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信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜  作者: 揚惇命
2章 オダ郡を一つにまとめる

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82話 一騎討ちの行方

 やはり体格差に大きく違いがある分、サブロー・ハインリッヒの方がやや劣勢である。


「どうした。どうした。レーニンの奴を後悔させてやるだの啖呵を切っておいて、所詮この程度か。このまま、押し切ってくれる!」


「ぐぬぬ」


 モンテロ・ハルトによって、上から振り下ろされる一撃を受け止めたサブロー・ハインリッヒが地面に膝を付く。


「俺を舐めるからだ。死ねぇい」


 このまま押し切られると全員が固唾を飲んで見守る中、サブロー・ハインリッヒは、転がって、モンテロ・ハルトの足を薬研藤四郎で切り付けた。


「はがっ。このガキ、転がりざまに短刀で俺の足を掠めやがった」


「浅かったか」


「やってくれるじゃねぇか。良いぜ。続きと行こうじゃねぇか。こっちは、お前に勝つしか生き残る道がねぇんだからよ!」


 ハラハラドキドキの展開にロー・レイヴァンドの額から汗が滴り落ちていた。


「ロー様もこれでお分かりになられたでしょう。若様には、まだ早かったと」


「マリーよ。確かにそうかもしれん。だが、若はここで死なん。若の掲げる大望は大きい。だが、だからこそ英雄となり得る器なのだ。俺は、若を信じている。マリーも堪えよ」


「それで若様が死んだらどうするんです!私なら若様に気付かれずにあの男を殺すことができます」


「ルミナね。思うの。サブローにぃちゃん、笑ってるの。命のやり取りしてるのに不思議なの」


「えっ?」


 ルミナの言葉を聞いてマリーも改めて、サブロー・ハインリッヒを観察する。

 確かにその表情は、辛い苦しいなどではなく笑っていた。

 劣勢に立たされているのに表情は笑顔なのだ。


「モンテロ・ハルト。認めよう、お前は今のワシにとって好敵手であるとな。ワシが後8歳歳を取っていれば取るに足らぬ相手であろうがな」


「ほざくな。たかだか足を切りつけた程度で良い気になるなよ小僧」


 セル、お前の戦い方は、今のワシにとっても良い学びとなった。

 体格差があるのなら、アヤツの死角から攻撃してやれば良い。

 だが、若返るというのもまた体の動かし方についていけないものだな。

 昔ならできていたであろうことすらままならぬとは、これ以降は暫くは策を弄する策士に徹するのが良かろう。

 マリーやロー爺にこれ以上、心配をさせぬためにな。

 やれやれ、こういうのはあまり得意では無いのだが。


 サブロー・ハインリッヒは、地面の砂を掴むと盛大にモンテロ・ハルトの顔面に向かって投げつけた。


「うおっ。何しやがる。前が見えねぇぞ」


「搦手というやつだ。悪く思うな」


「こんの卑怯もんがぁぁぁぁぁ!」


「戦に置いて、卑怯などということはない。勝つための最善を尽くすことだけだ」


「この俺が小僧如きに、やられるってのかよ」


 砂を必死に払おうとしているモンテロ・ハルトをサブロー・ハインリッヒは、実休光忠で、斬るのではなく刺した。

 成人男性と少年では、体格差だけでなく力の差もある。

 斬ったところで致命傷になり得ないと考えたサブロー・ハインリッヒは、突き刺すことを選んだのである。

 そして、これは正解である。

 サブロー・ハインリッヒが実休光忠を抜くと前のめりに崩れ落ちるモンテロ・ハルト。

 貧しい商人として産まれ、同じ貧しい人間から私腹を肥やし、成り上がった哀れな男の最期である。


「(これがサブロー・ハインリッヒか。荒削りだが我流で学んだ剣術が通用しなんだか。それに搦手とは、見事という他ない。俺が負けるのも当然の結果か。だが、このモンテロ・ハルト、例えやり直せたとしても、その生涯に悔いは無い。悔いがあるとすれば、最後までサブロー・ハインリッヒをガキと侮ったことである。貴様が描く未来をあの世で見ていてやろうぞ。先に逝って待ってるぞガロリング卿)」


 モンテロ・ハルトは、貧しさこそが敵だと貧しいからこそ母はろくな治療を受けられず。

 貧しいのに人に施しなどする父のことを否定し続けてきた。

 自分は絶対にそうはならないと。

 モンテロ・ハルトのやり方は、間違っていたのだろう。

 だが、モンテロ・ハルトもまた階級社会に縛られた悲しき人間だったということを忘れてはならない。

 貧しさから成り上がるために商人から貴族を目指し、ロルフ・ハインリッヒに取り入り、公爵にまでなった。

 モンテロ・ハルトが父のように生きていたらサブロー・ハインリッヒは、快く迎え入れたかもしれない。

 だが、モンテロ・ハルトにその選択肢はなかった。

 貧しいのに施してばかりの父のせいで、母を亡くしたモンテロ・ハルトにとって、父の行いは憎むべき存在だったからだ。

 だから、モンテロ・ハルトは、何よりも権力を求めたのである。

 その方法が、自らと同じ人間を生むことなど考えもせずに、自己中心ゆえにその身を滅ぼしたのだ。

 それを最期まで後悔してないと言い切れる人間が果たして、何人いるのだろうか。


「(夏草に 刹那の隙に 滅ぶ我が身かな)」


 モンテロ・ハルトは、最期にこんな言葉を思い浮かべていた。

 意味は、夏草が生い茂る中、数秒の隙を晒して、討ち取られた我が身を嘆く詩である。


「大将首、サブロー・ハインリッヒが貰い受けた!」


 その瞬間、大歓声が上がり、モンテロ・ハルトの死と共にショバタ城の奪還となったのである。

 ここまでお読みくださりありがとうございます。

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 それでは、次回もお楽しみに〜

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