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密会

「遅かったね」


 その次第に明瞭さを帯びてくる影に向かいそう言う。

すると影は何度か不機嫌そうに揺らいだかと思うと、それはよく知っている人物の形をとる。


「ちぃ、何でもお見通しっていうわけか」


「その通りだよ。ザクス!!」


 確かのその男は3か月前にエリーを誘拐した人その人であり、特徴的な赤い燃えるような色の髪の毛に、鋭い眼光、そしてがちっとした体を持っていて、全く変わりはない。

少々違うところと言ったら、服が少し薄汚れていることと、少し背の低い女を連れてきていることだろう。


「何か彼女…… もしくは国を抜け出す時に大変なことはあった?」


 そういうと、うんうんとザクスはうなづいて渋面を作る。


「全くだ。何気なくアイラ…… 俺の横に今いる女の子だが、連れ出す時にいたい手傷を負った」


 そういうとザクスはそこで腕まくりをして、その傷というのを見せてくる。

二の腕全体が真っ赤に火であぶられたかのように、やけどを負っている。


「それは痛そうだね。でも君がけがをするとは思っていなくて、傷薬は用意していないから我慢してね」


「当然だ」


 躊躇なく返事を返してくる。


「それで一から説明してくれない?」


「もちろんだ。だが、その前に座らせてくれ」


 そういって、ザクスは床にドカッと座り込み、横にいるアイラもそれに続く。

そして少し考え込むようにする。


「まず俺が国に戻ったのはセーネを誘拐してから1週間後の出来事だった。もちろん国では俺が失敗するとは全く思っていなかった上役が喜色満面の顔で出迎えてくれる。だが、その笑顔を俺が失敗したことを告げるとすぐに怒りと非難、そして罵倒の声に代わる。上役は俺を懲罰だと言い独房に連れていき…… 三日三晩もの間、憂さ晴らしとしか思えない拷問を食らい続けた。例えば、水攻め、鞭、針で全身を突き刺す、火あぶり…… 考えられうるすべての拷問をだ」


 横にいたアイラが軽く悲鳴を上げるが、ザクスが目で黙らせている。


「しばらく拷問を続けていた上も次第に心の中が収まってきたのだろう、すでにボロボロなっている鞭を放り投げて『次はないぞ』と言い、『次はアイラの出番だ』と冷たく見下ろしてきてそう告げた。そこで俺の我慢の限界が来た。そしてお前の案に乗って暗黒魔道王朝をつぶそうと決意した」


「あれ、最初は私の案に乗らないつもりだったの?」


 だが、ザクスはそれを聞こえていなかったかのように言葉を続ける。


「そして、拷問の傷も癒えてきた俺に下ってきたのはまたしてもお前の暗殺だ。……あの国ではお前に立ち向かえるのは俺ぐらいしかいないからな」


「へぇ~、私に勝てるとでも? そもそも刃に毒を塗るという汚いことをもってしてようやく互角に持ち込んだというのに」


「どんなに汚くても、勝てればそれでいいのさ」


「……まぁ死人に口なしだけどね」


 自分が納得をしたということで、話を続けさせる。


「そこで俺はその俺に暗殺を命じたやつの周りに護衛がいないのを確認して、すぐさま首筋に剣の切っ先を突き付けアイラの場所を聞いた。奴の屈辱で赤く染まった顔を見るのはそりゃ愉快だった。奴は俺に護衛を呼ぶと脅したが、俺が『それよりお前を殺すほうが早い』というと青ざめてすぐにその居場所を教えてくれたさ。聞き出したアイラが幽閉されている場所…… そこは表からみればなんてことのない普通の家だったのだが、そこに向かおうと剣をしまったとたんに剣を突き付け、しこたま脅してやっていたそいつが護衛を呼んだのさ。それを聞きつけた護衛たちが続々と集まってくる。そのように敵から逃れるうちにこのような重傷を負った。逃げる途中で聞きだした場所にいる場所に…… 警備が厳しくなっていたアイラを助け出し、それで今やってきたということだ」


