↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/91

11話 強襲のドラゴン



「結界を破壊するのも楽しみにしていたのだがな……残念だが、まあいいか」


 上を見上げると空中でドラゴンが滞空しながら喋っている。

 その光景を見ながら俺はユリアに話しかける。


「なあ、ユリア……あれがドラゴンだよな?」


「そ、そうです……どうしてドラゴンがここに……」


「だよなっ!」


 顔を蒼白に染めたユリアに対して、俺のテンションは上がり続けていた。


「ドラゴン、ドラゴンだよ!!」


 やばいよ! マジでドラゴンだよ!

 空想で、想像で、アニメとか漫画で見た通りの、竜じゃなくてドラゴン!

 これは絶対火吐くやつだ!

 やばい背中に乗ってみたい!! 絶対楽しいだろ!

 テンション上がってきた! 


「……お兄さん、どうして、そんなに、笑顔なんですか……」


「えっ? 俺そんなに笑顔かな?」


「……はい。ドラゴンが目の前に、いるんですよ……?」


「そりゃ、ドラゴンが目の前にいるんだよ?」


「……は?」


 ユリアが黙るほど良い笑顔なのだろう。

 それに比べてユリアは今にも気絶しそうなほど顔色が悪くなっている。ドラゴンの圧力が凄まじいらしい。

 せっかくグレイバルトから解放されたのに可哀そうだ。


 そのユリアの様子を確認したところで、もう一度俺はドラゴンに目を向ける。

 ユリアはどうにかしないといけないが、俺の好奇心もどうにかしないといけない。


「目の前にドラゴン……」


 やっぱりカッコいい。

 多分全長15メートル程の巨大な体躯に、鋭い爪と牙。

 深紅を超えた赤黒く鋭く光る鱗。

 睨まれると怯むほどの鋭い眼光。

 全てにおいて完璧なカッコよさを誇っていると言ってもいい。


 俺の異世界で出会いたいランキング1位のモンスターだ。興奮しないわけがない!


「今日も来てやったぞ、グレイバルト!」


 ドラゴンから発せられる声は力強く、その場にいるものを平伏させる様に響く。


「さあいつも通り殺し合おう!」


「今日も来たか……」


 そうつぶやいた初老のおっさんを見てドラゴンの目が見開く。


「……っと、ん? どうしたお前? 見た目が全く違うではないか!!」


「魔王様……」


「さて、どうするか」


「魔力も……減っているぞ!? どういう事だそれは!」


 今までと全く違うグレイバルトに驚きの声をあげる。


「貴様には関係ない事だ。今のオレは見ての通り戦えん状態だ。また改めて来い!」


「改めて来い、だと……? 待て? せっかく来たのにそれはどういう事だ? そんな事言ってもお前は戦えるのだろ……ん? んん!? なんだお前の魔力は!? 魔王の力を感じないぞ?」


