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信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜  作者: 揚惇命
2章 オダ郡を一つにまとめる

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67話 マリーカ郡のこと

 ここに一心に祈りを捧げる女性がいる。

 この女性の名前をマリアンヌ・プリストと言い。

 チャルチ郡を治めるアダムス・プリストの実の娘で、セイントクロス教に傾倒したために養女に出された。


「マリアンヌ様、マリアンヌ様。ぼーっとして、どうされたのですか?」


「ごめんなさいカトリーヌ。カトリーヌが対応したというオダ郡のサブロー・ハインリッヒなる人のことを考えていたのよ」


「まさか。姫様。恋ですか?恋バナですか?何でも聞いてください。お話ししちゃいますよ〜」


「そんなんじゃないのよ」


 織田に三郎、まさかね。

 私はこの世界に来て、すぐ自分に前世の記憶があることを知った。

 そう、私はかつて帰蝶と呼ばれていた。

 何故、私は別の世界に来てしまったのか。

 考えない日はなかった。

 そんな私を救ってくれたのが叔父さんに教えてもらったセイントクロス教だった。

 三郎と信忠のためにずっと祈り続けよう。

 それが例え仏教じゃなくても良かった。

 何かに縋りたかったの。

 直ぐに、このセイントクロス教が南蛮の宣教師にもたらされた宗教と酷似していることがわかった。

 でも、そんなのどうでもよかった。

 愛した人と養母である私に懐いてくれた信忠のために一心不乱に祈る。

 そんな私を真の意味で救ってくれたのは、親を亡くし行き場を無くした子供達だった。

 そんな子供達のために私は養護施設を作ることを叔父さんに、いえ今は養父と言った表現が正しいでしょうか。

 敬虔なセイントクロス教であることを隠していらっしゃいます養父は、私の提案に心を打たれ、ひっそりとした丘の上に建ててくださいました。

 ここが私の安らぎの居場所。


「でも姫様、顔が真っ赤ですよ?」


「もう、揶揄わないでよカトリーヌ」


「マリアンヌねぇちゃんのお顔がりんごだ〜」


「こら、カイト。御嬢様に何て口の聞き方してるのよ!」


「うるさいやい。僕の名前を使って、兵士試験に合格したカトリーヌねぇちゃんに言われたくないやい」


「この。全く、口が減らないんだから」


「カイトはやんちゃするぐらいが可愛いのよ」


「姫様がそうやって甘やかすから」


「フフッ。カトリーヌは、私よりも6つも年上なのに、友人付き合いしてくれてありがとう。助かっているわ」


「いえ、姫様には、こうして孤児となった私たちに寝食を施してくださいましたから。御恩をお返ししたいのです」


「ほら。硬くならないの」


「何というか姫様と話しているとまるでお母さんと話しているような気分に」


「あら、それはありがとう。私の溢れ出る母性というやつね。クスクス」


「やっぱりここにいたんだねマリアンヌ。いやキチョウ」


「リチャード叔父さん、あっリチャード養父上」


「ハハハ。どちらでも構わないよキチョウ」


 そう、私の名前は、キチョウ・プリスト。

 セイントクロス教の洗礼名がマリアンヌ。

 ここの孤児の皆んなは、私のことをマリアンヌねぇちゃんと呼ぶし、巣立って独り立ちできるようになったものは、リチャード養父上の元で、臣下として、働いているので、姫様と呼ぶ。


「御領主様、どうかされたのでしょうか?」


「あぁ、カトリーヌ、いつもキチョウの護衛、ありがとう。それはそうと兄が逆らえないとはいえ、迷惑をかけたね。ハインリッヒ卿のこと感謝している。とても8歳とは思えない神算鬼謀の数々で、陛下の御前で、マル卿とドレッド卿を手玉に取っているのは、滑稽だったよ」


「ほんと。大変だったんですからね。あんなの懲り懲りですよ」


「ハハハ。悪かったね。それで、兄は、やっぱりマル卿とは、切れないみたいだよ。僕にもタルカ郡への参陣命令が届いた。陛下に、キチョウのこと、バラされたくなければ、手を貸せとね。やれやれ、僕個人としては、ハインリッヒ卿が勝つことに期待してるんだけどね。ままならないものだよ。僕に万が一のことがあったら、ここの統治は、キチョウに任せたい。今更、他の誰かに任せられないからね。頼めるかい?」


「心得ました。ですが、リチャード養父上、サブロー・ハインリッヒなるものが私の思う方であれば、恐らくこの苦境で味方となってくれる方を悪くはなさいません。例え父と袂を分つ事になろうとも。リチャード叔父さんは、ここの領民のことを第一にお考えください」


「キチョウは、昔から年に似合わず聡明だった。兄は、ほんと見る目がないよ。保身のために実の娘を実の弟の養女にするなんて、わかった。キチョウの言葉は、深く心に刻んでおくよ。カトリーヌ、キチョウと留守の間のこと任せる」


「畏まりました。絶対に無事にお帰りください御領主様」


「兄とハインリッヒ卿、そのどちらに付くべきか理解はしているんだよ僕も。でもね。家族を裏切ることなんてできないんだ。僕は敬虔なセイントクロス教の信者だからね。兄が最後まで、我を通すというのなら付き合うしかない。義理の無い人間には、なれないからね」


 義理と聞くといちが嫁いだ長政ながまさのことを思い出すわね。

 三郎の良き義弟となるはずだった。

 でも、家族と義理を捨てられず反抗する道を選んだ。

 三郎が最後まで説得を試みたけど、我を貫き通した。

 長政が生きていたらきっと三郎のために本能寺に真っ先に駆けつけて、突破口を開いてくれたかもしれないわね。

 また、向こうでのことを思い出すなんて。

 ハインリッヒ卿、聞けば聞くほど三郎そっくりよね。

 父の亡骸に砂をぶつける話なんて、仏前に抹香を投げつけたって聞いた話と被るし。

 追い込まれている状況の中、お祭りをするなんて、何考えてるかよくわからないところもほんとそっくり。

 それでいて、領民と家族を誰よりも大事にしていた。

 今も領民を守るために必死に策謀を巡らせてるのでしょうね。


 マリーカ郡を治めるリチャード・パルケスは、チャルチ郡を治める兄のアダムス・プリストの命を受け、タルカ郡にて、デイル・マルとの会議に望むこととなるのだった。

 ここまでお読みくださりありがとうございます。

 ブックマーク・良いね・評価してくださいますと執筆活動の励みとなりますので、宜しくお願いします。

 それでは、次回もお楽しみに〜

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