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王都テロ

 翌朝、すっきりとした気持ちで起きる。

いつものように体に倦怠感もなく、頭がボンヤリするといったこともない。

昨日から王城の一室を貸してもらい、そこに滞在をしていたのだが、ベットがよかったのだろう。

身体を横たえると20㎝以上も沈むふわふわのベットに寝ていたおかげで、体から疲れが抜け、それどころか全身に力がみなぎるかのようだ。

思いっきり伸びをしようとすると、その反動でさらに沈み込み尻に心地の良い反発を与えてくれる。

ふかふかだからと言っても中は風通しがよく、夏なのに寝汗1つ掻いていなく、朝から不快な思いをすることなく過ごすことができる。

自分の家にも1つは欲しいと思えるようなベットだ。



 軽く体を伸ばしストレッチを終えるころになると、ちょうど小姓が部屋の中に入ってくる。


「レオンハルト・レンフィールド様。朝ごはんの支度ができました。こちらにお持ちいたしますか? それともダイニングで?」


 今までは歓待、お目通しなどの理由でみんなで集まるところで食べていたものの、本来ならば貴族王族などは部屋まで食事が運ばれてくるものなのだ。


「ここでお願い。それと少し喉が渇いたからさっぱりとした飲み物を1つ頼むよ」


「了解しました」


 そういうと小姓は部屋から出ていき、そう間も経たないうちに食事がまた別の小姓によって運ばれてくる。

食事は腹が重くならないようにされていて、さっぱりとしたものがメインになっている。そして飲み物も希望通りに添えられていた。

シュワシュワと泡が出ているのを見ると炭酸水のようだ。

この世界には工業的に二酸化炭素を発生させる方法を持っているように思えないので、おそらくは高山から汲んでこられた天然ものなのだろう。

軽く口に含むと若干の苦みとともに柑橘類のいい匂いが鼻腔をつく。

確かにさっぱりとしていて、体が洗われるようだ。

それにしてもコップの材料はガラスなんだ、かいう変なところに感心しながら、食事をどんどん食べていく。





 城の裏口に集まりこれから出かけようとしたのは、すでに日が天の真ん中あたりまで登った昼に近い時間だ。

これから御者や護衛など、セーネ、エリー以外の人との顔合わせをする。

俺が来たときにはほとんどの人がそこに集まっていた。

王妃様が護衛10人に御者2名と言っていたので、来てないのは俺とエリーのみのようだ。


「こんにちは。これから1週間よろしくお願いします」


  こちらの方を一斉に振り向いてくる。


「こんにちは。護衛のまとめ役?みたいなものを引き受けたカイだ。よろしく」


 中心人物らしき人も自己紹介をしてくる。

手を出してきたのでその手を握り、握手をする。

そのあと、護衛や御者の人と1人1人挨拶をしていき、親睦を深める。


お互いに自己紹介がようやく終わるという頃になって、エリーがやってくる。


「ごめん、昨日夜遅くまで眠れなくて朝寝坊しちゃった」


 身を整える暇もなかったらしく、ところどころ服も乱れている。


「気にしてないよ。少なくとも僕はたった今来たところだしね」


「ありがとうレオン。えっとそれからカイさんに、護衛の皆さんはそんなに待ちませんでしたか?」


「それなりには待ちましたけど、それが仕事なのでどうか気になさらず」


 カイさんは特に嫌な顔もせずに言っている。

周りの護衛もそうだ。


「それでは自己紹介も終わったことだろうし、行きましょう」


 エリーが弾んだ声でみんなに対して、声をかける。

一応今この場で一番偉いのはエリーなのだ。

彼女の声に従って動いていく、と言ってもエリーは大体の方向を言うだけで主に細かいところを決めるのは護衛や御者の仕事になる。

目立たないとはいえ、豪華な王家の紋章を打った6人乗りの馬車に乗り、護衛達は徒歩でその周りを取り囲むようにしてそれを守る。




 初めに行くところは昼までもう間もないということもあって、王妃様が教えてくれたらしい評判の店の近くのあたりをぶらぶらとうろつくことになった。

馬をその目的地へとゆっくりと走らせる。