「……ふん」


「魔力が……いや、その見た目にその魔力、そしてこの城の結界……。はははははっ! そうか! そういう事か! お前、魔王を辞めたのか!」


 ドラゴンの答えにグレイバルトは声を出さない。


「図星だな。だからその姿は人間か! なる程、なる程な! はははははっ! 面白い、面白いぞ!」


 高らかに笑うドラゴン。

 グレイバルトはただ黙っているが、それに耐えかねたジェミラが叫ぶ。


「黙れ貴様! 魔王様を愚弄するか!」


「愚弄? 我は見たままのことを言ってるだけだが? ただのリッチーが口を挟むな」


 その鋭い眼光でジェミラを睨む。


「くっ……」


「小物はそのままグレイバルトの金魚の糞でもしていれば良い! さあグレイバルトどうする? 今のお前では我を楽しませれるのか?」


「楽しめるかどうかは知らんが、そうだな……部下を馬鹿にされたままでは流石のオレも良い気分ではないぞ?」


「魔王様、私の事など……今の状態では……。私の魔力を渡す事が出来たら……」


「そう悔やむなジェミラ。全てオレが悪い」


 その通りである。魔王を辞めたお前が悪い。

 ……まあ、辞めさせたのは俺だけど。


「はははっ! そんなやり取りはどうでもいいのだ。やる気があるなら早く戦おうじゃないか!」


「少し待っていろ。すぐに準備が出来る」


 そう言いながらもグレイバルトは立ち上がろうとしない。


「魔王様、やはり……」


「そう言いながらもグレイバルト、剣を構える事もしていないぞ? ……ああ、そうか。残念だな」


 そう言ってドラゴンは肩を落とした声でため息をつく。


「……スノハラ」


「ん?」


 そうドラゴンとグレイバルトが言い合っていると、アルデがこっそり俺の袖を引いていた。


「今の内に帰るのじゃ。あいつ妾の事を見ておらん」


 その言葉に俺は驚いて、言い返してしまった。


「え? ちょっと待って、ドラゴンがいるんだよ? 目の前にドラゴンがいるのにもう帰るのか?」


「スノハラ……なんじゃその笑顔は……気持ち悪いのじゃ。そんな事よりもあいつは嫌じゃ、面倒くさいのじゃ」


「そんな事ってドラゴンは……ああ、そうだな。ユリアもガチで倒れそうだし……帰る方がいいか」


 ちらっとユリアを見て、アルデの言う通り帰ろうと思った。


「そうじゃ、そうするのじゃ」


「お兄さん……帰るのですか……?」


 ユリアが苦しそうな顔のまま少し安心した様に苦笑いをする。

 ちょっとこのままじゃやばいか……。グレイバルトと会った時の比じゃない消耗の仕方だな。

 残念だが、ドラゴンよりユリアを優先しよう。ここで倒れられたら困る。


「うん。ちょっとやばそうだからな。帰……」


「……ん?」


 俺がこっそり帰ろうと決意した時、ドラゴンの視線が俺達の方に向いた。


「何かいるとは思っていたが……ん? んんっ? この魔力は……んんんっ?」


 そしてドラゴンはアルデをじっと見ている。


「……くっ、見つかったのじゃ! スノハラがグズグスしておるからじゃ!」


「おまっ! 俺のせいなのかよ!?」


「お、おにい……はっ、はっ……」


 アルデが起こっているが、見つかったのは仕方ないだろう。

 それよりも、ドラゴンに見られた瞬間ユリアの呼吸が浅くなり始めた。本当にやばそうだ。


「……まさかな。いや、お前……! はっ、はははははっ! お前アルデミスか!」


「……違うのじゃ。妾はアルデミスではないのじゃ」


 アルデは顔を手で隠しながらアルデミスではないと否定する。

 そのまま後ろを向き帰ろうとするが。


「いやいや、その魔力アルデミスだろ! はははははっ! どうしたお前、幼女になったのか! あの最強のエルダーリッチーが幼女か! はははははっ! 笑わせる!」


「貴様まで妾を幼女と言うか!」


 幼女と言って爆笑するドラゴンに食って掛かる様に振り向き幼女は怒りを表す。


「はははははっ! 幼女が威張っても怖くはないぞ! そんなに威張っても魔力も弱くなってるし……お前も、魔王の力を感じないぞ!? なんだ貴様ら、師弟揃ってその変化は! 揃いも揃って魔王を辞めたのか? はははっ! 我の笑いを取りに来たのか! はははははっ! 笑いすぎて腹が痛いわ!」


 その言葉に一番怒ったのは、ジェミラだった。


「き、貴様! グレイバルト様に続きアルデミス様までも愚弄するとは! 許さんぞ! 『激雷の暴風』!」


「ふん! 小物が騒ぐな。貴様に用はないジェミラ! 『炎竜の咆哮』!」


 ジェミラが放った複数の雷がドラゴンから吐かれた炎によって一瞬でかき消された。


「くっ……!」


 お、おぉ! やっぱり火吐いたよ!

 炎だよ! 咆哮だよ! 生で見るとすげえな!


