暗殺者と勝負
戦いは家の中ではやりにくいし、セーネにも被害が出てしまうため小屋から出る。
相手も俺と同じく狭いところではやりにくいと思ったのか共に出てくる。
距離をそれなりに取り、とりあえず目の前にいる男に青白い火の矢を10本ほど放ってみて小手調べしてみるが難なくよけられる。
予想していたことなのですぐに次の行動へと移る。
だがその前に相手の方からお返しとばかりに数十倍の量の火の矢を放ってくる。
それを半身になり最小限の水の壁を相手と自分の間に張り、ガードをする。
相手と自分の間はそれなりに離れているため、相手がよほど魔法を広範囲に展開しない限り小さい盾でも十分間に合うのだ。
「おい噂の神童というのはこの程度なのか?」
「まさか!? お返ししますよ」
そういい相手に近づきながら魔法を広範囲に作る。
これで特に決定打を与えようというつもりはないので、風の刃を数十作り出血で後々が有利になるようにする。
(ウィンドブレード!!)
残り5mもないというところで男の回りを取り囲むようにして、風の刃の檻を作る。
「まずいな…」
男はそういうと急いで魔法と自分の間に壁を作ろうとするが、俺の魔法がぶつかるほうが壁の完成よりも早い。
半分も作り終えないうちに直撃をして、あたりに赤い血がまき散らされる。
大したダメージは与えられないが、痛みに気をそがれているようだ。
少し注意が散漫になっているすきに追撃するためにいやらしく水の塊を放つ。
男はその質量に耐え切れず数十mほど吹き飛ばされてしまう。
「いやらしいな」
もちろんここでは傷口にしみるように水を使ったのであって、間違えて火の魔法を使い傷口を焼き出血を抑えるようなことはしない。
相手の服は水と血が混じり薄いピンク色に染まる。
「そっちこそ、足から魔法を展開して機動力を削がないようにしたくせに」
「動けないならハチの巣にされるからな」
思ったよりもこちらの考えを読んできてやりづらいことこの上ない。
知将タイプという感じだ。だがこういう相手は力…ごり押しに弱いはずだ。
力で押しつぶせば勝てるな。
そう思いすきを少し見せるが、魔力を思いっきりフル回転させる。
「勝負は決まった。そういう顔をしているな」
そういうと同時に体から力が抜け、俺の目の前を更地にするつもりだった魔法は発動が中止される。
体から魔力が吸い取られるような感触がしたところを服を少しずらして見ると,1つの魔法陣が刻まれている。
どうやら火であぶったようで少し赤くなっているのだが…
「いったいいつ付けた?」
「最初の魔法だ」
「? 完璧に防いだはずだが?」
男はニヤッと笑ったが何も答えない。
そして、目をつぶり瞑想を始める。
こういう時にこそ魔法を放ちたいのだが、さっきの魔力を吸い取られる魔法陣が作動しないとも限らない。
何もできずに相手の様子を観察する。
「ククッ」
どうやら傷口を治したらしい。
少し引きつっていた顔も少しほっとしたかのようになる。
「お前の魔力いい質だな」
「それはどうも」
魔法陣は予想通り魔力を奪い取り自分のものにするらしい。
問題はいつ付けたということなのだが…
「普通の奴だったら魔力を吸い取るだけで動きが悪くなり勝負はつくのだがな… お前の様子を見ているとそこまで堪えているように見えない。いったいどれほどの魔力量だ?」
「無限と言ったら?」
「お前が無限なら俺も無限だ。お前が強ければ強いほど俺も強くなる。それで自分の魔力で魔法を放たれるというのはどういう気持ちだ?」
「何とも言えないね。だが僕が勝つよ。それにお前の魔力の吸い取れる量はそこまで多くない。できるならすべて一度にし吸い取っているからね」
「わかっているじゃない。よくぞここまで冷静だな」
感心したかのように言う。
「じっくりとやろうぜ」
「あなたの思惑には乗りたくありませんね」
