60話 的当ての決着
あんな貴族の言葉など全く意に介さずマリーもスナイプ・ハンターも互いの全てをぶつけて、弓を撃ち合っていた。
しかし、マリーは200メートルで黄色の的を射抜いたがスナイプ・ハンターは、赤色の的だった。
「参った。マリー殿、良い勝負だった」
「いえ、まだ終わりではありませんよ。言ったはずです。ここからは1射でも的に当たればクリアですと。さぁ、皆もまだ私たちの戦いを見守ってくれていますよ。続きと参りましょう」
「フッ。そうだな」
観客たちは、一つ終わるたびに惜しみない拍手を送っていた。
それは、ここまでの間に敗れていった選手たちも例外ではない。
ここにいる全ての者がこの2人の勝負の行く末を固唾を飲んで見守っているのだ。
続く210メートルでもマリーは、黄色の的を射抜いて見せた。
「ブラボー。なんて美しいフォームなんだ。見惚れちまったぜ」
「まぁ凄いんじゃないの。スタイルは私に負けるけど」
「実はあのメガネが本体なんてことは、あるわけないよな。アハハ」
スナイプ・ハンターは、最早どこまでマリーが真ん中の的を射抜けるのか見たいがために青の的にかろうじて当てている感じだ。
「やりますね。人間がここまで付いてこられるとは、思っていませんでしたよ」
「ん?マリー殿、その言い方では、自分がまるで人外であるかのような言い方では?」
「あっ。いえ、その私についてこられるが抜けていました。あはっ」
「まぁ、昔の俺ならその言い方に腹が立っていたと思いますがここまで実力差を見せつけられると納得してしまいますよ。次から俺が先で構いませんか?」
「えぇ、構いませんよ。若様にお伝えしますね」
ん?
マリーの奴、こちらに来るなどどうかしたのか?
何々、成程。
承知した。
「ゴホン。ここで、順番の変更願いがスナイプ・ハンターより出された。ワシは、これを受け入れることとする。マリーは、黄色の的を当てているがスナイプ・ハンターは、赤・青と落としていることを気にしての提案とのことだ。ワシは、2人が死力を尽くせる場所を用意してやるだけだ」
こうして、順番変更となった220メートルでもスナイプ・ハンターは、黒の的に当てるのが精一杯だった。
という言い方をしているがワシは弓でその距離を狙うことなど勿論できん。
そもそも、90メートル以降は全く自信がない。
種子島ならいけるだろうが。
説明しよう。
種子島とは、かつて日の本の種子島に鉄砲が伝わったためにそう呼ばれている火縄銃のことである。
「あの姉ちゃん、あの距離を見えてんのか?」
「正確無比のショット、痺れる〜」
「ヤバすぎて、ちょっと引く」
マリーはというと220メートルも黄色の的を射抜いていた。
そして、230メートルでもスナイプ・ハンターは、白の的に当てるのが精一杯で齧り付いていた。
「おぅ兄ちゃん、よう頑張った。相手が悪すぎやでこれは」
「まぁ頑張ったんじゃないの。私の美貌の保ち方の次ぐらいには、ね」
「副頭領、俺たちが不甲斐ないばかりに、御迷惑を」
「そんなことはないでごわす。マリー殿は、サブロー様の護衛を命じられているお人でごわす。体術から遠距離にかけて、幅広くお守りできるようにと努力した結果でごわす」
「師匠の言う通りかと。スナイプさんは、間違いなくこの的当てでは、優勝です。その人の部下であることに誇りを持って良いかと」
「横綱殿にセル殿、慰め感謝致す。しかし、我々が副頭領を守れるぐらいでなければならないのだ。戦争孤児である我々を拾って、名前をくれたハンター家の恩に報いるためにな」
マリーは230メートルでも手を抜くことなく黄色の的を射抜いて見せ、続く240メートルで、スナイプ・ハンターは、とうとう的に当てることができなかった。
「ハハハ。本当に参った。俺の挑戦はここまでだ。俺の我儘で勝負を受けてくださり感謝するマリー殿」
「いえ、若様からスナイプ・ハンター様から挑まれたら受けるようにと前もって言われてましたから。それに、勝負をしたかったのは、私の方なのです。複数撃ちできる人は極稀です。だから最後に、私の超絶絶技をお見せしますね」
マリーは、300メートルから10本の矢をまとめて引き絞ると放った。
それらは綺麗に黄色の的を射抜いていた。
言葉を失う領民たちも次の瞬間には盛大な歓声が巻き起こるのだった。
「何だ。アレ、人間業じゃねぇ!あんな凄い人が女で、しかも領主様の護衛なのか。安心じゃねぇか!俺たちの領主様は、俺たちのために娯楽を提供し、俺たちの暮らしを良くしてくれた。そんな人の護衛が女だと聞いて、不安しかなかったが俺はアンタを認める。アンタが俺たちの大事な領主様の護衛で良かった。これからも頼んだぜねぇちゃん」
「まぁ、認めてあげても宜しくてよ。私の美貌程度には、ね」
「ブラボー。アメイジング。最高だ」
観客の鳴り止まない賞賛を受ける2人はというと。
「3射同時で、俺すごいだろなんて自慢していた自分が恥ずかしくなる」
「いえいえ、ここまでできるようには、ざっと100年はかかりましたから」
「ん?100年?マリー殿は、一体何歳なので?」
「乙女に年齢を尋ねるなんて無粋ですわよ。では、若様の護衛に戻りますので、スナイプ殿」
「あっ。はい。母さん、以来だな勝てないと思った女性に会うのは」
マリーとスナイプ・ハンターは、お互いの健闘を讃えあい握手をして、2日目の祭りも終わりを迎えるのだった。
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