武器決め
あの、ゴブリンに襲われた日から半年ほどたち、俺の体も少しずつ大きくなっていく。
まさに第一成長期の真っただ中。グングン成長するのが感じられる。まさに一日ごとに体が作られるのが実感できるのだ。
魔法の方も毎日魔力を使い切り増大をさせて、スキルに経験値をためて、1週間前には、レベルも1、つまり全属性を中級者レベルで使えるようになったのだ。
しかし、使っているのは風のみ、使えば使うほど難しい言葉でいうと、脳のシナプスが活性化され、慣れによる条件反射で、それにかかるまでの時間が短くなる。
簡単に言うと、慣れで意識しなくても自然に体が動くようになるということだ。
その状態にまでもっていってこそ実戦でも使えるようになるのだ。
しかし、俺は使っているのは風属性のみ。
他のは使ってもいないのにレベルだけはあがっている変な状態なのだ。
風属性は無意識に発動できても他の属性はいちいちプロセスを考えなくてはならないのだ。
他の属性も慣らしていきたい。
だけど俺が転生者だとは一生内緒にするつもりだ。
そのため、ほかの属性の練習はできない。
確かにカインやエルザは心配しなくてもいいとは思うが、万が一のことでもあるかもしれないのだ。
一生胸にしまっておいた方がいいだろう。
さて、この前は黙って町の外に脱走をしてしまったが、これからはちゃんと許可を取ってから、外に出かけたいと思う。
訓練をしているカインに話しかける。
「町の外に遊びに行っていい?」
「今回はちゃんと言ってくれたんですね。騎士を2人つけるならよろしいですよ」
「団長、この前言っていたのってこのガキですか?」
うわっ。この人嫌な人だな・・・それにこの前の脱走をもらしたのか?
「このガキではなく、レオン様と言え。首が飛んでも知らんぞ。ユウエル。ってばらしてないから安心してください」
「この家の3男だったんですか、貴族って俺大っ嫌いなんだよな~」
「お前ほんとに首飛ぶぞ。本音と建て前を使い分けろ」
「今までのは、建て前だったんですか?」
眉間にしわが立っているが、気にしない、気にしない。
「レオン様は違いますよ。レオン様はなんというか生まれながらの王者の風格がありますし、自然にですよ。なんとなく人をそうさせるんですよ。他のご家族はなんていうのか、敬意をあまり払えませんし」
そんなに嫌われてるのか。よくある貴族の傲慢っていうところか。
「まぁ、このガキが只者じゃねのは認めるがな」
「レオン様だ」
「レオンと気安く呼んでください」
その言葉にユウエルは目を丸くする。
「貴族がそんな言葉を使うとは、初めて見たな。俺はユウエルだ。よろしくなレオ。」
「よろしく、ユウエル」
そう言って手を出してくる。
その手を取る。手のひらは剣だこで固いが、大きく安心できるような手だ。
「ただ、レオン、お前ほんとに1歳半なのか?3歳ぐらいに見えるぞ。体じゃなくて心がだ」
3歳どころではなく16歳なのだが、そんなに子供っぽかったか?
