追跡
ケインがセーネが誘拐されたことを急いで伝えに来てくれた。
どうやら状況からすると、真昼間から俺が借りている家に1人の男が襲撃に来たらしい。
家に待機していた護衛たちの必死の奮戦もむなしく、全員気絶させられた挙句にセーネは誘拐されたらしい。
気絶させられた護衛が再び目覚めたときは、すでにセーネの姿はなかったそうだ。
急いで俺に状況を伝えに来た護衛が学園の中であたふたしているときに、それにケインが気になって声をかけて事が明らかになったというわけだ。
その護衛から聞いた情報を持ってやってきたのが今の状況というわけだ。
「へぇ、セーネが誘拐されたんだ。相手は誰だって?」
「そこまでは聞いておらん。だが、学園を出たところでお前の家の護衛がお前を待っている。急いで行ったほうがいいぞ」
「もちろんです。それとヨゼス… 申し訳ありませんがちょっと抜けますね」
「そんな!? 僕の武術よりはるかに重大なことだよ。 気にしないで急いで行って」
「あぁ、それじゃ行きます」
そう言うと急いで学園の入り口で待っているという護衛のところまで行く。
こういう時にこそでかいというのは恨めしいという気持ちになる。
できる限りの速さで入り口までたどり着く。
確かにそこには名前は知らないが、いつも家にいる見慣れた顔の護衛の姿があった。
「レオン様っ!! 申し訳ありません。私たちがふがいないばかりに」
「終わったことです。それより状況は?」
「都市中を護衛に捜させていますが全く手がかりがありません」
「…家に紙とかはない? こういう状況では紙は机とかに置かれているような気がするんですが」
「全くそういうものは見当たりませんでした。レオン様が探せというなら探しますがそういうものはなかった気がします」
「そう…」
こういう時にはどこどこに何時まで来いとか、そういうものがあると思っていただがな…
見込み外れだな。つまり1から探さないといけないのか…
どうするかね?
一度家まで行って考えてみよう。
俺も護衛も急いでいたためすぐに家までたどり着く。
幸いにして家を焼かれるなんていうことはなかったようだ。
だがもしそうなっていたら騒ぎはさらに大きくなっていただろう。
それでも家の前には人だかりができていて、少しざわざわとしている。
「どいた!! どいた!!」
護衛が大声を上げて人の波を押しのけ家までの道を作り、俺はその後ろをついて歩く。
周りから何があったのか疑問の声が上がるが、それに構えるほどの余裕はない。
へとへとになりながら何とか家までたどり着く。
家に入るといつもと変わらない風景がそこにある。
だが、いつもはいるはずの人物がいない。
中であたふたとしているメイドがこちらに気が付くと一生懸命謝ってくる。
その件については責任は問わないから安心するようにと言い、部屋に何か手がかりになるものはないかとあたりをひっくり返す。
そして護衛に外での聞き込みを続けるように言う。
「どうやら見つかりませんね」
途中から探すのに加わってきたメイドに言う。
「申し訳ありません。私たちが何も覚えていないせいで」
「しょうがないと思うよ。どうやら話を聞く限り手練れのようだし」
学園都市の真昼間に7人のもの人間に騒がれないうちに、そして護衛の聞き込みによると、逃げるところを誰にも見られることなく1人の人間を誘拐したという。
相当の手練れのようだ。
家の中にも一切の痕跡を残していないようだしな。
エリーがセーネを心配して人を動かしてくれているようだが、依然として進展はないらしい。
どうやら本当に手がかりはないらしい。
しばらく考える。
どうにもしようがないので何か使えるスキルがあるかと模索する。
(鑑定)
名前 レオン・レンフィールド
種族レベル 55
種族 人間
スキル 幸運lv3
成長力アップlv2
直感lv5
スキル強奪
魔力回復速度アップlv2
4属性魔法lv2
剣術lv2
サバイバルlv1
嗅覚上昇lv3
斧術lv3
未来視lv1
隠密
鑑定
魔力暴走lv2
装備 上質な布の服
鉄の剣
才能 16
レベルはほとんど上がっていない。
最近は体を動かすことも少ないため当然だ。
そしてどのスキルが役に立つか考える。
幸運は…
うん、ひょっとしたら適当に歩いたらセーネと会えるかも。でも確率は低いな。というかそんな不確定なことはやりたくない。
次は直感…これも不確定だな。
スキル強奪は…
周囲の人を鑑定して追跡スキルを持っている人を探すが、そもそもスキルを持っている人がいない。
これもあきらめたほうがよさそうだ。
次は未来視…うーん!?
どうかね? 嫌な未来は見たくないな…
どうすれば発動するかもわからない。
めぼしいものがないな。
後は戦闘的なもので意味がない。
うん?!
引っかかる気がする。
何か使えるスキルを見落としていないか? なんかそんな気がする。
しばらくうんうんと言いながら頭を使う。
もうのどのところまで出かかってきているのに出ないもどかしさ。
もやっとする。
!!
