64話 3日目の祭りの演目は乗馬?
サブロー・ハインリッヒが壇上に上がり、3日目の祭りの挨拶と競技の発表とルールの説明を始める。
「我が領民たちよ。本日もこれほど集まってくれたこと。心より感謝する。亡き父も空の彼方で喜んでいることだろう。さて、1日目の相撲、女性陣の参加を許可しなかったのは、間違いだった」
サブロー・ハインリッヒの言葉に、男衆が歓喜の声をあげている。
「ウホォ。まさか、最後は裸の女の取っ組み合いが見られるってのかよ」
「フェッフェッフェ。長生きして良かったわい」
「女同士の裸相撲、バンザーイ!」
「ええぃ。静まれ!最後までサブロー様の話を聞かんか馬鹿どもが!」
熱狂に水を刺したのは、ゴルド・グロスターの言葉である。
「ワシの言い方が悪かった。女性の皆を不安にさせたな。女性の場合は、もちろん服を着てだ。今回は、金具などのついていない服で尚且つ服を掴んだりできないようなものを用意できなかったのだ。すまなかった。それは、さておき。先程、どこかから聞こえたように、本日の祭りも女性にも参加できるものだ。勿論、飛び入り参加も歓迎しているぞ」
サブロー・ハインリッヒの言葉に男衆は肩を落とし、女たちは安心した。
「そうよね。領主様がそんなことするわけないものね」
「安心したぁ。昨日の飛び入り参加から仕込まれてたのかと疑っちゃったよ〜」
「今日も参加できる祭りってどんなものかしら。昨日の見て、私もやってみたいなって思ってたのよね」
「せっかくのお祭りだもの。楽しんでも良いわよね」
「皆さん、期待でワクワクしているのはわかりますがサブロー様の御言葉をきちんと聞かれるように」
女性たちを宥めるように優しい声で、ルイス・ヴェルトハイムが言葉をかけて、落ち着かせる。
「ゴルドにルイスよ。我が領民が手間をかけさせた。感謝する。では、本日の祭りだが馬に乗る簡単なものだ。この場にいる者の中には、馬に慣れ親しんでるなんてものもいるかもしれない。だからこ、コースを3つ用意した」
コースとは、進路のことである。
まぁ、例の如く、この世界ではこっちの方が伝わりやすいらしく使っているのだが言いにくくて噛んだ。
少し恥ずかしいのは、言うまでもない。
まぁ、領民たちに気付かれていないのが幸いか。
「まぁ、馬ですって。これこそ天命よ。はいはーい。私参加します。こう見えても馬屋の娘ですから」
「馬なら乗れるかしら。乗ったことないのだけど。勇気を出すのよ。私も参加します」
「フォッフォッフォッ。まぁ、若殿の話を最後まで聞いてから決められるが良かろうて」
ハンネス・フロレンスが次々に手を挙げる女性たちを制止した。
「ハンネス、感謝する。コースの説明だが馬に乗れるかを見るための真っ直ぐ走るだけの初心者向けの直線コース。馬をコントロールすることができるかを見るための中級者向けの外周コース。そして、繊細な馬のコントロールを要求される上級者向けの障害物コースの3つだ。では、手本をローじ。ゴホン。レイヴァンド卿に見せてもらうこととする」
「はっ。お任せを」
ロー・レイヴァンドは、鮮やかに馬に飛び乗ると上級者向けの障害物コースを軽々とクリアした。
障害物コースには、馬が飛び越える程度の柵に穴に水を入れた池のようなものに泥の道、それらが点在している外周コースだ。
「流石、レイヴァンド卿だぜ。騎兵を率いて戦った戦は数知れず。ラルフ様から与えられた二つ名は、確か黒い鎧が真っ赤に染まることから鮮血の黒騎士だ。また、あれが見れるなんてな。若い頃、戦場で見た時以来だ」
「なんて、鮮やかな手綱捌きなの」
「腕は衰えておらんようじゃな。ロー」
「全く、ローの奴め。あの馬捌きは誰にも真似できねぇだろうが。手本としてどうなんだよ。ったく。ここは俺が」
「いえ、手本として、最高でしょう。直線コースに外周コース、そこに障害物の飛び越え方も見せたのですから。まぁ1つだけ責めるとしたら支給される馬ではなくて、ローが育てた愛馬ってことぐらいでしょうか」
「ルイス、それは辛辣な意見だな。若からは手本をと言われただけなのでな。愛馬を使ってはダメとは言われていないからな」
「全く、それは屁理屈と言うんですよロー。ですが素晴らしい手本だったことは認めましょう」
帰ってきたロー・レイヴァンドに皮肉を言うルイス・ヴェルトハイム。
「レイヴァンド卿、手本御苦労であった。さっきのようにする必要はない。今のは、レイヴァンド卿が見せた絶技だ。クリアの方法は独自にしてくれて構わないが原則として、策は突き破らないこと。一応、馬に優しいように棒にしてるから当たったら落ちるだけだとは思うが。2回落としたらそこで競技終了だ。直線コースと外周コースは、落馬せずに走り抜ければクリアとする。以上だ。では、皆の奮闘を期待している。横綱、お前は今回は棄権だ」
「何故でごわす!?」
「まぁ、乗ってみればわかるか」
サブロー・ハインリッヒの言葉に観客も固唾を飲んで見守る中、横綱が乗ろうとした馬が足をかけられた瞬間、横綱を落とした。
「痛いでごわす」
「まぁ、皆も見たと思うがこういうことだ。簡単に言うと馬に乗れる負担重量が軽くオーバーしている。横綱の体格を見るに100手前はあるだろうからな。よって、全員今から体重を測ってもらい60以上のものには、残念ながら棄権とさせてもらう。馬に何かあっては困るのでな」
そして、体重を計り終わる頃には、200人ほどが棄権となった。
何れも相撲で良い成績を残した者ばかりだった。
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それでは、次回もお楽しみに〜




