何故、何故、マーガレット様はサブロー様と事を構えていながら我々を破滅へ導く選択を?まさか!?マーガレット様は、心では、サブロー様の改革を推奨しておるのか。いや、確かに、民の暮らしぶりも改善されて、よく考えれば、何故、ワシはレーニン様を推しておるのだ?確かに臣下ではあるが投獄されてまで、使える価値などあろうか?このままの方が良いのでは無いか?うむ。ワシの考えはワシの中だけで留めておくとしよう」
ガイアは、そう結論付けた。
ところで話は戻り、マリーから姿を偽っていると改めて聞き、難儀だなと言ったサブロー・ハインリッヒであったが更に言葉を続けた。
「安心せよ。ワシが必ずルミナもマリーも姿を偽らずに生活できる世界にしてやるゆえ」
「キュン。って、もう若様ったら女たらしなんですから。そんなこと言われたらキュンキュンするでしょ。もう」
「ルミナ、変な目で見られなくなる?そんな世界、来る?サブローにぃちゃんが作ってくれる?」
「あぁ。必ずな」
「ルミナ、そんな世界が来るの楽しみにしてる」
ワシがいた世界でも種族とは違うが肌の色や宗教の違いで奴隷にする輩がいた。
バテレンの商人どもよ。
奴らは宗教を広めることを表向きに、裏では人攫いをしているような奴らであった。
ワシがそのことを知ったのは、そのお伺いを立てにワシの元にきたバテレンの商人が連れてきた肌が黒い人間であった。
奴らは、あろうことかワシに我々の教義を受け入れなければ、こうしてやるぞと脅してきたのだ。
だから、ワシは逆に脅しつけてやった。
肌が黒い男の足枷と手枷を外させ、ワシは服と刀を与えた。
ワシの近衛に取り立てると見せつけてやったのだ。
そして、その上で、我が領民にこのようなことをしたらどのような代償を支払うことになるかを見せつけてやった。
バテレンの商人どもは怯えて、教義を広めるための宣教師だけの入館申請だけをするに終わったのだ。
ワシもそれを守る限りは、バテレンの宣教師の追放はないと。
こうして、領民を守ることには成功したのだが。
どの世界であっても人種や宗教、肌の違いなどとくだらなことで人は争う定めなのか。
嘆かわしいものだ。
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