56話 的当てトーナメントの開始
上位100名による的当てトーナメント戦が始まった。
100名の中に飛び入り参した数名の女性のうち5人とスナイプ・ハンターが村から連れてきた5人の女性が参加していた。
総勢1100人ほどが参加して、女性が上位に10人残っている。
これは、凄いことだ。
この世界での女性の地位は低い。
独身女性には、自由も名前も与えられず。
既婚女性には、男性が名付けするという男尊女卑の精神が強い。
勿論、結婚した女が戦に出たり、外で働くなど以ての外、家庭に入って家を守れという。
独身女性の扱いはもっと酷い。
よくて、商人の家での下働き。
悪くて、男の性欲と性癖をぶつけられるだけ。
日の本における遊郭よりもよっぽど酷い環境の中、働かされるのだ。
そんな世界だ。
ワシはそれを徹底的に破壊していくつもりだ。
女性が働いて何が悪い?
男の全てを受け入れ、子供を産むだけの機械だとでも思っておるのか?
そんな世界は、壊してやる。
さて、脱線してしまったが面白いことにギリギリ100位に相撲で活躍した少年の名前がマリーによって呼ばれる。
「100位に10点でセル・マーケット様。以上100名によるトーナメント戦となります。形式上は、トーナメント戦と言っていますが全員90メートルからスタートしていき10メートルづつ距離が遠くなっていく中で、的に当たらなかったものから脱落していきます。ですが先程と違い、3射のうち1射でも的の何処かを射抜くことができれば、次に進めますので、皆様の奮闘を期待しております。それでは、トーナメント戦、スタートの前に若様から一言賜りたいと思います。若様、宜しいでしょうか?」
マリーの奴め気の利いたことを。
さて、挨拶してやるとしよう。
「マリーよ。挨拶の機会をくれたこと礼を言う。さて、総勢1100人による予選、実に楽しく拝見させてもらった。予選を突破した100名の中に10名の女性がいること実に嬉しく思う。それにセルよ。ギリギリでの突破だからなどと卑下することはない。お前に魅了されている者もいるのだからな。ところでワシは、女であろうと才があれば取り立てたいと考えている。この結果次第では、新しく弓部隊の増設も考えている。トーナメント戦を楽しみにしている。是非、ここにいる頭の固い貴族どもを唸らせてやってくれ。誰のことを言っているかは、己が1番わかっているだろうがな。では、皆の奮闘を期待する」
ワシは、俯いてばかりのセルを少し激励してやった。
他の者には、贔屓しているように見えたかもしれんがアイツにはそれだけ目と期待をかけているということだ。
横綱の補佐として、新設する重装歩兵隊の副官に任命するつもりだ。
賢いアイツなら横綱の補佐ができよう。
さて、先程の言葉で、突っかからずに日和見していた貴族どもがどう出るか見ものだな。
ワシは、己で考えず風見鶏でどっち付かずの奴は信用できんと考えている。
その際たるがあの日和見の貴族どもだ。
ちなみに99位と100位の点数差だが、何と70店ほど離れている。
要は、70メートルと90メートルを当てられなかったのは、セルだけなのだ。
そんなセルが緊張の面持ちで、弓を構えて、精神を集中させている。
そして、相撲の時と違いこの時間騒いでいけないことを感じた観客の領民たちは、その様子を固唾を飲んで見守っていた。
セル・マーケットは、心の中で何度も何度も呟いていた。
僕ならできる。
僕ならできる。
自分に負けちゃダメだ。
自分に負けちゃ。
「ふぅ〜」
大きく息を吐いて放った1射目は、的を大きく逸れて、手前に落下した。
領民たちはため息こそつくが騒ぐことなくその様子を見ている。
そんな中、日和見していた貴族は笑っていた。
「フハハハハ。所詮、それが商人としての限界だよチミ。僕ちんの兵が出ていたら相撲での活躍もなかったかもしれないがね。諦めて、降参したまえよ」
その言葉にカチンときたのは、セル・マーケットに黄色い声援を送り続けていた女性だった。
「アンタ、さっきからうっさいのよ!どこの坊ちゃんか知りませんけどここには頑張っている人を嘲笑う人間なんて、居ないのよ!とっとと出ていきなさいよ!」
この言葉を皮切りに領民たちがそのいかにも貴族の息子丸出しのガキに言葉をぶつける。そんな中、領民に混じって、的確なことをいったのは、ゴルド・グロスターである。
「そうだ。先程、サブロー様の言っていた貴族とはお前のような奴のことだ。思うところのあった貴族は、皆、あそこで頑張る領民を見守っておった。貴様は、アイツの集中力を乱そうとしたのだ!貴様のように領民を貶めようとする者を貴様とは言わん!このままここに居ようとサブロー様に重用されることはないだろう。とっとと出ていくのだな」
ワシが求める貴族の手本を見せ、領民たちの前に守るように立ち塞がったゴルド・グロスターに領民たちからも称賛の声が上がる。
これに耐えきれなくなった坊ちゃん貴族はというと。
「ケッ。こんな甘ちゃんたちなんて、こちらから願い下げだね。僕ちんを敵に回したことをきっと後悔させてあげるよ」
そんな捨て台詞を吐いて、去っていった。
だが、そんなこと全く意に介さず集中力を高めていたセルは、落ち着きを取り戻し、見守る領民たちの前で、2射目を放つのだった。
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