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信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜  作者: 揚惇命
1章 第六天魔王、異世界に降り立つ
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13話 書斎にて

 書斎に籠ったサブローは1人で、考えていた。


 ふむぅ、あのマジカル王国の使者、名をメルセンと言ったか、使者として、数々の修羅場を潜ってきていると見たのだが、な。


 今川義元に仕えていた太原雪斎タイゲンセッサイみたいな奴はなかなかおらんということか。


 奴は、外交手腕に秀でていただけでなく兵を率いても強かった。


 ワシが人質として可愛がっておった竹千代タケチヨの奴を奪い返されたからな。


 武田・北条ホウジョウ・今川の三国同盟の立役者でもあるしな。


 ワシが田楽狭間でんがくはざまで、義元を討てたのは本当に運が良かった。


 太原雪斎の奴が生きていたら負けていたのはワシの方であったやも知れぬ。


 そんな尋常ならぬ感じをあのマジカル王国の使者は漂わせていたのだが、蓋を開けてみればワシのことをただのガキと侮る、凡愚であった。


 しかし、早期にワシに接触を図ろうと考えていた奴のことは侮れぬ。


 どんな思惑か知らぬが父を暗殺し、アイランド公国に楔を打ち込もうとしたということは、間違いあるまい。


 概ね、父によって虐げられている奴隷を利用して、反乱を起こそうとしたのだろうが奴隷たちを見て諦めたのだろう。


 ヤスの奴にしっかりと手綱を握らせていたのが幸いであったな。


 困ったあの使者は、手ぶらで帰るわけにもいかずワシを取り込もうと考えたというのがワシの推測じゃ。


 まぁ、ワシを見極めて欲しいと言われていたとしたら、ちとまずいことになったやも知れぬな。


 まぁ、侮れる相手であることは間違いあるまい。


 ハゲネズミに仕えた天才軍師を思い出すぐらいには、な。


 ハゲネズミとは、信長が農民でありながら柔軟な頭に有能だと判断し、仕えることを許した木下藤吉郎キノシタトウキチロウ、後の豊臣秀吉トヨトミヒデヨシの事である。


 あの当時は、よく奴の正妻であるおねに相談されたものじゃ。


 浮気性の旦那をなんとかしてくれ、とな。


 おねの奴を慰めるつもりで藤吉郎の奴を殊更酷く言うためにハゲネズミと渾名したのだったな。


 全く、良い思い出じゃ。


 ハゲネズミは、女が絡むと人一倍醜悪じゃからな。


 天下人になったら絢爛豪華けんらんごうかに女を囲って、好き勝手するのだろうな。


 気持ち悪いな。


 まぁ、信忠が生きている限り、藤吉郎の奴も従うじゃろう。


 向こうの世界のことは、信忠に任せれば良い。


 ワシは、こっちの世界で第二の人生を歩んであるのじゃからな。


 しかし、どこの世界も人の争いは尽きることが無いのだな。


 この世界でも天下布武を掲げる事になるとは、な。


 時代はいつだって風雲児ふううんじを求めておるのかも知れぬな。


 しかし、事は簡単ではあるまい。


 タルカ郡は、オダ郡の2倍の兵力を有し、ナバル郡は、オダ郡の4倍の兵力を有している。


 この2つが手を取り、オダ郡を切り取ろうとしているのだ。


 我が軍が現在動員できる兵力は、ここに残った500の兵と無事に戻ったヤスの率いる奴隷たちとタンザクの騎兵を合わせて、せいぜい600程じゃ。


 とてもじゃないが正攻法で打ち倒すのは厳しいであろう。


 目を瞑ったサブローの目に、侵攻軍が映った。


 これは!?


 あの時と同じ、どうやらこの世界の神から不思議な力を賜ったようじゃが、これは良い。


 タルカ郡の兵は1000、ナバル郡の兵は2000、合わせて3000か。


 絶望する兵数ではない。


 さらにこの地形、全く、田楽狭間そっくりではないか。


 義元、改めて感謝する。


 うぬは、尾張一刻であったワシを天下人に近い存在へと押し上げるきっかけとなってくれた。


 その夢は志半ばであったがな。


 全く、今頃酒を飲み交わしてあの頃のことを話して、心穏やかに楽しんでいたはずなのだが、な。


 つくづく、お天道様は、第六天魔王だいろくてんまおうと称されるワシが嫌いのようじゃ。


 さて、奇襲が1番じゃな。


 考えを纏めたサブローに扉をノックする音が聞こえる。


「ん?誰じゃ?」


「若様、マリーです。1人の邪魔をして申し訳ありません。お話ししたいことが」


「構わん。ちょうどまとめ終わったところじゃ」


「では、失礼します」


 入ってきたマリーの姿は、髪は金髪で、目は碧眼、肌の色を真っ白で、金平糖を食べてふっくらとしていたお腹周りも細く、耳が長く尖っていた。


「美しい」


 ワシとしたことがここまで見惚れるとは、思わなかった。


「この姿を見ても、若様は変わらないのですね。私は、人間ではありません」


「ん?人間ではないじゃと?」


「はい。私は、エルフと呼ばれる亜人族なのです。高い魔力を持ち、弓の扱いに長けています」


「であるか。それの何が問題かワシにはわからぬ。このような言葉を交わすことができるのであれば、血の通った人であろう」


「フフフ。やはり若様は不思議な御方です。森でエルフにあったら生きては帰れないと言われているほど恐れられている種族ですのに、全く態度を変えることはありません。だからこそ、私も若様に手を貸したくなりました」


「それは心強い。その魔力というのが魔法を使うのに必要なのであろう?」


「全く、若様は本当に聡い御方ですね。その通りです。ですが私たちに精霊石は必要ありませんよ。私たちエルフは精霊と契約していますから。流石に連続で撃ち続ければ、魔力切れとなって、回復に時間を要しますが」


「要は、人間で言うところの体力切れというものか?」


「そう思って、いただいて構いません。手を貸すに当たって、一つだけお願いがあるのですが、それはこの戦いに無事に勝ってからに致しましょう。若様、作戦とやらを教えてくださいますか?」


 ワシは、マリーに作戦を打ち明けた。


「成程、それなら皆様が居ない方が良いですね。巻き添えを喰らっては堪らないでしょうから」


 そう言ったマリーは、皆の元に一度報告に向かうとワシを抱え上げて、風のように去ったのである。

 ここまでお読みくださりありがとうございます。


 マリーはエルフでした〜。


 はい、皆様のお察しの通り耳長族とは、エルフのことです。


 精霊魔法の威力とは、マリーの活躍に乞うご期待。


 ではでは〜


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