魔法筆記の試験
再び、試験が終わった後やってきたケインの指示により、闘技場から移動して、魔法用の闘技場に移動する
魔法用の長方形の闘技場では、手前の人が移動するところに若い女の人が1人いるのがわかる。
どうやら初めて見る先生のようだ。
「こんにちは。皆さんとは初めてですね。A組以外の一年生の魔法を担当しているルビィナといいます。今回はよろしくお願いします」
「「「お願いします」」」
男の子は特に若い女の先生ということで、意気揚々となっていて、それを女子は冷たい目で見ている。
確かに魔法主任の先生はお世辞にも若いとは言えないし、男子生徒はフラストレーションもたまっていたのだろう。
「それでは時間も押しているので、早速試験を始めたいと思います。出席番号1番の人からお願いします」
またもや1番の人から始まる。
「あなたが…」
闘技場の魔法を放つところのギリギリまで進み、的に魔法を当てるために瞑想をする。
前回はそれなりの魔力を込めてしまったため、今回は軽く込めるだけにして、魔法の属性は被害が少なそうな水、風にする。
魔力をそこまで込めない代わりに技巧を凝らして、また一点集中しないよう全体にばらまく。
その魔法の名前は…
「ダイヤモンド・ノヴァ」
【氷属性lv0を手に入れました】
口に出してイメージした通り、的に向かい輝く氷の散弾が飛んでいく。それは的にぶつかると軽やかな音を立て、あるものは跳ね返り、あるものは入り込んで中で氷が割れることにより微細な衝撃を起こす。
辺りの気温や、入り込んだ氷の小片により、冷えて割れやすくなった的は軽い衝撃でも簡単に砕ける。
目に見えないほどの穴を無数に作り、脆くなった的は最後の一押しの衝撃で、重みを感じさせずに破壊される。
周りに破片が飛び散ることもなく、その場にストッと的の残骸が落ちる。
白い風が魔法修練所の中で吹き荒れる。
辺りは冬のようになり、吐く息も白くなるほどだ。
ダイヤモンド・ノヴァは中級の魔法を作るのと同じぐらいに大変だ。
その難しさは単純に水を氷にするために大量の魔力を必要とするからではない。
氷が空中を進むとき、的に当たる前に霧散しないようにするイメージ力に、ちょうどよく的に中った時に内部で破裂するように硬度を調整すること。的を凍らせたときの硬さと衝撃の強さを調整すること。さらには内部での破裂の際には破片が飛び散るようにすること。
様々なことを同時に考えなければ、この魔法は成功しない。
「これほどとは…」
女の先生があっけに取られて、声も出ないようなありさまだ。
周りの生徒はどれほどすごいのかわかっていないようだが、少数の者はその難しさがわかっているようだ。その少数派は小さいころから魔法に慣れ親しんだ貴族の方が多いのだが…
「おいおい、事前に的を壊すとかせこいぜ」
「ただ寒くしただけで割れるとか意味不明だ」
周りでヤジが飛ぶ中、元のところに戻る。
「今、なんで割れたの?」
ヨゼスが不思議そうに聞いている。
「よくわからないけど、氷で割ったんでしょ」
大筋はエリーが正しいことを言っている。
「そうでしょ?」
「大体そうだね」
「えっ?なんで?」
「本当にわからずやね。そんな割れたことよりも氷を作ったことの方がすごいのよ」
「そうなの?」
「そうよ。あなたがいつも苦労して作っている水なんかの数千倍大変よ。いや、ヨゼスはまだ魔法ができないんだよね?」
「うん…」
「そんな攻めるなよ。小さいころから魔法を使っていないんだから、使うのは俺たちより相当大変なはずですよ」
「そういわれればね… 悪かったわヨゼス」
「気にしていないよ」
次はエリーの出番だ。
新しい的に向かって、真っ赤な火の球を放つ。
「ファイヤーボール」
見事に的に当て、相当いい評価をもらったようだ。
順々に生徒が魔法を放つ。
できるものはたいへん少なく、オヤッと思えるのがあってもそれは貴族のようだ。
やはり体ができて、魔力を生み出す機能が未発達な平民では相当厳しいようだ。
ヨゼスもこれで武術での失点を取り返そうとするも何もできず。
また落ち込んでいる。
先ほど俺の魔法を見て、ショックを受けていた先生もみんながそこまでできないのを見て、少し自信を取り戻したようだ。
自分の教え方の方がうまいなどと言い出すも、魔法主任とは相当なアドバンテージに差があると思う。
Aクラスは大部分が平民で、教えるのも一苦労なのだ。
基礎ができている一般クラスより、できが悪いのは当然だ。
最終的に試験が終わると、魔法ができたのは40人中たった5人。
しかも全員がエリーより低いレベルにとどまっている。
ちゃっかりとマリーも魔法ができた5人の中に入っている。
全体的に暗い雰囲気のままケインに連れられ、次の筆記の試験を受けに行く。
今回の筆記の試験は前ほど難しくないらしく、配点も低いのだそうだ。
前回と全く違う配点構成のため、クラスの入れ替わりも激しいだろう。
元の教室に戻り、ケインさんが全員に紙を配る。
初めの合図に従い、全員が一斉に鉛筆を手に取って、紙を裏返して試験を始める。
試験時間は60分。
俺も試験をひっくり返すも、あまりの内容の簡単さに驚く。
小学校の3年生ぐらいで習う内容ばかりで、反射神経だけで解いていく。
みんなは筆算で一生懸命に解いているものの俺にはそんなまどろっこしいことは必要ない。
ものの10分で終わらせると、あとは突っ伏して寝る。
~50分後~
「おいっ、起きろ」
頭を小突かれ、起こされる。
どうやら試験が終わったようだ。
そのままケインに解答用紙を渡す。
「どうやらこれは私の勝ちね!!」
「なんで?」
「だって、最初の10分であきらめたじゃない。」
「全部終わりましたよ」
「そんなはずないじゃない。相当難しいわよ。私も8割ほどしか終わらなかったけど」
「そうですか…」
「僕は9割行ったよ」
「ヨゼスはそれしかないんだから、ここで取らなくてどうするの」
「そうだね…」
どうやらこのレベルでも相当難しいようだ。
周りでもあちこちで悲鳴が上がっている。
どうやら国一番のエリートでも日本の義務教育のレベルは難しいようだ。
今回は前回のように難しくもないし、たぶん満点だろう。
試験の結果は1週間後にわかるのだが、今からその結果が返ってくるのが待ち遠しい。




