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親戚の再婚で増えた身内が推してるアイドルだった件  作者: 一之瀬葵翔
第5章:地下アイドル、はじめました。
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止まらない

「さて、じゃあ始めますか」


「よろしくお願いしまーす」


 芽依と商店街で買い物をしたあと、自宅に向かい、夕食を食べ。

 リビングで少しくつろいだところで魁人が切り出すと、姿勢を正して、芽依が挨拶をする。


「アイドルとして絶対に頭に入れておかないといけないことが何個かあって。これはたぶん、配信者とかにも言えることだとは思うんだけど。まず1つは中途半端なことはしないってこと」


「トップに立つまで諦めません!ってことだね」


 拳を握って、そう答える芽依だったが魁人の答えは違った。


「いや、違うんだなぁ。これはね、普段は私アイドルなんで他の人とは違います!ってアピールをしてるくせに何かあったら私だって1人の女の子なんだよ?って一般人アピールすんなってこと。立場を常に入れ替えて、アイドルと一般人の“おいしいところ”だけ持っていこうとするなってことね」


「ふんふん」


「それで2つ目なんだけど。ガチ恋、を否定した先に待ってるのは緩やかな衰退ってことかな」


「ガチ恋ってあれでしょ、ホントに恋しちゃうやつ」


「そうそう。基本的にはそれであってる」


「でも、告白されても付き合えないかなぁ…」


 苦笑交じりに芽依はぽつりと呟くが、魁人は真剣な顔で話を続ける。


「別に告白して断るのはいいよ。そこはタイプとかあるじゃん。あの…、知り合いのオタクから聞いた話なんだけど。だいぶ昔ね、とある地下アイドルがちょっと人気に火が付いてきたんだよ。色々な伝手で活動の幅が広がってきて。その時に言ったのが、ガチ恋はやめて。ガチ愛にして。って言葉で。で、ガチ恋の人は私のやることなすことに口出ししてくる。だからライブに来てって言ったら来て。これ発売するから買ってって言ったら買って。黙って見守って、支えてほしい。って言っちゃったんだ。それって、オタクは黙って金だけ出してろってことじゃん?それでオタク怒って、そっからパッとしなくなっちゃった」


「なるほどね~」


「しかもね、その子にチャンスがきたきっかけはガチ恋のオタクだったのよ。なに自分のきっかけ否定しちゃってんのと。あとはガチ恋のオタクがテレビとかのスタッフさんに気に入られて、そのオタクの推しがテレビ番組のレギュラーになったとかね」


「うそ!そんなことってあるの?!」


 驚いて前のめりになる芽依と、どこか誇らしげにそれを語る魁人。

 微笑みながら魁人はこう言った。


「だいぶ昔の話だよ、これも。そのガチ恋オタクの推しの力もあったと思うけど。きっかけってのはスタッフさんがそのオタクのためにいっちょ呼んでやるかって動いてくれたからだと思うから。アイドルを、じゃなくてそれを推すオタクを気に入ったからやってやるか、ってこの流れヤバくない?ガチ恋って聞いて、それをダサいとかうざい、とか思って切り捨てたら自分じゃどうにもできないチャンスってのは掴めないなって」


「確かに…、この話聞くとそうなるよね。わかった、ガチ恋歓迎する!」


 ふん、と鼻息を鳴らしてそう言った芽依に苦笑しながら魁人は釘をさす。


「いや、でもこういうガチ恋ってあんまりいないから。普通に変なのいたらそれはちゃんと注意してね?」


「はーい」


 ここまで話したところで少し休憩。お茶を飲んだり、スマホを触ったり、思い思いの時間を10分ほど過ごす。

 会話はないが、穏やかな時間。そんな中、魁人が口を開く。


「色々言ったけどさ、止まらないことが大事だと思う。ああしたい、こうしたい。でも失敗したらどうしよう?なんて考えたり、悩んでたりする時間があってさ。それでチャンス掴めないのってもったいないじゃん。最初の1歩、小さな1歩が全てを変える大きな風になるから。止まっちゃダメなんだと思う」


「そっか…。夢に向かってまっしぐらってことだね!」


 キラキラと輝く瞳で真っ直ぐ魁人を見つめる芽依。

 なんて答えようか、そんなことを思った瞬間、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。


「魁人―、いるー?ちょっと話あるんだけどー!」


 ガチャ、っと玄関の扉が開く音がしたのとほぼ同時。

 推しの声が聞こえた。

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