「なるほどね、大体は俺のシナリオ通りに動いてくれたのか。その女が本当に君の情人なのかという疑問は残るわけだが……」


 そういうと2人はハッとして、表情を厳しくする。

よく見れば女の方は手が小刻みに震えている。


「そういうだろうと思った。だからこそ手土産を持ってきた」


「?? まぁ私の方にも君に渡すものがある」


 ザクスは飴色のよく使いこまれた小物入れから、厳重に封をされた手紙をよこしてくる。

そして俺の方もさっきメイドに買わせた黄色の毒々しい色の液体を渡す。


「俺に死ねと?」


「まさか、染色剤だよ。人用じゃなくて工事用だから多少体に影響があるかと思うけど我慢して」


 この世界には髪を染めるという習慣がなく、人用のは売っていなかったのだ。


「ザクスは風貌がよく知れ渡っているからね。特にその赤髪が。染めればいいよ」


 注釈を軽くつけておく。

納得はした感じのザクスは小瓶のふたを開ける。すると中からは揮発性の液体のあの特徴的なにおいが部屋に充満する。

幾分か不安そうになりながらザクスは自分の手のひらに少量それをとり、自分の髪に塗り付ける。

するとそれはさらににおいを強くしながら、あの燃えるような赤い髪は黄色の染料とまじりあい明るいオレンジ色となる。

そしてアイラの髪にもそれを塗りたくっていく。





 しばらくしないうちにペンキのにおいをぷんぷんさせた2人の男女が出来上がる。


「ずいぶんと雰囲気が変わったね」


 実際に紙の色が違うというの相当に人の見た目を変えるのだ。敵もうちの国の人も彼が有名なザクスだということは注意深く見ないとわからないだろう。

これでひとまずは安心だ。










 2人の先発が終わったら次は自分の番だ。

ザクスから手渡された封筒をまじまじと見る。

とても高級そうに見えるその封筒は淡い茶色で、大きさとしてはB5ぐらいだ。そして、開けるところには蜜蠟が押されているのだが、この紋章は……


「国家機密のものか」


「そうだ。俺を脅した貴族の机から仕返しとばかりに盗んだものだ。中身については全く分からないが……」


 それを聞き、再び注意深くその封筒を見る。

どうやら魔術的な仕掛けはないようだし、味方にそんな罠を仕掛けるものもいないだろう。そこまで怖気着くこともなくそれを開ける。

中には薄い小さな一枚の羊皮紙が入っていた。


「ずいぶんと寂しいな」


 思わずといったようにザクスが言う。


「中を見ないことにはわからない」


 そしてゆっくりと中身を開いてみる。そしてそれを読み進めるうちあまりの重大さに自分でもめったに表すことのない驚きの感情を表に出す。

そして知らず知らずに口の端が緩むのがわかる。


「どうしたんだ!!」


 俺の尋常でない様子にザクスが焦ったように声を出す。


「フハハハハハ、面白い。ザクス!! 君は私に想像以上のものをよこしてくれたよ」


 ザクスは一瞬驚くと、羊皮紙の中身を見ようと近づいて、のぞき込んでくる。

そこには……




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

密命: ローレンシア王国首脳部へ


 此方『聖魔道王朝』は長年の憎き仇敵『暗黒魔道王朝』を征討の為2月25日未明に攻撃を仕掛けます

此方も周囲の国家に声を掛け、既に3国が我等に協賛し援軍を送るとのことです

我等連合軍と共に、困っていると聞き及んでいる貴国にもぜひとも挟撃をお願いしたい所為でございます



 聖魔道王朝元老院

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 聖魔道王朝は暗黒魔道王朝と対をなす国家で、大昔に1つの魔道王朝が分裂をしたのがその2国の始まりだという。暗黒魔道王朝の東側にある小国家であり、回復系の魔法を得意にしている国である。


「これは!!」


 驚いたようにザクスが声を上げる。


「そう!! まさに戦況が変わるよ」


 面白そうにつぶやく。


「さて、そろそろ暗黒魔道王朝も目障りになってきたところだ。私も本腰を入れて動こう。こうのんびりとしてはいられないな。すでに3月を切っている」


 自分でも驚くほど冷たい声が出てくる。

ザクスとアイラもこちらを見て、恐ろしそうにする。

そしてザクスはつぶやいた。


「本気ではなかったのか…… いや、俺は…… 祖国を滅ぼす手助けをしたのか…… 開けてならない箱を開けたのか?」


 だが、その声はレオンの耳に届くことなく夜の闇に消える。

その闇はいつも以上に深く、ねばねばと質量をはらんでいるかのようだった。







「とんとん」


「「「!!」」」


 玄関のほうが軽くたたかれ、俺の方も軽い興奮からすっかり覚める。

嘘のように体から熱が引いていき、体温が下がるのがわかる。

そしてザクスとアイラは顔を真っ青にしている。

すでに扉は2回めがたたかれる。


「しょうがない。私が開けるからどこかに隠れてなさい」


 2人は急いで声も音も出さずに、部屋の隅へと行きそこに縮こまる。

そして俺は顔が必要以上にこわばらないようにしながらドアを開ける。

外には一度も見たことのない若く、精悍な男が立っていた。









すみません、次の更新も少し遅れます

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