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宴会1

 それからの3か月はあっという間だった。

ヨゼスに弓の指導をしたり、図書館で様々な資料をあさったり、ハロルドに手痛い傷を負わされたりしているうちに宴会の日が近づいてくる。


 この三か月で授業では魔法を使える人と使えない人とで2つに分けられることとなった。

もちろん俺は授業に出席をしなくてもいいのだが、魔法を使える人というのが驚く程に少なかった。

エリーはもちろんトップの成績だったのだが、ヨゼスはてんで駄目だったし、クラスの中でもできるのは夏休みの長い時間を使っても2桁はいかなかった。

やはり子供のころからの英才教育出ないといけないらしい。脳が固くなっているからなのかもしれない。

それを考えると日本の義務教育は素晴らしいシステムだったんじゃないかと思う。

魔法とかはなかったにせよ、それこそが国民のレベルの平均的な底上げにつながっているわけだし、この国では民衆の大半が文字も読めず計算なんかもできることはない。それが国力の低下にもつながっているわけなのだが、貴族たちも特権階級だという確かな証拠がほしいのだろうかそれを改善しようとする姿勢も見えない。

まぁ、どうでもいいことなのだが……





 さて、今日は子供達だけでの宴会ということで俺もめんどくさがりながらもその宴会が開かれる王城へと来ている。

今日宴会があるということも3日前に急に親から言われて、これを着ろというのか、焦げ茶色の絹のズボンに、滑らかな白い絹の服と、その上から着る銀糸でレンフィールド家の家紋が胸のあたりに刺繍された茶色の胴衣、あまり長さがなくつけても腰まで届くかどうかというぐらいの短いぐらいの黒のマントを手渡された。

さらに絹の服の下には何枚も鮮やかな色の服を何枚も着ないといけない。

今は冬だからいいものの、夏だったら暑さでへばってしまいそうな重装備だ。

服も軽い… 地球の服に比べれば重いが… ものの何枚も着るということでかなりずっしりと肩に来ている。

着ているだけでへとへとになりながら、王城の中の宴会が開かれているとある一室へと入る。

その豪華な部屋はすでにたくさんの人が来ていた。

下は俺と同じぐらいの年の子から、上は20を超えてそうな人までいて多種多様だ。

子供と言ってもそれにはだいぶ幅があるようだ。

中には学園で見かけたような人もいるし、一度も見かけたことのないようなおっさんみたいな人もいる。

そして、彼らの大部分は裕福な生活を送っているせいなのか豚みたいに太っている。


 基本的に俺は貴族という人種はそこまで好きでもないため、誰とも話すことは無しに近くにいたメイドから飲み物をとってから端へと向かい、欲にまみれた人たちを観察する。

子供のくせに大変欲が強い。

自分よりも権力が高い貴族がいるとすぐにすり寄って、自分のことを覚えてもらうようにすり寄ったりしている。

そのため位が高い貴族の周りの多くの人だかりができている。

それがさらに少しでも見目がいいとさらに人の輪は大きくなる。

その様子を眺めながら、少しづつ飲み物を飲んでいく。次第にその中身は少なくなっていく。

このまま俺のことをただの平民だと思って無視し続けてくれて、それでこの宴会が終わってくれるとありがたい。

何も自尊心の塊とわざわざ話したいとも思わないし、話しているだけでこちらがめんどくさくなる。

だが、そんな俺のささやかな望みもかなうことはない。



 向こうの方で俺と同じように1人でつまらなさそうに飲み物を飲んでいた、背が低く少しやせ気味で目つきの悪い男の1人が意地の悪い目つきでこちらを見たかと思うと、隣に控えていた供みたいなものに2,3言話しかける。

