46話 お祭りを行う?
集まった民こと志願兵を前に涙を流すサブロー。純粋に嬉しかったのだ。民自らが選択し、力を貸してくれることが。しかし、これを簡単に受け入れてはいい領主とは言えない。彼らは戦闘の素人なのだ。戦において数が重要なのは確かだ。だが、寄せ集めで勝てるほど甘いものではない。
「若、涙を?」
「言うな。ロー爺」
集まった民の前に立ち、サブローは問いかける。
「民たちよ。この騒ぎは何だ」
タボっとした外套を来ているガタイのいい男が代表して答える。
「おいどんたちは、サブロー様のために集まった志願兵でごわす。如何様にもお使い下さいでごわす」
その言葉を聞きサブローは、無碍にすることを言った後、言葉を続ける。
「必要ない。帰るが良い。ワシの治世で豊かになり、その事に感謝して、前線で使い潰される壁の役割を果たそうと思ったのだろう?自らの命を粗末にするな。十分貢献してくれている。親を悲しませる真似をするな。と普通は怒るところだろうな。だが、こうして自らで選択し、志願兵として、ワシのところに押しかけたこと本当に感謝している。だが、それと同じくらいお前たちの命を預かることに重圧を感じておる。そこでだ。3日後、ここでお前たちの適正を見極める3つの祭りを行おう。そこで適正が無いと判断したものは、此度の戦への参加は見送ってもらうこととする。死んで悲しむ者を増やしたくはないのでな」
「祭りなんかしてる場合でごわすか?」
「それは、心配ない。この祭りには、反サブロー連合も呼ぶつもりだからな。奴らの前で、お前たちの力を示してみろ。戦いたくないと思わせるぐらいにな」
「敵を懐に呼び込んで、一掃する作戦でごわすか?わかったでごわす」
「いや、ワシはこの祭りの期間中は、反サブロー連合に手を出すつもりはない。お前たちは気にせず楽しめば良い。その上で適正があるかの判断はさせてもらうがな」
「おいどんには、よくわからないでごわすがわかったでごわす」
「では、皆の者、3日後を楽しみにしているぞ」
こうして、この場は解散させた。ローとマリーとルミナは不思議そうな顔をしていた。
「若には何が見えているので?」
「ロー爺にマリーとルミナよ。そのような顔をしなくても説明してやろう。これから反サブロー連盟の面々に祭りを行うから見に来るが良いと手紙を送る。すると相手はそれを見てどう思う?」
「うーんとね。サブロー様をね。ザクリと暗殺できる好機だって思うかな」
「ルミナの答えた通り、本来ならそうだろう。しかし、そうはならん。寄せ集めゆえの疑問を抱くだろう。この祭りに参加して、双方に通じようと考える貴族もいるんじゃないかとな」
「成程。若様は、反サブロー連合の瓦解を狙っているのですね?」
「いや。そうではない。そうならないために奴らは集まり、再確認するだろう。そして、こう考える。この祭りの招待を逆手に取って、こちらの情報を探ろうとな。奴らはワシをガキだと侮っている。いつでも殺せるなどと考えているだろう。それゆえ、祭りの間ぐらい子供らしく楽しませてやるか。それが最後なのだからとな。爺様は、良くも悪くも自信家だ。力押しで正々堂々と潰しにくるだろうからな。こちらはその気持ちを逆手に取る」
「若は、ガロリング卿のことをよくご存知ですな」
「3歳までは、面倒を見てくれた良い祖父だったのだがな。奴隷について、面と向かって意見を言ったのが気に食わなかったようだ」
「ヤスとタンダザークの一件ですな?」
「あぁ。あれを何処かから伝え聞いて、怒られたのでな。つい反論してしまった。それ以降は、関わることすらしなくなった。要は、子供のうちに御しておこうと考えたのだろう。良い祖父のフリをしてな」
「そう悲しそうな顔をしなさいますな。俺がおります」
「そうだなロー爺」
俺はこの世でも家族と刃を交えなくてはならないのか。
信勝、お前が命をかけて織田軍を急ぎ取りまとめようとした兄の治世はどうであった?
今頃は昔のように兄弟仲良くあの世とやらで、あの頃のような子供の遊びではなく酒を酌み交わしている予定だったのだがな。
説明しよう。
織田信勝とは、別名を織田信行と言い、織田信長の実の弟である。父である織田信秀が亡くなった直後の織田家中は跡目争いに荒れていて、早急に取りまとめが必要だった。遺言では、跡を継ぐのは信長だと決まっていたのだがうつけと言われていた信長ではなく礼儀作法がきちんとできていた信勝を推す者が多かった。それは、重臣の中にも及び。このままでは、織田が真っ二つになると思われた。信勝は、進んで信長と対立する道を選び、敢えて信長を良しとしない者たちを進んで受け入れ、それらを率いて、兄である信長に決戦を挑み敗北した。大敗ともいえる負けを喫しても信勝を推す者は少なからずいた。弟として兄のためにできることは、早急な織田家の立て直しだった。そのために敢えて反乱勢力を受け入れたのだ。それが後世に兄に背いた裏切り者の烙印を押されようとも。
信勝よ。聡いお前のことだ。兄がうつけなどと呼ばれて内心は怒っていたのだろう。兄より賢い弟など居ないだったか。ワシは、あのような道を選ばずお前に隣で支えて貰いたかった。そう思うのは、ワシのために汚名を進んで着たお前に失礼に当たろう。だが、お前が隣に居てくれれば、どれほど心強かったであろうか。何の因果か。こうしてもう一度生を受けた。もう暫く、そちらで待っていてくれ信勝。兄弟仲良く父上も交えて、いっぱい話をしようではないか。
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