「どうするアルデミス? 貴様も魔王の力がないということは、まともに戦えないのだろう? 仮に魔法が使えたとしても、今まで通りの魔法は使えんだろ。あの魔法さえなければ我はお前には負けないからな」


「はっ! 黙るがいい巨大トカゲ! 今のうちなら妾は見逃してやるぞ! さっさと帰るが良いのじゃ!」


「威張るな、威張るな。幼女がどれだけ威張っても今のお前の魔力では普通の極大魔法を撃つのが関の山だろう」


「なぬ……」


 図星を突かれた様に幼女は口を閉じる。


「さて、今のやり取りで魔王を辞めたお前らはそこまで強くないとわかった。残念だな。我は強い奴と戦いたいだけなのだが……ここまで来てただ帰るのもアレだからな、どうするか?」


 そういいながら空中に滞空しているドラゴンが城に降り立つ。


「グレイバルトから剣を奪い返すのが第一だが……そうだな、ここを消し去ってから近くの街でも破壊しに行くか」


「ぇっ……?」


 気を失いそうになりながらもドラゴンの言葉を聞いていたユリアが声を発する。


「最近はずっとグレイバルトと戦っていたからな。何も魔王らしいことはしていないし、久しぶりに魔王らしく人間どもに恐怖を与える事にしよう。暇つぶしぐらいにはなるだろう」


「魔王……!? ぇ……!?」


 少し大きい声を出したユリアで俺達にドラゴンが気付いた。


「……ん? 人間?」


 いや、さっきからアルデの隣にいるから今まで気付いてない事の方が驚きだが。


「はははっ! さっきから何かいると思ったら、人間が2人もいるではないか! どうしてここにいるかわからないが、ちょうどいい。貴様ら街に行って騒ぎ立ててこい! 我に対して討伐隊を組む方が少しは楽しめるだろう。まあ、我を見た瞬間逃げるのが当たり前だがな! はははははっ!」


 そう言って高く笑うドラゴンは自分が魔王だと主張する。 

 そして俺の袖が引っ張られる。


「……お兄さん」


 ぽつりと、すぐにでも掻き消えるような声でユリアがこぼした。


 そうだな。流石にドラゴンが相手で、どれだけかっこよくても仕方ない。赤黒色の鱗なんて邪龍ぽくてカッコいいんだが、魔王だと言うなら仕方ない。

 それに、あの街には俺の串カツ屋がある。仲良くなった人たちがいる。

 流石に破壊しに行くと言われてただ黙っている俺ではない。


「ユリア、安心しろ。俺が全てまも……」


「何を言っておるのじゃ、巨大トカゲ」


「……ん?」


 俺がかっこいい事を言おうとした瞬間、アルデがドラゴンに食ってかかった。


「どうした幼女? 何を怒っている?」


「ふん! 貴様には分からんじゃろな。あの街には妾の大切な……串カツがあるじゃ!!」


「……クシカツ? なんだそれは?」


 ドラゴンがアルデの言葉に意味が分からず首をかしげる。

 いやそんな事より、俺のかっこつけようとしたセリフに被せるなよ!


「ふん! 貴様は知らなくていい事じゃ! ジェミラ!」


「はい、アルデミス様!」


「貴様の魔力を妾に渡すのじゃ!」


「っ!! なる程! 承知いたしました!」


「うむ。素直でよろしい! 『生命吸収』!」


 アルデは素早く近づいてきたジェミラに触れ、魔力を吸い取っていく。


「エルダーリッチーではないから魔力は無限ではないのじゃが……これで充分じゃ!」


「ははっ! ありがたき、幸せ……」


 ジェミラが言葉通り幸せそうにその場に崩れた。


「お師匠様……」


 座りながらグレイバルトがアルデに向かい声をかける。それをアルデが止める。


「小僧よ、ここは妾に任せるが良い」


「はっ!」


 そしてアルデがドラゴンを睨みつける。


「おい巨大トカゲ! 妾を侮辱した罪、思い知らせてやろう!」


「ふっ、はははっ! 幼女になっても能力は健在か? なら楽しめそうだ!」


 そしてアルデが手を前に構える。


「ふん! 貴様なぞ冬眠しておれ! 『断絶の氷麗』!」


「お前の得意技など食らうか! 『炎竜の咆哮』!」


 数百の氷とドラゴンの炎がぶつかり合う。


 最強同士の戦いが始まった。



   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。