再びの謁見室
テロの後、俺たちは厳重な警護で城まで帰還する。
王女のエリーもいる事だし当然の処置だろう。
一応王妃様のところまで戻るのだ。そして、今回のいきさつについてなど話さなくてはいけないだろう。
城に帰る途中で幾たびも町のほうから爆発音が聞こえてくる。
あちらこちらでテロが起こっているようで町に向かって走っている衛兵もかなり多い。
険しい顔をしながら、素早くかけていく彼らとすれ違いながら、城まで戻る。
今回の件で死者はすでに3桁を超えただろう。
まさに今そこから遠くないところで爆発音がしたの聞きながら思う。
だが今回のことで一番手痛いのは建築物への被害、そして対外的な威信の失墜だろう。
国の中心部まで入り込まれても対処できない与しやすい相手と思われるだろう。
この戦争が終わっても、またほかの国から戦争を吹っ掛けられるだろう。
頭が痛いことばかりだ。
「レオン、怖い顔をしているわよ」
エリーが心配そうにのぞき込んでくる。
「そう、ちょっと考え事をしていてね」
「そう、気を張り詰めないようにしてね」
「えぇ」
そんなわけで城までたどり着く。
城の中ももちろん衛兵が走り回っていてあわただしい。
この前も通った道を案内されて、王妃の私室まで行く。
中へ入るとすぐに声をかけられる。
「エリー、レオン君無事だったのね」
「護衛をつけてくださったおかげです」
感謝の言葉を言う。
実際問題、護衛がなければ人の波に巻き込まれて、まとめて爆殺される可能性もあったわけだから。
「うん!!」
エリーは元気そうに返事をしている。
「本当に良かった」
そういう彼女の目には滲むものがある。
だがそれも服の袖で軽くぬぐうときっぱりとした顔になって、あちこちに手際よく指示を飛ばしている。
少しひと段落ついた時にようやくまた話しかけてくる。
「それでこれはどういうことなの?」
「私に聞かれましても…」
カイさんがしどろもどろになって答え、俺の方をちらちらとみてくる。
「レオンどういうこと? あなたならわかるんじゃない?」
こちらに向き直って聞いてくる。
「王妃様も予想できているでしょう?」
「そういうことは暗黒魔道王朝…」
「おそらく」
妙に納得をしたという顔でうなづかれる。
王妃様も大体暗黒魔道王朝あたりだと検討をつけていたのだろう。
「やはりか… どうしてそのように思ったのだ?」
「どうやら今の爆発は洗脳されたそこら辺の民衆を媒体にして、魔法攻撃を行っているからです。洗脳も自爆もあちらが好む手ですから」
暗黒魔道王朝の非道な行為に対し、眉をしかめていたものの、非難してもどうしようもないことも分かっているのだろう。
目をつぶり、ずっと思案をしているようだ。
「よくわかった。そのことはまた後で説明してくれないか?」
「後?」
「そうだ、今はあなたたちのことが心配になった私が、一度自分のところに来るようにさせたのだが…もう少ししたら王や宰相、貴族による会議が始まる。そこで説明してもらおうと思ってな」
「そうなのですか」
確かにそういった通りにしばらくした後に、小姓がやってきて謁見室に来るように言われる。
すでに王妃様は準備が終わっていたらしく、すぐにそこまで向かうことになる。
俺たちもすぐ後ろをついて歩き、そこまで向かう。
謁見室まで向かうとすでにそこにはずらりと貴族が並んでいた。
小姓が王妃様の入室を告げると一斉に貴族が臣下の礼をとる。
俺やセーネも慌ててそれに倣う。ちなみにエリーはそんな母を誇りに思っているのか、無い胸を精一杯そらしている。
俺のことを知らない貴族などはあの後ろの小さなガキはなんだとかも言っている。
ちなみに俺のことを知っている貴族は、青い顔になってそういった貴族の脇腹を小突いている。
叩かれたほうは隣の人の意味の分からない行動にキョトンとするも、必死の気迫を見せられ反論することすら忘れてしまう。
