無意識?それとも計算?
午後の授業はあっという間に終わったような気がした。
というのも満腹感も相まって、うとうとしていたらいつの間にか授業が終わっていたからだ。
そして、芽依の待つ校門へ向かっていたのだが…
「佐々木さん、よかったら一緒に帰りません?」
「いやいや、こいつじゃなくて俺と一緒に!」
「ごめんね~。私待ってる人いるからさ。いつか予定が合えばね」
なんて有象無象の男子生徒に囲まれる芽依を見つけた。
待たせたね、なんて声をかけようとしたところで芽依と目が合う。
「あ、魁人くん!こっちこっち!」
芽依が魁人を呼ぶ声に、男子生徒たちはいっせいに反応する。
親でも殺されたんか、といったような恨みがましい視線を魁人に向けて殺気めいた何かを発して。
「え?誰あいつ?」
「佐々木さんが名前呼んでたってことはあいつが佐々木さんの待ってる人?」
「いやいや、ありえんよ。あんなパッとしないオタクっぽいやつが佐々木さんの待ち人なんて…」
「でも、昨日の放課後に佐々木さんから男に声かけて、一緒に帰ったって聞いたけど…」
「ああ、聞いた聞いた。でもあれだろ?ゲームする約束してただけで付き合ってない
魁人から目をそらさないまま小声で会話する男子生徒。
その圧に若干引きつつも、芽依に魁人は声をかけた。
「ごめんね、ささk…ささめさん。待たせちゃって」
魁人が芽依をささめ、呼びしたことにざわっとなる周囲。
それを気にせず芽依は笑顔で返答する。
「ううん、大丈夫だよ。こっちのホームルームが早く終わっただけだから」
「じゃあ…、駅までいこっか」
「うん!あ、魁人くんの家の近くにスーパーってある?」
「あ~、スーパーはちょっと離れたところにしかないけど、駅からの帰り道に商店街があるよ」
「ならそこで買い物していけばいいね。楽しみだな~、魁人くんの家」
そんな会話をして、自然と歩き出す2人。
それを見送ったあと、男子生徒の1人が口を開く。
「…え?もう空気が付き合いたてのカップルのソレなんよ」
駅までの道中で、今まですっかり聞くのを忘れていたことを思い出した魁人。
機嫌よさそうにふんふんと鼻歌を歌いながら歩く芽依にこう尋ねた。
「そういやささめさんってさ、いつも電車はどこの駅から乗ってるの?」
「私?私は葵町だよ?」
「うそ、一緒じゃん!俺も葵町!」
「え、ほんと?!じゃあさっき言ってた商店街って駅裏商店街のこと?」
「そうそう、駅裏の商店街!」
「なんだ、家けっこう近いじゃん!私は駅前の方なんだけどね」
まさかの同じ駅で驚くも、地元トークができそうで少し喜ぶ魁人。
芽依も嬉しかったのか、少しテンションが上がっていた。
「駅前の方か~。ちょうど駅前と駅裏で中学分かれるからなぁ。わかんなくて当然か」
「私は高校からこっちだから、そもそも中学は別だけどね」
「え、そうなんだ。中学はどこだったの?」
「県外だよ。受験直前でこっちに引っ越すことになってさ。慌てて志望校変えないといけなくなって大変だったよ」
「高校受験でそれはすごい嫌だよなぁ…」
そんなことを話していたら駅に着く。
スマホで時間を確認すると、いつもの電車に間に合う時間だった。
「お~、電車いつもの時間の間に合った」
「え、魁人くんもいつも28分発の上り電車?」
横から聞こえる芽依の驚いた声。
もしかして…、そう思って芽依の方に顔を向け、魁人はこう言った。
「うん。ってことはささめさんも?」
「そう、私も28分発なの。でもなんで見かけなかったのかな?」
首をかしげて、考えるその顔がアザトカワイイ。
一瞬心を奪われかけるが、推しはデイジーただ1人。と気合を入れ直す魁人。
何事もなかったかのように芽依の疑問に答えた。
「俺、いつもホームの先頭の方にすぐ行っちゃうからかも。2両目あたりだと駅裏出口に近いからさ」
「あ~、そっか!私いつも改札からホームに入ったあたりで待ってるからわかんないや」
納得したようにうなずく芽依。
話に聞く限り、佐々木芽依という少女はいつも微笑みを浮かべている子なはずだが、自分の目の前だところころ表情が変わっている。人の話はやっぱりアテにならないなぁ。
なんてぼんやりと考えていると芽依がじっとこっちを見ていることに気付く。
話しかけていいのかな?ダメかな?なんて考えているのだろうか。
芽依のずっとこっちを見ている、その困り顔もまたアザトカワイイ。
そう思った魁人であった。