「さてさて、仲良くなったところで話を戻すが、外に行きたいんだなレオン?」
「騎士の人達に迷惑になるので付き添いは遠慮しますよ」
「だめだ。この前ゴブリンに殺されかけただろ」
「へぇ~町から脱走したんだな。俺もよく小さいころやったぜ。クソガキ仲間だな。ははっ」
「まぁ、町の外に一人で出たいなら、そこにいるユウエルに勝てるぐらいになったらだな」
「俺っ?まぁいいぜ。そらレオンやろうぜ」
そういって剣をぶんぶん振り回してる。
「さすがに無理です。」
「ならあきらめて護衛を付けるんだな。貴族なんて護衛を何十人も引き連れて移動する。2人ぐらいあってないようなもんだ」
「では代わりに僕に訓練を付けてくれませんか?」
ユウエルはキョトンとするがカインは
「それでこそ俺が見込んだかいがあるってもんだ。おいユウエル命令だ。レオンに訓練をつけろ。教えた日には酒を一杯おごろう」
「あぁ、わかりました。団長。約束ですよ」
これで剣の練習もできる。
「ユウエルは強くはないが、武器はなんでも使えるし、教えるのだけは異常にうまいからな」
「ひどいですよ。団長」
日本じゃ剣なんて振り回したこともないし、プロに教わったほうが成長もはやいだろう。
「それじゃ、許可をもらいに行くぜ」
「はぁ~ほんとに貴族ってめんどくさい人種だな」
「言うな…」
そして、無事に母親に許可をもらった。
俺のことに関するすべてのことをカインが任せられる。
本当に渋られたが、けがをさせないことを条件に認められた。
最も俺にけがをさせた場合厳しい罰則が下されるかもしれないが…
将来長男シルヴェストルの今通っている学校に入るときに必要になるし、早めに学んだほうがいいとのことだった。最も貴族で試験に落ちるのはいないが、試験の結果が張り出されるため、親の見えのためにも必死に学ばされるらしい。
今日はユウエルに初めて剣を教わる日だ。
もう練習が始まる前からワクワクだ。
エルザにはけがをしないでと泣きつかれたが、男にはそれを振り切ってでもやらないといけないことがあるのだ。キリッ!!
「さぁ、レオン今日から俺がお前の師匠だ。俺の言う通りにしないとけがをするから、いうことをしっかり守れよ」
「わかっています。」
「まず使う武器、闘い方を決めるぞ」
「っえ? 剣じゃないのですか?」
「実戦ではたいてい統一された規格の槍または剣を使う。もっとも、たいていは下手でも使える槍を使うがな。だがお前はそんな玉じゃねえだろう」
あぁそうだ。この人はよくわかっている。
「レオンは武器をふるう時、両方の手に武器を持つか、片手で武器を持つのどっちがいいか?」
「武器は両方持つのは弱いって聞いたのですが?」
「あぁ? 団長に聞いたのか?だがそれは嘘だ。片手でも両手でくわえられた力を受け止められれば別だ」
…何その脳筋の発想は…
でもこの世界にはレベルアップに似たシステムがある。
この世界では相手がいかに痩せてようと、非力と限らないのだ。
そこらへんを歩いている女の子が筋肉達磨より力が強いのはあり得るのだ。
「両手での使用は慣れれば攻撃速度も速いし、攻撃を受け止めながら攻撃することも可能だ。どうするんだ?」
「両手に武器を持ちます」
桁違いの力を身に着ければ関係ない。
「それじゃ候補をいくつかあげよう。主としては、剣、鎌、斧、槍、サーベルがある。
他にもあるがおすすめはしない。特徴としては、剣は万能、鎌は連続攻撃が素早くなり、斧は破壊力を増し、槍はリーチを伸ばす。どれにするか?」
うぅん~ どの武器もより取り見取りだ。ここは自分の直感をしんじよう。なんせ英雄レベルなのだ。
今、生きているのもこのスキルのおかげだ。
「斧で」
「随分とマニアックなのを選んだな。それじゃどういう斧を使うか?種類としては、テクニカルなひっかける、つく、斬るなどができるハルバード。遠心力を利用した、圧倒的な破壊力を持つ片刃の斧バルディッシュ。小型のトマホークどれがいい?」
転生前ならトマホークと答えるがここは異世界。いくらでも力持ちになれる。
「バルディッシュにします」
「そうかそれならばこれから練習だ。まだ力がないだろうから木製の小さい軽いやつを使え」
持ち上げてみるが、びくともしない。
「やっべ、さすがに重いか。先に魔物を駆って強化してからにしよう。ここは幸い魔物の楽園だ。いくらでも魔物はいる。今日は概要だけ教えよう」
木の下まで歩きそこにある石に腰掛ける。
「まずバルディッシュはさっき言ったように、片刃で、遠心力でたたき切る武器だ。
防御は斧の刃と柄の間で受け止める。刃はその都度柄を回転させながら、相手に刃を常に向け続け攻撃する。……
彼の講義はその後一時間続いた。
「それじゃ次は実戦だ」
待ちに待ったレベルアップだ。
次の練習がが楽しみである。