そして彼らがひとしきり話し終え、品のない笑いでげたげたとひとしきり笑った後にこちらに向かって話しかけてくる。


「少し、失礼」


 くぐもった声で話しかけられたので、たった今気づいたというように面を上げる。

肌が浅黒く目が鋭いのを見るとどうやら南の方の貴族らしい。


「何か」


 目元にかすかな笑みを湛えて尋ねる。

その貴族はなんとなくどぎまぎしたように少し口ごもった。

が、首を振って暗い目で俺を見つめてくる。


「なぜここに平民がいる? 平民は誰かの付き添いではなくてはいることはできない」


 レオンの本当の身分を知ったなら、それなりに高位の貴族でも敬意を払わなくてはならないほどだ。

だがその貴族の態度は明らかな上位者としての自負で俺を見下ろしてきて、さげすんだ目つきで見てくる。


「なぜ理由を言わなくてはならないの?」


 たかが平民に辱められたと思い、その貴族の浅黒い顔がさっと赤くなる。

そして俺の腕を浮かんでくるが、俺の手の柔らかさに驚いたのか思わず手を引っ込める。

だが、その貴族が二言目を言う前に横にいた2人の供のうちの1人がじろりと睨んで恐喝をしてくる。


「お前!! このお方がどなたと心得る」


 そのあまりの剣幕に驚いた数人がこちらの方を見てくるが、貴族の男が何でもないという風に手を振るとまた視線は離れていく。

よくある不手際をした平民を罰するときに挙げる声だと思ったのだろう。

ひそひそ声が少し聞こえてくるが、その男はさほど気にした様子を見せない。

そして、俺に返事を促すかのように顎をしゃくる。


「知りませんが…」


 何も起こっていませんよという俺の態度が気に入らなかったようで、少し声を荒らげながら自慢げに家名を言う。


「ルンド男爵様だ。我と話せたことを光栄に思うがよい」


 よくここまで自慢げに言って、恥ずかしくないものだと思う。

貴族の中ではほとんど最底辺の位だ。

下にはまだ騎士爵、準騎士爵というものが控えているが、その2つは一代限りのものでこの場にいるものの中では最底辺だ。

おそらく位が低いがゆえに誰からも相手にされず、うっぷんがたまっていたのだろう。

俺のことを手ごろないじめる相手だと思い、ちょっかいをかけてきたに違いない。


「そうですか…」


「そうだ。愚民め。貴様とは話すようなこともない天上の人なのだ。すぐに跪いて靴をなめろ」


 あきれて相手のことをまじまじと見つめてしまう。

相手に靴をなめさせることでしか、自分の優越性を満たすことができないのかと。

安い夢で情けない限りだと思い、相手に向かって見下げ果てたような表情をして思いっきり嘲笑する。

それに本気でブチギレた貴族が広間に響き渡るかと思えるほどの怒声を吐く。


「貴様っ!? 平民の分際で貴族の我に逆らうなんていい度胸だ」


 そして俺の全身をなめまわすように見て下卑た笑みを浮かべる。

そして自分では自覚していないであろうニタニタとした笑みを浮かべ、はたから見ている側としては気持ち悪い。

生臭い息がわかるほど近くに顔を近づけ、舌なめずりをしている。


「ふん、男だけど見られる見目をしているようだな。男など趣味ではないが貴様だったら楽しめそうだな。俺の家で思いっきりしつけをしてやるぞ。今更泣きわめいても無駄だ」


 そして俺の腕を強引につかみ連れて行こうとするが、身体能力のせいでピクリとも動かない。

周りからクスクスと笑う声が聞こえる。

このままではいい恥だと思ったのだろう、罰を加えるとばかりに手を振り上げる。


「わからないようだな。貴族様を怒らせるとどうなるのか」


 そう言い放った後、手が振り下ろされてくる。

スピードも鈍く当たっても痛みは全く感じなさそうなので、そのまま座って手が振り下ろされるのを見る。

だが、その手の動きは途中で止まる。


「レオン!? あなた何をやっているの!!」


そしてその貴族は固まった彫像のようになる。

その視線の先にはエリーがいた。

鬼もかくやというほどの怒りの形相になっている。


「へへっ、王女様。私はルンド男爵です。王女様は相変わらず麗しい姿です。いつみても輝くバラのようで… 」


 いつまでも続きそうな話をエリーが手を上げ止めさせる。

そしてゆっくりと低い声で言う。


「あなたは今… 何をしていたのです…」


「何をって、この言うことを聞かない平民のしつけですよ」


 全く悪びれた様子もなく言う、いやそれどころかさらにエリーをぶち切れさせることを言う。


「王女様は僕に興味があるんですよね。言わなくても分かっていますよ。ほら向こうの庭園で愛を育みましょう」


「愛? 何を言っているの? たかが男爵ごときが偉そうな口を利かないで。それにレオンに手を上げようとするなんて」


「レオン? この薄汚い平民ですか? それより私と…」


 言い終わる前にエリーに思いっきりびんたをされ後ろに倒れこむ。

男は驚いたようにエリーを見る。


「へぇ~、レオンが平民ですって… ねぇレオンあなたはどの位だったっけ?」


 半ギレのエリーが話を俺に振ってくる。

俺にもこの哀れな調子に乗った男を絶望させるのが楽しみになってくる。

エリーに便乗をする。


「そうですね、私は辺境伯爵家ですね」


 そして、にっこりと微笑む。


「えっ?? はっ?! 辺境伯…し…ゃ…く?」


 とどめとばかりにエリーが言う。


「そうよ、それほどの相手に無礼なことをするのは…えっとルンドだっけ?」


 その言葉にその貴族も供回りも真っ青になる。

そして、壊れたロボットのようにあたりを見回す。

いつの間にかあたりには人だかりができていて、こちらを興味深そうに見ている。

そして俺のことで様々な話をしている。


「それでレオン、これをどうする」


「好きにしていいよ」


「わかったわ、思いっきり恨みを晴らさせてもらうわ」


 そういうとエリーは少し悪い笑みをする。


「それじゃ、セント・ルイス塔に投獄ね」


 そうすると貴族はこれ以上聞くのが恐ろしいというように気絶をしてしまう。

そして供回りも同じく気絶をする。

セント・ルイス塔は貴族のための牢獄なのだが、身分が高いものが閉じ込められるというだけあって、待遇も悪くはないのだが…

そしてそれよりも気になるのは…


「エリーだと勝手に牢獄に入れるのは越権行為にならない?」


「大丈夫よ。親は何とか出来るもん」


 そういうと明るく笑う。


「何か嫌なことがあったら私に言ってね」


「女の子に守られるというのもな…」


 そして宴会は少しづつ進んでいく。

様々なものの注目を集めながら。



















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