格の違い
4連休いかがお過ごしでしたか?
充実したおやすみになっていれば何よりです。
連休なんてなかった、そんな方。
みなさんのおかげで充実した休日を過ごせた人が何人もいます。
お疲れ様です。ありがとうございました。
こんなはずじゃ…。件の地下アイドルたちはそう思っていた。
いつもよりも声援が大きいのだが、何かが違う。
人には言えないけど色々頑張って、集客もいつもより多い。だからか?
その違和感の正体がわかったのは、トップバッター、菅原ゆきなが2曲目を終えた後。
目の前にいる自分のファンの浮かない顔を見た時だった。
「はい!はい!はい!はい!あ~よっしゃいくぞー!」
1曲目が始まり、ファン達がMIXを発動させるために声を挙げたあと、続くMIXの声をかき消す別の声。
荒々しく、獣の咆哮のような声。
「タイッガァッ!ファイッヤァー!サイッバァー!ファイッバァー!ダイッバァ!バイッバァ!ジャージャー!ファイボッ!ワイパァー!!」
それをきっかけに全てが崩れた。
普段のコール以上の盛り上がり。それに乗せられて、もっともっとと煽るアイドルもどき。
しかし、そのコールの主たちは目の前にいるファンではなかった。
客席の後方にいる……魁人たちである。
なんでこうなったのか。それは他のヲタクと、ブッキング担当の失言が原因である。
そもそも、もめた段階ではロスヴァイセのヲタクたちは情報収集のみ行い、何か事態が変わるまで静観する予定だったのだ。
だがしかし、開始20分前。相手側のヲタクがブッキング担当と話しているのを偶然聞いてしまい、全てが繋がる。
「だから俺も今まで俺もあの子の頼み聞いてさ、ロスヴァイセ外してたから心配すんなって」
「いやー、ありがとうございます。しばらく干されて、ヲタクもロスヴァイセが悪いってわかったっしょ。あとはあいつらがなんぼのもんか知らんすけど、集客の勢いで押してるだけの連中に俺らのコール見せつけてやりますよ。数多けりゃそりゃ声もデカくなりますって。そうすりゃ人数少なくてもすげぇ現場だから手出しできんってわかるっしょ」
この一言で完全に頭に血が昇ったロスヴァイセの過激派連中(魁人達)。
てめぇらのせいで俺達の推しが傷付いたのか。
自分の現場が1番だと思うのは大いに結構。
だけど、他の現場けなしていいわけじゃねぇし、コールもMIXもできる俺SUGEEEEみたいなお前ら如きが、全身全霊で沸いてる俺達に、本気で勝てると思ってんの?
だったら正々堂々、同じ人数で荒らしに行ってやる。
格の違い見せつけてやるよ。暴れるぜ、止めてみな!とヲタクに対して静かにキレた。
ブッキング担当については魁人が店長のところに話をつけにいくから抑えろ、とギリギリのところで抑えられている状況である。
菅原ゆきなから始まり、愛原まゆ、葉月あゆみ、牧野咲、元凶のヲタクが推している高木真帆まで荒らし、続いて最近推しと仲のいい逢沢美優のステージを純粋に援護した魁人達は1度客席から出る。バーカウンターでドリンクを受け取った後、並行物販を眺めながら休憩を取っていた。今の演者の次がトリである本命、ロスヴァイセ。そのステージを万全の状態で出番を迎えるためである。
ブッキング担当と寝たアイドル、秋華ゆかりは不運なのか幸運なのか魁人達の被害を受けることなくステージを進めている。
そんな中、1人のヲタクが魁人たちに話しかけた。
「今日も助けていただいてありがとうございました。さきがけさんたちのおかげで盛り上げられました」
「お疲れっす~。最近推したちと仲いいんで、俺らも仲良くさせてもらおうと思ってね。俺らも手助けさせていただきますよ」
「いやいや、頑張ってはいるんですけどね。やっぱりまだ界隈としては小さいですし、ファンもいないんで。こうして混ざってもらえるとすごくあの子のためにもなるというか」
「全然MIXの発動とかは変なことになってないですし、コールもできてるんで。あとは外交だと思いますよ。うちの現場にも来てもらってますけど、ちょっとチケ高いけど名前知られてる地下とか半地下出るイベントに顔出すとか」
「そうなんですね。ちょっと現場かぶらない日にそういうのあれば行ってみます」
「その方がいいですよ。今日出てるアイドルのヲタク雑魚なんで」
雑魚なんで、を強調しながら魁人がそう言うと、スピカたちがぷっ、と吹き出す。
「雑魚…ですか?」
ヲタクが若干引き笑いでそう返すと、周りの様子を見ながら魁人が続けた。
「雑魚っす。いや~、ここの店長から聞いたんですけどね?最近今日の出演メンバーとロスヴァイセがもめたじゃないですか?そのあとここでのイベント干されてたのって、ここのブッキング担当が今日の出演メンバーの、とあるアイドルとヤった見返りにわざとオファー出さなかったんですよ」
「…えっ?」
「そんでもめた理由も出演メンバーが自分とこのヲタク馬鹿にしてたからそれに対してロスヴァイセがキレただけで。別になんもこっち悪くなくて、むしろヲタの味方だったんですけどね。そんで、あっちの言い分真に受けて、勝手に敵対視してきやがりますし」
「あ~…、そうなんですね」
「アイドルの悪口言ってる分にはアンチいるわ~wで済ませますけど。なんか高木んところのヲタクが俺らにケンカ売ってきて。数だけで押してるとか言ってたんで、4人とかで荒らしに行ったらこっちの方が声デカかったし、色々タイミングもあってたし。そんなんで俺らのコール見たら手出しできんって調子乗ったらダメよと」
いつの間にか静かになっているバーカウンター前。
魁人がそこまで言い切った後、ちょうど秋華ゆかりのステージが終わる。
スピカやたまも、バルの顔を見渡すと、不敵な笑みを浮かべる3人に向かってこう言った。
「軽く動かして身体もあったまったし、本命のステージ…久しぶりに後先考えずにやりますか!!」
ヲタクが箱に頼んで、出禁にするってのはフィクションです。
実際そんなことはまずないです。
集客で考えて、少ない方が多い方をNGにしたら少ない方が大きめのイベントに呼ばれなくなる。
ってパターンが昔だったら多い気がしますね。
荒らし、って書き方をしたんですけど、自分たちを馬鹿にしたところに行ってわざわざ別のコールの持っていき方ぶつける。
そんでなめんじゃねぇぞ?って示威行為ですね。
次回、次々回でたぶんこの章終わりです。