そういった人々の反応を横目で見て楽しみつつ、中心へと進む王妃様の後ろから途中で別れて横にそれる。
こちらに視線が集まり、居心地が悪いと思う暇もあまりないほどすぐに王がやってきて会議が始まる。
もちろん会議自体は宰相が進め、王はただの傀儡になってしまっている。
宰相は相当に憔悴しきった模様で、目を充血させながら今回のことについて様々なことをまくしたてている。
ふと一瞬目が合ったが、あちらはそこまで疑問を持たなかったようですぐに視線を戻している。
会議は紛糾して、このことに対処できない国の無能力さを責めたり、どこの手によるものかを問う声が上がってきたりしている。
あちらこちらで互いに罵る声が聞こえてきて、国を引っ張っていけるような人物たちにはとても見えなく、あさましく見える。
まさに会議は混乱の態を極めている。
いつまで続くかわからない騒々しい会議は、突如一段高い所に立っている凛々しい女の人の声によってさえぎられる。
「皆の者、静粛に。上に立つものがまとまらなくてどうする。ただ責任問題を擦り付けあうだけでなく、どう解決するのかが会議の本題ではないのか?」
それに心当たりのあるものは顔を伏せてしまう。
だが鶴の一声で会議はいい方向に向かう。
今までのただ責任を押し付けるものから、どう解決するかに主題が変わったのだ。
それぞれが互いに案を出し合い、あたりはいい意味での活気に包まれる。
「それではレオン。今回のことを説明してくれ」
王妃様からの再びの発言にあたりを見回すものが増える。
俺が真ん中の方に歩み寄ると、全員の視線が俺に集まる。
「神童か。それで今回のことで何があるのだ」
全員の注目を浴びる中これまでの経緯などを説明する。
終わると同時に周りから感心するような深いため息が漏れる。
宰相も議論の内容を大幅に減らしてくれたことを喜んでいる。
「よし、それで敵はわかった。それではどうしようか?レオン君?」
「宰相。彼は子供です。本来ならば大人のやることではないのですか? 子供に頼らないといけない現実をしっかりと見なさい」
王妃様が窘めてくれる。
「はっ」
そう言われて改めて赤面する宰相。
確かに国を引っ張るものが子供に頼るのは情けないと気づいたのだろう。
しっかりとした顔になって、会議を再開させる。
王妃様も満足そうな顔になっている。
「レオン君。不出来な私たち大人のせいで多大な迷惑をかけました。それについてはお詫びの言葉を申し上げます。ですが、これからは大人の仕事です。子供は親に庇護をされるものです」
優雅に微笑む王妃様。
俺もそれに従い、優雅に会釈をすると謁見室を退出する。
これ以上子供が口をはさんでもいいことはないだろう。俺の出番は終わりだ、と思いたい。
後はゆっくりとこの国の行く末を見てみることにしよう。
この国の大人の腕前をがどれほどか。
大変そうだったらまた手を貸せばいいだけだ。
「ねぇ、レオン?」
「何? セーネ?」
エリーはまだあの場に残っているのだ。
「レオンだったら今回のことはどうしたの?」
「そうね… 今までのことすべて無視でよかったと思いますよ」
「今まで? すべて? どういうこと?」
「…」
それには答えずに血のような夕日で赤く染まっている、あちこちが破壊された街並みを眺める。
「ねぇ?」
「大丈夫です? 悪いようにはなりません」
今回のことはあまりにも暗黒魔道王朝に振り回されすぎた。
そもそも初めから,ゲリラ作戦など無視すればよかったのだ。
圧倒的な兵力を持っているならそれで敵の首都を押しつぶせばよかったのだ。
首都を攻められているのに、防御をしないで攻撃をするバカはいない。
内部の反乱も無視して進めば、扇動者がいない反乱もそのうち収まって、今まで通りの戦いができたのだ…
本当に単純だったのに…
「セーネは大丈夫だよ」
セーネのきれいな唇に軽くキスをする。
「守るから…」
「はいっ!!」
絶対に守ると心に決めながら…




