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第一話 爺に転生

肥前先生の企画『第一回書き出し祭り』にて掲載させていただいた物を感想などで指摘されていたところを参考に改稿した物です。

まあ深くは考えず気楽にどうぞ。


 異様に澄んだ青空と少し速く流れる白い雲が俺の視界を埋めつくしている。

 どうやら俺はぶっ倒れているらしい。

 後頭部がズキズキするのは、倒れた拍子に思いっきり頭を打ったからだろうか。

 身体が動かしにくいのも恐らくそれが原因だろう。


 そんな俺を三つの影が見下ろしてきた。

 逆光でよく見えないがどうやら女性のようだ。


 程なくして目が慣れてくると、その女性三人は俺を見ながら泣きはらしていることに気がついた。


「おじいさま!しっかりして下さい!おじいさま!」

「おとうさん!おとうさん!!ミリ、速く救急馬車を!」

「はいおかあさま!おじいさま!すぐに助けを呼んできますからね!」


 おじいさま?おとうさま?


「…………誰……だっけ……?はれ?」


 そのまま俺は意識を手放した。



 *****



 なんかすげぇフカフカだ。

 いつも使っている床の感触がわかる煎餅布団とは違うこの感触。

 俺は自分の家にいないらしい。

 目を開けるとやはり俺は見知らぬ布団の上で寝転がっていた。


「知らない天井だ」


 やっぱこれは言っておきたいね。

 にしても俺の視界の右端にあるのはシャンデリアじゃね?

 何ここ。

 どっかのホテル?


「目が覚めたのですか!?皆さん!おとうさんが目を覚ましました!!」


 すると俺の左側から女性の叫び声が聞こえた。

 そちらを見ると、薄桃色のドレスを着た金髪の女性が立ち上がってこっちを見ていた。

 その目には涙が溜まっている。

 よく分からないが助けてくれた人ってことだろうか。


「おとうさん!」

「とうさん!」

「おとう様!」

「「「おじいちゃん!」」」

「「「おじい様!」」」

「じじい!」

「じじ!」


 さらに部屋の扉を蹴破るようにドドッと人が流れ込んでくる。

 全員が金髪の外人さんである。

 若干ロリコンが入っている俺は、最後にトテトテと必死に部屋に入ってから、俺の寝ている布団によじ登ろうとしているの幼女がかわ微笑ましく思え、ついジッと見てしまっていた。

 つか俺が寝ているのは敷布団だと思ってたけど、目線の高さを鑑みるに、ベッドで寝ているっぽいな。


「じじ……元気なた?」


 俺の布団に潜り込んできた幼女が、俺の胸元から顔を出してきた。

 布団から顔だけだして半泣きで首を傾げる幼女。

 やっべ。

 くっそ可愛いんだけど。


「おお、元気になったぞー。ありがとなー」

「「「「「ヴェッ!!!!????」」」」」


 俺はついつい頭を撫でてしまった。

 ふわふわの金髪にアホ毛が可愛いっす!


「むふふふーよかたよー!じじー!」


 目を細める幼女!

 生きててよかった!!

 糞みたいな年増女上司による糞みたいなアルハラからのセクハラの日々もこの時の為にあったんだ!


「お、おとうさん……?」


 幼女を愛でていると、横からパンツルックの金髪の人が話しかけてきた。

 ショートカットに髪を切っていて、腰に剣を差している、少々物騒な女性だな。


「へ?ああ……申し訳ありません。ついつい……」

「あ、いや……その……おとうさん?」


 ん?

 そういえばさっきからなんか俺のことおとうさんと呼んでないかこの人。

 あれ?


 今気がついたが、幼女を撫でているこのシワクチャの手はなんだ?

 どうも俺の意思によって動いてるように思えるのだが?


