カウントダウン
感想での心配のお言葉ありがとうございます。
返信にも書いた通り、割とマジでお祓い先を探してますw
「えっ?ロスヴァイセが他の地下ともめた?」
地下アイドルたちともめた話が魁人に伝わったのは、その日から少し経った後のこと。
たまたま会った他の界隈のヲタクと話している最中に知らされたのだった。
「なんか、さきがけくんが推してるデイジーって子が他の子にケンカ売ったらしいよ」
「へぇ~、そうなんですね」
「そうなんですね、って。推しの話じゃん。なんでそんな興味なさそうなの」
「最近急な出演キャンセルあったんで、もしかして箱ともめたんかなぁ~…とは思ってたんですけどね。他の地下ともめたせいでそれなら別に仕方ないっていうか。もめた相手も、その箱のブッキング担当もやってんな、って思うだけで。あ、それ行きますね。それじゃ!」
笑いながらそう言うと魁人は家路につく。
ブッキング担当やってんな、の意味。それの意味が分かるのはそこから1か月後の話だった。
◇
「…最近さ。売上下がってんのよ。なんでかわかる?」
地下アイドルともめた現場であり、ロスヴァイセの出演キャンセルが起きたライブハウス。
そこの店長が事務所で突然言った言葉。
それに対して1人の男は一瞬ドキッとしたが、すぐに立て直し答える。
「平日のブッキングが弱いですよね。あと土日の長丁場のイベントも。すいません、ロスヴァイセにオファー出してるんですけど、なかなかいい返事もらえなくて」
返ってきた男の言葉に、不機嫌さを隠さずに店長はこう言った。
「は?お前、ロスヴァイセにオファー出してねぇだろ。この前の出演キャンセルだって、お前俺に言ったよな。出演予定だったメンバーのスケジュールが急遽都合付かなくなって、やむを得ずって。実際あれじゃねぇか。お前がいきなり前回ご出演いただいた後、他の出演者さんともめ事を起こされ、未だ解決されていない中、次のもめ事を起こされても困るから今回に限り、出演をお断りさせていただきます。ってメール送ったらしいじゃねぇか」
「えっ?い、いやそんなメール送ってないですよ」
「俺がこの目で見てるからそれはねぇよ。この前ロスヴァイセのリーダーさんから電話があって、もめ事起こしちゃってすいません。また良かったら出演させてくださいって言われてんのよね。そんでお前からオファー出しても断られるって聞いてたからどういうこと?って実際会って話聞いたらこんなことになってんじゃねぇか」
「そ、それは…」
「そんでその帰りにロスヴァイセともめた女とラブホからお前出てくるしよぉ。何やってんの?」
店長の追及に何も答えない男。それに追い打ちをかけるように店長は言った。
「俺がブッキングやるからお前もうやんなくていいよ。バーカンだけやってて」
「えっ」
「来月の周年イベントも俺やるから。手ぇ出すな」
「周年は俺にやらせてください!」
その言葉でついに店長は怒る。
「ふざけんな!てめぇの事情で売上落としてんのに、1番稼ぎたい周年なんか任せられるわけねぇだろ!てめぇがアイドルとヤろうが知ったこっちゃねぇけど、その女の言うこと聞いて、私情優先させてんのが気に食わねぇんだよ!ロスヴァイセ以上の動員ありゃまだ目ぇつぶったけど、そいつの動員1番良くてロスヴァイセソロで1番集客なかった時の半分以下だぞ?そっちとる意味あんの?」
店長がそう言うと男は俯いて、何も言わない。
「あのさ、最近頑張ってるからチャンスをあげたい、とかでゲスト呼んだイベントに入れるのはいいよ。そういう贔屓は俺だってなんも言わねぇよ。でも結果出てないじゃん。もめた奴全員色んなところから話聞いたけど、毎回集客5以下、代わり映えのしない定番曲歌って、物販で囲いになめた口聞いて、裏で馬鹿にする。なのに、馬鹿にしてる奴の金をあてにしやがる。それでいて、私頑張ってるのに売れない、事務所も見る目ない、事務所に入ったらあとは何もしなくても売れる。だの寝言こいてる奴らだろ?ごっこ遊びに付き合うのはいいけど、本気でやってるやつの邪魔だけはすんなよ」
この話からすぐ、ロスヴァイセともめた地下アイドル、更に逢沢美優が出演するイベントが週末に組まれ、事情を知る者は和解したか、それともこのイベントで決着をつけるか、と想像を膨らませて盛り上がることとなる。
迎えたイベント当日、当然のようにさきがけ太郎、清水魁人は会場にいた。
「…俺、久しぶりに暴れちゃおうっかな~」
魁人が笑いながら言うと
「え?俺最初から本気でいくつもりしかねぇよ」
と真顔のスピカが返し
「とりあえず他の現場のやつに格の違い見せつけんと収まらんよ、俺は」
とバルがキマった眼で呟く。
「ねぇwwwちょっとwwwみんな怖すぎwww ……まぁ、俺も今日はサポートとかなしで、久しぶりに本現場だけに集中するけどさ」
そんなたまもの言葉に
「逢沢美優ちゃんはええんか?お、ええんか?」
とニヤニヤしたスピカが茶化すと4人は笑い出す。少しの間、笑いあった後、途端に空気が変わった。
薄い笑みを浮かべてはいるが纏った空気はとても荒々しく、触れたら斬れる抜き身の刀のような鋭さもあり、それでいて、他者を圧倒する威圧感。まるで反社会勢力のカチコミ前。そんな言葉がぴったりだった。
次回でこの章を終わらせたい(願望)