 幾ら王都が大きいと言っても前世の大都市ほど大きくはないし、1つの都市の中での移動なのでそう時間もかからずに目的の場所にたどり着く。

御者が道の端の馬車を寄せ、俺たちは馬車を降りる。


 ついた先はどうやら服を買う店で、エリー、セーネともに大はしゃぎだ。

店内はそこまで人が多くなく、落ち着いた雰囲気だ。

やはりそこで女の人の特性とでもいうべきか、そこでお互い険悪だった2人が仲良くそろって店の中を歩き回り、きゃあきゃあ騒ぐ。

こういうところは異世界でも元の世界でも同じのようだ。

ふと目があったカイさんと苦笑いする。











 さて、一週間が過ぎた。

時間がたつのが早いと思うが、どうせこの一週間はほとんど同じ日常だったのだ。

毎日ショッピングや食べ歩きなどをしていたため、男の人にはある意味つらい時間でもあった。

2人は最近はやりだという淡い色をしたひらひらの薄いドレス、ワンピースを大量に買い込んでいた。

そんなにあっても着るのか?というレベルでおよそ100枚ほど買っていた。

俺もよくわからないが同じデザイナーが作ったと思われるそのひらひらとした薄いトーガを2人に買わされた。

買わされたといっても涼しい色合いで意外に気に入っているのだが…



 今日で観光も終わりということで、2人ともとてもがっかりとした感じで王城へ帰る馬車へとのる。

ふとエリーが俺の目を見つめていう。


「ねぇ、レオn…   」


 そう言い切る前に俺の感覚に何か異変を感じる。

隣にいたセーネも妙な顔をしている。

だが、ほかのものは異変を感じていないようで急に固まった俺たちを不思議そうに見いている。




しかしその異変が何によるものかも理解できないうちに、ここからそう遠くないところで振動を伴った爆音がする。


「なんだ!?」


 カイさんが慌てた感じでつぶやく。

緩やかな円を描いていた護衛達も、すぐさま馬車を中心に周りで陣を組む。

辺りもいきなりの爆音で騒然として、混乱した民衆と思わしきものが1人駆け出すと他のものも後に続く。

民衆たちの動きは大きな波を作る。


「不味い」


 思わずつぶやいてしまう。


「急いで路地とかに入らせて。巻き込まれるとまずい」


 いつもはめったにしない早口で御者を促す。 


「分かりました!?」


 御者もこの様子を見て、ただ事でないと理解して馬を近くのそれなりに近い路地に入れようとする。


 しかしそれも間に合わず、逃げる群衆の波に巻き込まれて直に身動きが取れなくなる。

護衛も波に押し流されてしまって、半分ぐらいはどこに行ったのかすでに分からない。


「どうします!?」


 御者の悲鳴が上がる。

今にも泣きそうな顔で聞いてくる。

爆音やあたりの騒々しさで、しきりに騒いでいる馬を卸すのも大変そうだ。


「しょうがない、一応この流れに乗っておきましょう。でも少しずつ道の端に寄せてください」


 人の波の中で向きを変えるのも大変そうだったものの、何とか体勢を立て直し馬車はゆるゆると進む。


「レオン、今のって魔力が…」


 セーネはエルフらしく原因が分かったようだ。


「わかっています。でもひとまずはこの人の波から抜けましょう」




 しばらくして、馬車は何とか人の波から抜け出す。

人々は行き先をどこと決めずにひたすら逃げ回っている。

大体が爆音がした辺りから背を向け、つまり町の外に向かって逃げようとする。

そんな慌てている民衆たちをしり目にあたりの様子を見る。


 いったんは離れ離れになってしまった護衛達も、この馬車に向かって揉まれながら走ってくる。

まだ全員が集まるには時間がかかるだろうが、誰もはぐれるようなことはなさそうだ。

事態は全然いい方向には動いていないものの、少しほっとしてしまう。



 そのあと少しして、道の端に止めていた馬車に護衛達が全員集まる。

ちなみに一番最後にやってきたのはカイさんで、すっかりへとへとになりながらやってきた。

カイさんは自分以外が全員馬車の周りに無事に集まっているのを見て、ほっとしたようだ。

だが周りの様子をチラッと見るとまた厳しい表情に戻る。


「それでこれはどういうことなんですか?」