そうだ!!
嗅覚上昇だ!! セーネのにおいを追えばいいのか。
普段使っているため逆に思い浮かばなかった。
胸が急にスカッとする。そうとなれば話は早い。
急いで普段かぎなれているにおいを思い浮かべてそのにおいを追跡しようとする。
「…」
どうしても無理だ。そもそもいくら鼻が強化されているとはいってももともとは人間の鈍い嗅覚が元なのだ。もともと低い能力は上がり幅も大きくない。
俺の今のレベルではにおいの大体の方向がわかっても具体的にはわからない。
大体4等分してどこの象限にあるかわかるという程度のものだ。
それでは見つかる確率が400パーセントになっただけだ。
まだまだ足りない。
それこそ前世みたいに警察犬みたいなことをその辺の犬にやらせるか? 無理だな。野良ともいえる犬はいるがそんな犬は使いようがない。
急に仕込んでも悲惨な結果にしかなるまい。
またもや振出しに戻り気分はまた沈んでいく。
そこでまた天啓とでもいうべきか、犬からスキルを奪えばいいと思いつく。
すぐに考えを実行に移すべく犬を探すように護衛たちに言う。
護衛たちはそれを聞き首をかしげたものの誰も何も言わない。
すぐに犬を探すべくあちこちに散っていく。
それから時間もたたないうちに護衛の1人が犬を連れて戻る。
犬はその束縛から逃げようと必死にもがいている。
「よくやった!!」
「はっ!! ただそれを何に使うのですか?」
それには答えずに犬を鑑定をする。
やはり予想通りに犬には高レベルの嗅覚上昇のスキルがあった。
すぐさまそれを奪い取る。
【嗅覚上昇lv3を奪いました。嗅覚上昇lv4になりました】
無機質な音声が聞こえてくると同時に、すさまじいぐらいの悪臭がする。
小さいころから汚いこの世界で暮らしていてだいぶ慣れていたが、スキルのレベルが上がったことで改めてこの世界が不衛生なところだと思い知る。
その臭さに思わず閉口してしまう。
だがスキルのレベルが上がってくれたことにより、セーネの位置がより細かくわかるようになった。
急いでそちらのほうに向かおうとする。
「待ってください!? 犬は何のために?」
護衛がハッ? という顔で聞いてくる。
わざわざ俺が何のために犬をとってこさせたのか意味がわからず困惑しているようだ。
いぶかしげにこちらを探るように見てくる。
「好きにしてください。もうそれは必要ありません」
「もう必要ない? すでにもう終わっていたということですか?」
「そういうことです。セーネの位置がわかりましたのですぐに向かいます」
「わかったのですか!? どちらの方向に? われら護衛もすぐにそちらへ向かいます」
「大体学園都市から見て南に5kmほどのところです」
「わかりました。そこらへんは平地なので我々もすぐにレオン様を見つけられるでしょう」
「それでは行きますので、後から来てください」
「了解。仲間にもそう伝えておきます」
伝言を残すとすぐにセーネがいると思われる地点へと赴く。
レベルが高いおかげでそう時間をかけずにそこへと着く。
あたりに何も障害物がなく学園の影も見えるだだっ広い平原にポツンと土と木でできた粗末なあばら家が立っている。
どうやらセーネはそこにいそうだ。
魔法でいきなり奇襲をかけてもいいのだが、セーネにも当たりそうなのでその物騒な考えは捨て、おとなしくあばら家の扉をたたき、返事を聞かずに中に入る。幸いに鍵はかかっておらず扉は抵抗なく開く。
入って中の状況を確かめてみると家の中は粗末なテーブルとイスのみがあるだけだ。
そして、部屋のかべに1人の男が壁に寄り掛かったいる。いかにも平凡といった感じの人でそこら辺の農民の服を着ていてもよく似合いそうだ。
その男は目を閉じていたが、ふっと顔を上げ目を開ける。
「遅かったな」
その言葉に侮蔑の感情は込められておらず、ただ淡々と事実を言っているという印象を受ける。
「できる限り早めに来たんですがね」
「お前のお姫様は後ろの部屋にいる」
「わかっています」
「しかし神童といったがこれは期待外れだったな。さっさと国に帰ればよかったな」
さっきのと違いそこには明らかに馬鹿にした響きがある。
「へぇ~、その期待外れがどの程度かやってみる?」
「ククッ!!」
おかしそうに笑う。
「ザコどもがわらわらとやってくる前に終わらそうぜ」
単純でわかりやすい。だがそのほうが周りに気を使わない分楽だ。
「そうだな」
俺もバルディッシュをアイテムボックスから取り出す。
そして刃先を相手に向け、じっと見据える。
互いの信念をかけた戦いが今始まる。
どちらも後に引くことができず、また一歩も引くつもりもない。
互いの誇りと信念と…愛する人のために。
ブクマ、評価お願いします。




