悩む少女と変えたい現状
本日2話目の投稿です。
第2章の終わりである17話を読まれていない方はそちらを先にどうぞ。
地下、と呼ばれるフィールドで活動している歌手やアイドル、自称声優、声優の卵。
年間何十人、何百人が全国各地から活動開始、デビューしていく。
ほとんど同じ時期に活動を始めて、同じライブに何回も出て、一緒に歌ったこともあった同期の桜。
スタートは同じでも月日が流れ、半年もすると動員に差が出始める。
1年2年と活動すれば活動している地域を飛び出し、他の地方へ遠征してライブ出演。
更に活動拠点のライブハウスでワンマンライブ、地下の規模では大きなライブに出演するなど目に見えてわかる結果を出していく者。
未だに動員も少なく、小さいライブハウスで何人か相手に歌い、少ないバックと物販売上を頼りに活動する者。
「他のみんなはチャンスがもらえてるのになんで私は…」
そう思うのはどちらかと言えば後者が多い。
そんな中で自分には向いていなかったとすっぱり引退してしまう者、それは賢明な判断だと思われる。
何かきっかけをもらう、という第1の壁を突破できない者にそれ以降立ちふさがる壁を突破できる力はないからだ。
まだ諦められない、と歯を食いしばって活動を続ける者もいるだろう。
実力不足だと一層の努力をし続けること、一定の年齢になるまではそれもまたいい判断ではある。
一定の年齢、と区切ったのはオーディションなどではどうしても年齢制限というものがあるからだ。
本人を売り出すうえでアイドル的な売り方から始めるにはどうしても若さがいる。
だからその年齢を超えるまでは諦める必要はない。
超えたとしても、一定の評価、があればまだ踏ん張ってもいいかもしれない。
長年の努力が実を結び、大きな形になることはこの業界でもあり得ることだから間違ってはいない。
しかし、ここで最悪の方向に舵を切った者。
それはもはや地下というフィールドで活動している何かだ。
地下アイドルでも、地下で活動している歌い手でも、自称声優でも何でもない。
実力もなく、可愛くもない。ただ舞台に立って誰かの真似事をするだけの何か。
辞める度胸もなければ、努力を重ねることもなく、手っ取り早く小金を稼ぐ手段にした者だ。
地下での活動は小金を稼ぐ手段だ、と割り切っている者は当然いる。
ただ、月いくら稼ぐためにはこうしなければと必要な努力を惜しまずに活動をしているのであればもう仕事として活動をしているだけ。
それはそれで1つの活動の形なので、否定をすることはできないだろう。
何か決断することもなく、努力をしないまま小金を稼ぐ手段としてだらだらと地下での活動をすることが最悪なのだ。
夢諦めてもただ、ちやほやされたいだけ。甘やかされたいだけ。
自分勝手なルールを押し付け、それを認めないものを徹底的に嫌う。
自分では何もしない、したくない。だけどおいしいところだけは頂戴。
オタクにとっては悪夢のような存在であり、唾棄すべき存在。
そんな奴らは当然淘汰されていくのだが、悲しいことにそんな奴らは引退以外で減ることがない。
決まったライブにだけ出演できるだけマシ。出演予定が全くないのにそれでもアイドルです、と言い続ける。
そして自称地下アイドルから何物にもなれずに消えていくのだ。
もっともっと現実は闇が深い。深いのだがそれはそれとして、逢沢美優は1人部屋で悩んでいた。
今いる環境を変えるべきかそのままでいるべきか。
「みんなの言ってることがわかんないんだよね…」
いつぞやかに出演したステージ。
色んな出演者が楽屋で話していたときのことだった。
「私はもう5年も下積み生活してるからそろそろ売れてもおかしくないじゃん。でも偉い人達は見てくれない」
そう金髪の誰かが口に出すと
「ですよね、私達頑張ってるのに誰も紹介してくれないですよね」
「事務所に入れたらあとは事務所がどうにかしてくれるでしょ!それまで我慢我慢!」
などと他のアイドルが言い出す。
美優は思った。
…だから誰も見てくれないし、紹介もしないんだと。
「ねぇ、美優ちゃんはどう思う?」
話に入りたくなかったからチェキに落書きをしていたのに、急に話を振られて慌てる美優。
「えっ、ごめん。チェキに集中してて話聞いてなかった」
「もー、そんな真面目にやらなくたっていいじゃん。チェキなんて適当にサイン書いとけばいいって」
「私達ホントならもっと売れてるか事務所に入って活動してたよねって話」
正直に言うか迷った。
5年下積みしたところ1段上に進める力がなかったらいつまでたっても同じところにいるしかないし、仮に紹介したとして今のスタンスのままで活動はできない。
そんな人間を紹介して、何か起きた時責任を取るのは紹介した人だし、その人の顔を潰すことになる。
だから自分で責任を負ってもいいという人間しか紹介しないのだ。
声がかからない時点でお察し、というわけだ。
しかし、曲がりなりにも活動期間は自分より上。変なところに話が回って活動がしにくくなるのも避けたい。
少しの沈黙の後、美優が放ったのは…
「ですよね~、もっと売れてたらバイト辞めれるんですけどね~」
同調の一言だった。
その日美優はなんで同調してしまったのか、他に何かうまいこと言ってかわせなかったのか後悔しながら家路に付くことになる。
「はぁ~、事務所じゃなくても私のマネージメントしてくれるところがあればいいんだけど…」
ぽすん、とベッドに身体を置くと低反発のマットレスが優しく身体を沈み込ませる。
活動で疲れるだろうからと親が買ってくれたもの。おかげで身体が痛むことがだいぶ減った。
そうしてしばらくぼーっとしているといつしか瞼が閉じ、眠りについているのであった。
名前だけ出てた逢沢美優ちゃんがなんと話に関わってくるとは(棒)
下積み云々とか事務所に入ったらとかは実際に聞いたセリフです笑っ




