65話 悪戦苦闘の乗馬
体重をクリアしたからといって、簡単に馬に乗れるわけではない。
いや、言い方が悪かったな。
乗ることは然程難しくはない。
馬としっかり交流できれば、乗ることはできる。
このように走らせるのが難しいのだ。
後は、そうだな馬を命ある生き物と認識できるかだな。
「おっおい。待てよ。この駄馬が。勝手に動くんじゃねぇ。うわぁ」
「登録名、畑耕して10年。失格」
「待ってくれ。まだできるって。なっ」
「若、ゴホン。サブロー様の話を聞いてなかったのか?このコースでは、落ちたら失格だ。次」
「クソォ。俺は悪くねぇ。馬が悪いんだ」
「違うよ〜お馬ちゃんは悪くないよ〜貴方が悪いんだよ〜。ね〜」
「ヒヒーン。ブルブル」
その言葉に応えるかのように触れられた馬が鳴いた。
「何だよ。ガキが」
「その言葉遣いだよ〜。お馬ちゃんだって、生きているんだからね〜。酷い言葉投げかけられたら応えてくれないよ〜。ほら見ててね〜」
そう言って、まだ幼さの残る少女は、あっさりと500メートルの直線コースを35秒程で駆け抜けてしまった。
「乗せてくれてありがとねお馬ちゃん」
「ヒヒーン」
「エヘヘ。どういたしましてだなんて、可愛いこと言っちゃって〜」
「なっ!?馬の言葉がわかんのかよガキ?」
「ガキじゃないもん!ウマスキだもん!畑耕して10年さん」
「登録名ウマスキ。直線コース、クリア」
「あっ登録名か。んなこと言ってんじゃねえ。さっきの答えは?」
「動物さんたちだって、私たちと同じように生きているんだから。こうして、触れ合えば言葉もわかるんだよ〜」
「んなわけあるか!どうせまぐれだろ。あーあ、俺もお前のなった馬ならクリアできたってのによ」
「カチーンときた〜。そんなに言うならこの子に乗って、やってみなさいよ!良いですよねレイヴァンドさん」
「いや。しかし」
「面白い提案だな。良い。馬も人を選ぶということの手本となろう」
「若、ゴホン。サブロー様、良いのですか?1人一回と決めたところ、これでクリアでもされれば」
「そうはならん。この娘の言う通りな。但し、次も落馬したら、罰則を与える。その覚悟はあるか?」
「ヘイ。領主様、馬が悪かっただけでやすから。今度こそクリアして見せやすぜ」
彼なりに言葉遣いを改めたつもりなのだろう。
まだ、どこか砕けてる気もするが。
「おぅ。良馬。あの嬢ちゃんみたいにクリアまで頼むぜ。って、おい。何、勝手に走ってやがる。そっちじゃねえ。もっとゆっくり走りやがれ。うわぁ」
「登録名、畑耕して10年。失格。若、ゴホン。サブロー様より罰則を与える」
「ちょっと待ってくれ。何かの冗談だろ。おい。このガキが何かしやがったんだ」
「さっきから馬が悪いだの。挙げ句の果てには、この娘が何かしただのと言い訳ばかりで、己の不手際を認めんとは、人のせいにばかりするでないわ!貴様には、罰として、ハンネスの元でしっかりと一から教育してもらうのだな」
「へっ?」
「一応、言葉遣い以外は、合格ということだ。まぁ馬はやめておけ。歩兵として励むが良い。ハンネスに感謝するのだな。お前のようなものを教育したいと言ったのだ」
「ありがとうございやす領主様」
「娘よ。いやウマスキだったか。見事な手綱捌きであった。この後の結果次第では、ワシの馬廻り役を手にすることができるかもしれんぞ。励め」
「はい。領主様の期待に応えられるように頑張ります」
畑耕して10年は、相撲で良い成績を残していたからな。
しかし、今回は集まった1000人以外の飛び入り参加の女性たちの中にも実りが多くあった。
特に乗馬と弓に関しては、目を見張るものがあった。
女相撲ができなかったことが心残りだが。
女性を男性のようにまわしだけで、やらせるわけにはいかない。
ギリギリまで考えたが服が間に合わなかった。
女性らしい部分をしっかりと隠して、その上からまわしを付けられるような服をな。
こればかりは仕方あるまい。
王都での道中で出会った女兵士のように女性でも戦えるものはいるだろう。
惜しいな。
今回は実りも多かったが、反省点も多くある。
次回に活かさねばな。
どうやら、次のものが初心者コースの最後か。
「登録名、案山子を見つめる男。落馬により失格」
「ありがとうございました。上手く乗りこなせなかったか」
「ヒヒーン」
「おいおい。顔を舐めるな。お前のせいじゃない。俺の力量不足だ」
空気抵抗をモロに受けて、身体を大きく左右に揺られて落ちたか。
だが、馬との意思疎通はよくできていた。
馬もあのように慰めているからな。
まぁ、失格とはなったが育成次第で、馬を乗りこなせるかもしれんな。
だが今回は、歩兵としての参戦となるだろうが。
しかし、相撲が1番盛り上がったのは言うまでもないが乗馬はあまり盛り上がらないか。
何人かに分けて競争にするべきだったか?
いや、それだと落馬した場合、別の馬に踏まれる危険性がある。
極力危険は最小限にせねばな。
この世界の馬が人の気持ちを敏感に感じ取り、落馬したら即座に止まれるというのがあっても集団で横一列に走らせた場合、どうなるかわからんからな。
やはり、相撲や的当てと違い、中級コースまで進めたのが50人とはな。
こういうのは古くから馬と親しんでいる貴族の方が優れてたということか。
まぁ、全員が女というのは、面白いか。
女性たちの乗る騎馬隊か。
重い鎧を付ける重装騎馬隊の編成は夢となったが軽装騎馬隊として、速度を重視した運用方法ができるかもしれんな。
さて、中級コースはどうであろうな。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ブックマーク・良いね・評価してくださいますと執筆活動の励みとなりますので、宜しくお願いします。
それでは、次回もお楽しみに〜