そういうと魔法を使うのをやめ、接近戦にやり方を変える。
相手も30cmほどの小さな剣を取り出し迎え撃ってくる。
こちらは攻撃的に向こうは防御的に動く。
防御に回っている敵こそやりにくく、ここで勝負を決めようと思うとすぐに後ろに下がる。
まさにやりにくいことこの上ない。
勝負はなかなか決まらない。すでに2時間は立っている。
定期的に魔力は抜き取られているものの、俺の魔力の総量にとっては微々たるものだ。
【魔力回復がlv2に上がりました】
そういう音声が聞こえたかと思うと、回復しても取られるばっかりだった魔力の減りも少し穏やかになる。
「お前化け物かよ。ずっと攻撃に回していても尽きない体力に桁違いの魔力。このままじゃ力で押し潰されそうだぜ」
男があきれたように言う。だがその声も少し疲労がにじみ出ている。
俺も少し息が上がっていて肩が上下し始めたため疲労回復のため男の話に乗る。
どうやら男の話では国民も暗黒魔道王朝に不満を持っていて、男もそうだという。
だが男の場合は裏切りたくても言い交した女を人質に取られているため裏切れないらしい。
俺の襲撃も女を盾に取られて、命じられたものらしい。
「さて、つまんない話をしたな。付き合わせて悪かった。それじゃ再開をしよう」
「あぁ、あなたも女の人のために…」
「そうだ」
数分で話は終わり、また戦いは始まる。
だが男の慎重な姿勢のせいでいつまでも続いてしまう。
夜が来て、また太陽を拝む。
すでに相当に時間が経っている。
俺の魔力も吸い取られていてすでに残量は一割を切っているし、男も俺から奪い取った魔力をすべて回復に回しているためあまり残っていない。
俺が攻撃を当ててもそこまで深い傷にならず、すぐに回復されてしまう。
俺も男も肩で呼吸しているのがはっきりとわかってしまう。
「俺がこれほどやっても倒せないなんてお前が後にも先にも初めてだよ」
感心したように言う。
もちろんこの間も刃を打ち合わせている。
俺も余裕そうにしているもののかなり内心では焦っている。
このままでは魔力と体力のどちらも尽きてしまうと。
「今他の事を考えていたな」
男の声でハッと我に帰る。
そういうとともに刃が俺の腕を軽く切り裂く。
血が飛び散るともに軽い痛みが走る。
これが初めての被弾だ。
「勝負もらった!!」
男が言う。
何のことかと疑問に思うがすぐにその理由がわかる。
切られた腕のところがしびれて来て、それが全身に広がっている。
「くそっ、毒か」
「ご明察」
体にしびれが周り、バルディッシュを手から放してしまう。
そして、男の体当たりをくらい吹き飛ばされる。
立ち上がろうとするも痺れで立てなくなる。
「勝負あったな」
言い返そうとするも舌もうまく回らない。
「お前との闘い楽しかったぜ」
そういい、俺の首に刃を当てようとする。
だがそれに力をこめるのをためらっているようだ。
何か打開策はないかとぼんやりする頭で考える。
そこにふと離れたところにスライムがいるのが見える。
不定形で見るからに毒を持っていますよといった感じだ。
そこで思わず直感でスライムから毒耐性のスキルを奪い取る。
すでに前使ってから、一日は経っているのだ。つまり使用しても大丈夫なのだ。
【毒耐性lv2を奪いました】
その声がして、体からしびれが抜ける。
思ったよりも強くない毒で助かる。
相手のスキを見計らい、思いっきり顎を殴り昏倒させる。
何が起きたのかわからずに男はふらっと倒れる。
万が一起きた時に暴れられると困るため、アイテムポーチに入っていたひもでがんじがらめに拘束する。
よし!! これでセーネを助けるだけだ。
達成感と充実感で胸がいっぱいになりながらあばら家まで意気揚々と歩いていく。
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