「たぶん暗黒魔導王朝デスペリアスの攻撃です」


 それに驚くものと納得するものが半々。

そして何人かは無垢の戦う力を持たない民衆を襲ったことに対し、憤っている。


「騎士道精神に反している」


 苦々しげにカイさんがつぶやく。


「当然でしょう。向こうは数が少ないんですから。勝つために必死ですよ」


「それで今のは何なのだ?」


 おそらく暗黒魔導王朝の真髄ともいえる自爆魔法みたいなものだろう。

発動する前に通常ではありえない魔力の動き方をしたし、おそらく魔法によるものだろう。

魔力は通常は心臓から出て、体中をめぐるはずなのだが、今感じた魔力の動きは体中にあるすべての魔力が心臓の周りに集まり暴発をさせた感じだった。

前に図書館で読んだ本に書いてあった通りだ。

多分これこそが暗黒魔道王朝の闇だろう…



 そのことを説明すると、みんな暗黒魔道王朝がそんなことができると知らずにびっくりとした顔をする。

そもそも人を媒体にして爆発を起こすなど通常の思考では考えられないからだ。


「それはやばいな。急いで城に帰ったほうがよさそうだ」


「そうですね」


 あたりはみんな散ってしまったのか人の通りも少なくなってきている。

そのためさほど苦労せずに馬車を反対に向け、城に帰る。







 城まであともう少しというところで護衛の1人が叫ぶ。

あたりに人気はなくなりひっそりとしているため、妙にそれは目立つ。


「おい、あんなところに人がいるぜ」


 見ると、俺たちのいく道の少し先に1人の男がのろのろと歩いているのが見える。

服装からすると近隣の村から王都に出てきた男という感じがする。


「怪しくないか? 特に慌てずに歩いているなんて。騒ぎが起きているのはわかっているはずだぞ」


 思わずといった様子で誰かが声を上げる。

確かにこれだけの大騒ぎになっているのに、男に動じた様子がなく怪しい。

しかしこういうのはどこかで見たような気がするんだけどな…




 ついに男と馬車の間は走ればすぐという距離まで近づく。

男は特に自分が疑いの目をむけられているのに気が付かない様子だ。


「レオン、おかしいわよ」


 馬車の窓からその男を見ていると、隣からセーネに声をかけられる。


「さっきの爆発の前と同じ感じなの?」


「う~ん、違うわ、なんていえばいいんだろう。自然じゃないわ」


 自然じゃない…




 !!!





 操られているのか!?

確かに言われてみれば、操られている人はこんな感じだったな。

みんなにその男は操られていると言おうとする前に、また爆発の前兆を感じる。


 

「「!!!」」




 セーネと俺のみがやはり感じ取れたようだ。ってそんなことを言っている場合ではない。

急いで馬車と男の間に魔法で水の壁を作り、衝撃を消すために動く。




 まさにその通りなのだが水をたたくような音があたりに響き渡る。

そしてあたりに衝撃で散らされた水がキラキラと陽光を受け輝く。



 皆がみんな、音に及び腰になり目をつむってしまっている。

その目をつむっている彼らに飛び散った水がバシャバシャとかかる。

目を開けたくとも開けられない状況に、お互いぶつかり合うなどして混乱の艇をしてしまう。

そして誰かが呆然とつぶやく。


「何だったんだ… 水ができて赤い光が走り…」


「また爆発が起きたようです。今は僕が防ぎましたが、次も対処できるとは限りません。急いで帰りましょう」


 狐に化かされたような顔になったものの、心臓に悪いことはごめんだとばかりに急いで城まで駆け抜ける。

途中で何回か街のほうで爆音がしたものの、われ関せずとばかりに馬車を走らせていく。

帰る途中で城のほうから何が起きたのか知るために、また俺たちの護衛のために人たくさんが送られてきた。

緊張のためか、状況が悪いのがわかっているのか、かたい顔をした護衛も倍増してあたりは一気に暑苦しくなる。

そして2度目の爆発には巻き込まれることもなく、城まで帰ることができる。


 



 






 





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