62話 ロルフ祭2日目を終えて
中に入ってきたサブロー・ハインリッヒに駆け寄るロー・レイヴァンド。
「若、一向に中にお戻りにならないから何かあったのかと心配しましたぞ」
「ロー爺、心配をかけてすまなかった。マリーの男と話していた」
「私に男なんていません!部下です!」
「ハハハ。あんなに親しそうに話していてか?」
「幼馴染です!」
幼馴染か。
その言葉を聞くと不思議と金柑頭と帰蝶のことを思い出すな。
ワシが愛した女とワシが死ぬ羽目になった男のことを同時に思い出すなど腹が立つがな。
説明しよう。
金柑頭とは、かの有名な本能寺の変で主君である織田信長を裏切り、自刃に追いやった明智光秀のことであり、織田四天王にも数えられる名将で、鉄砲の扱いがうまかったと伝わっている。
帰蝶とは、マムシと恐れられた斎藤道三の娘で、織田信長に嫁いだ濃姫のことであり、斉藤家の家臣だった明智光秀とは幼馴染であり、好意を寄せられていたと言われている。
「そうでしたか。若、何か急ぎの報告でも?」
「いや、顔見せや挨拶と言ったところか?ワシとマリーの仲を勘繰り、不安に駆られたかのどちらかであろう」
「若様!そろそろ、私も怒りますよ?」
「すまん。すまん。からかいすぎたな。ロー爺、して、どうした?」
「はっ。若、2日目のことで話したいことがあると御三方が集まられております」
「ハンネスとゴルドとルイスか。承知した。ロー爺よ。案内を頼む」
「はっ。こちらに」
ロー・レイヴァンドの案内で応接間に入るサブロー・ハインリッヒ。
「サブロー様、待っていたぞ」
「若殿、お待ちしておった」
「サブロー様、2日目も積極的に動かれていましたね」
上から順にゴルド・グロスター、ハンネス・フロレンス、ルイス・ヴェルトハイムだ。
「待たせたようですまなかった。何やら2日目のことで聞きたいことがあると?」
「うむ。今日のことでサブロー様は、味方の中にいる敵方の間者を炙っているように思うがどうだ?」
「ゴルドの言った通りだ。日和見の連中の中には、明らかに爺様と仲の良かった者が紛れている。そして、その者たちは、一切騒ぎを起こさなかった。これが意味することは、恐らく爺様は、祭りの翌日、ここに攻め寄せるのではないかと予想を立てた」
「成程のぉ。わかっているからこそ。追い出したくて手を尽くしたが動きを見せなかったと。なら、奴らの目的は恐らく、このショバタを取ることだろうて」
「えぇ、ハンネスの言う通りでしょう。恐らく、3日目の祭りの終わりから動き始めるのではないかと」
「だからワシはこのショバタを一時的に放棄し、ゼンショウジに移るつもりだ」
オダ郡ショバタ町とは、サブロー・ハインリッヒが産まれた地であり、本拠地として立派な城郭がある。
奇しくもこの名前も現実世界で織田信長が産まれた勝幡城と響きが似ていた。
このことからサブロー・ハインリッヒは、今回、反サブロー連合と戦う上で新設する砦の数々に、現実世界で用いた砦の名前を多く採用した。
その一つが善照寺砦で、かの有名な今川義元と織田信長が争った際に鳴海城を囲むように築いた砦の一つから名前を取り、ゼンショウジと名付けた。
「成程、来るのがわかっているから敢えて、放棄して、それよりも良い位置を取るとは、考えましたね。しかし、タダで渡すのは如何なものかと」
「ルイスの言、もっともだ。だから、ここを取ったら死地だと爺様に思わせるようにショバタと爺様の本拠地であるスエモリを囲むように砦を建設した」
「サブロー様は、もう砦を建設したのですか!?」
「うむ。マリーに頼んで、深夜のうちにコツコツとな。今は、砦全体に姿隠しの魔法をかけて、見えなくしてくれている」
「何とエロフとは、エロさだけでなくそんなことまでできるのか!?恐ろしい。味方であることが心強いほどにな」
「だからエロフじゃなくて、エルフです!それにエロさって何ですか!この服は正装です!」
「何と!?その話は、真か。眼福ではないか!」
「興奮しないでください!」
「マリーよ。乳繰り合ってるところすまないが、話を続けてもかまわんか?」
「若様まで、揶揄うのはおやめください!」
「ガッハッハッハ」
「わかった。わかった。話を続けるぞ。明日の祭りの終わりと共に、領民たちを速やかにゼンショウジに移し、ここをもぬけの殻とする。勿論、ただ空にするわけではない。城を開け放って、城壁に案山子に鎧を着せて立てさせてだがな」
「ほほぉ。若殿も考えましたな。明らかな罠に飛び込む馬鹿はおらん。ならそこに伏兵を仕込むのは如何かな?」
「その提案は、大変有り難いが誰に任せるつもりだハンネス」
「倅に任せようかとな。フォッフォッフォッ」
「成程、ハンネスの御子息であるハイネルなら申し分ないでしょう。なら、もう一手間加えませんか?」
「ルイスよ。もう一手間とは?」
「4箇所ある城門の3箇所に燃えやすいものを設置して、罠を見破って、中に入った敵が慌てて出てきたところを伏兵にて殲滅してしまうのです」
「それは良い。ハンネスとルイスの案を採用させてもらおう」
「では、俺はハンネスやルイスが不在となるキヨスの守りを固めるとしよう。そのことで相談なのだが相撲と的当てで優勝とまでは行かなくとも良い成績を残した何人かを訓練兵として、預けてもらいたいのだが構わないか?」
「歴戦の将であるゴルドなら鍛えてくれよう。喜んでお預けする」
「感謝する。さて、面白くなってきたな。ハンネスにルイス」
「うむ。この感じは、ラルフ様と戦場を共にした以来じゃて」
「懐かしいですね」
「では、残りの貴族の奴らの対処はそのようにするとして、明日も早いので、もう眠らせてもらう」
「そうでしたな。サブロー様は、まだ8歳。眠たくなりますな。失礼した。話していると同い年ぐらいかと思って、ついつい付き合わせてしまいましたな」
「構わん。ゴルド、それにハンネス、ルイス。貴殿らの協力、本当に感謝している。これからも宜しく頼む」
サブロー・ハインリッヒの言葉を聞き3人が深々と頭を下げるとその場を後にして、皆眠りにつくのだった。
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