 ふむ…………。


 俺はとりあえず目を真ん丸にしている一同に話しかけた。


「えー……、お、おはようございます。あの、助けていただきありがとうございます。私は…………」


 いきなり男性が四つん這いに倒れたため、声が止まった。


 そのまま周りの女性や少年少女が男性に群がりながら、なんか全員が号泣しだした。


 意味がわからんぞ……。


 よく分からんが…………


「……じじ?」


 とりあえず何故か俺のことをじじと呼ぶこの幼女を撫でることにした。


 そこで気がついた。


 幼女の大きな蒼いお目々に映る顔に。


「え…………」

「うみゅぶっ」


 そこに映るのは千円カットの産物であるツーブロックと言う名のほぼ坊ちゃん刈りに、無精髭の俺では無く。


 目に映っている状態でも分かるほどの皺に、肩まで伸びる長い髪は恐らく金色。


 そしてその顔は俺と同じく驚愕に目を見開いて口をパクパクさせている。


 ああー、これは、まさか、マジか、あらら、いやいや。


「……………………えー」


 よくわからないが、気がついたら俺はなぜか爺になっていた。


「ふぃふぃ?」

「あ、すまん」


 そして幼女の顔面を両手で抑えていたことに今気がついた。



 *****



 どうやら、俺こと榊原康平は一度死んで、名も知らない爺になっているようだった。

 何故そう言えるのか。それはとある記憶を思い出したからである。



 あの日、俺はいつものように糞みたいな年増女上司によるアルハラのおかげで起きている頭痛を我慢しながら歩いていた。


「あーくそ……。マジでクラクラする……」


 何だって毎日毎日。

 たしかに暇だったさ。

 暇だったけどそれはお前のせいだろと言ってやりたい。


 せっかく仲良くなれたはずの同期もあの上司によって牽制されて、すぐによそよそしくなりやがる。


 そんなことを考えながら電車を待っていると、俺の横に私立の小学生であろう幼女が並んだ。


 九月だというのに袖の長いブレザー服を着ていて暑そうだが、少し長い袖はなんかこう、グッと来る。

 まだ一年生だろうか。

 可愛い。

 超愛でたい。


 段々と俺達の後ろに人が並んでいくのを感じながら、スマホを眺めるフリをして幼女の後頭部を見つめていると、通過電車がとアナウンスが流れた。

 少しだけ後ろに下がる。


 電車の警笛が聴こえ、ちょっとビビりつつ、チラッと幼女を見下ろすと、


「ヒウッ」


 やっぱビビっていた。

 やっべ超可愛いんですけど。

 やっぱ怖いんだなぁ。


 なんてことを思って見ていると、幼女の後ろのおっさんが、少しよろけた。

 その拍子に、幼女の背中におっさんの鞄が当たる。


「あっ」


 そのまま幼女は線路に……ってちょっ!!


「あぶなっ!!」


 思わず幼女の手を握って引っ張るが結構無理な体制だったらしい。

 俺は幼女と入れ替わるように線路に投げ出された。



 マジかぁ……。

 左から電車が向かってくるのが見えるわ。


 ホントに死が目の前になると、全てがスローになるらしい。

 これはあれか。

 最後の最後に世界を見せてくれているのだろうか。


 だとしたらあの子を……と思って視線を向けると、なんと幼女は絶望的な顔でこちらを見ているじゃないの。


 いやいやいやいや!


 それは駄目でしょ!


 せっかく助けたんだから笑えよ!


 あ、俺が笑えばいいか。


 俺は幼女に向かって親指を立てて精一杯の笑顔を向…………



 思い出したのはここまでだ。

 気がつけばここである。


 しかも爺で。


 芋づる式に前世の記憶を思い出していく中、そんなことよりも俺は非常に非常に看過できない事実を受け止めなくてはいけなかった。


 そう。


 爺!!


 なんで!!!


 なんで今っさら前世の記憶を取り戻すかねぇ!


 もう幼女の目に映っていた感じ余生とか言ってる年齢ですら無いよきっと!

 あとちょっとで今世からバイバイだよおそらくッ!


しかも何故か今世の記憶は全く無い。気がつけば爺なのだ。


 まあでもそんなことを言っていてもしょうがないか……。


 なんとかそのことを受け止め……てはいないけれど、無理矢理それらのことを飲み込み、俺は介抱してくれた人達、おそらく今世の家族であろう人達と話をすることにした。



 *****



「落ち着かれましたか?」

「はい。昨日は取り乱してしまい申し訳ございません」


 前世のことを思い出した翌日。

 俺はメイドさんらしい人に頼んで、家族だと思われる人を呼んでもらうと、美しいブロンドヘアーの女性が一人でやってきた。


「それで貴女達のことを聞いてもよろしいでしょうか?」


「はい。まず、私はマリアナと申します」


 マリアナと名乗った人は長いブロンドを揺らしながらお辞儀をする。


 俺はそのマリアナさんから、今世の過去と現在を聞かせてもらうことにした。

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