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昔話


 魔力を使い切り、寝込み、回復させることを続けること3か月。

魔力は当初の10倍程に増大した。

魔力は鉄は熱いうちに打てというように、個人差はあるものの小さい時に訓練すればするほどに増大し、質は高まり、魔力を生み出す器官は柔らかくほぐれ、そのあとの成長力もよくなる。

 

 


 3か月も言葉を聞いていると、だんだんわかってくるようになる。

この世界の言葉としては、英語の言語構成に近いだろう。

まず初めに構文を状況から判断予測し、形の予想をする。

それがうすぼんやりとわかってきたら次は単語を予想し、語彙力の増強に勤める。

そうするうちに見る見ると話す言葉が分かるようになっていく。

日本で外国語を学ぼうとしても、こんなすぐにはわかるようにはならない。

たぶん大人(高校生)の精神に柔らかい赤ちゃんの脳を持っているからこそだろう。

でもしゃべることはしない。

まだ舌が固くしゃべりにくいのだ。誰もいないときに試したが、赤ちゃんがはじめにしゃべる言葉がママじゃなくて、パパというのもうなずける気がする。破裂する音のため言うのが楽なのだ。



 さて、言語理解ができるようになり、情報収集していると分かったことがいくつかある。

まずメイドさんの名前はエルザというらしい。自分で言っていたから確かなはずだ。

子供に対して姓までいうのはあまりないが、彼女はたぶん平民だろう。彼女曰く領地から僕の世話のために引っ張って来られた商人の家の娘さんのようだ。



 うちに今いるのは8歳の次男クラレンスに、6歳の長女マーセイディズ、それに母親エレノーラ、のみだそうだ。


 父のレイモンドは王都にいて、王宮勤めを、長男のシルヴェストルは学園都市で学校に行っているようだ。

俺は彼らのうちの誰とも会ったことがない。

いったいどんな顔立ちを彼らがしているのか、興味がある。

仲良くできるといいのだが…






 最近はエルザにお願いして(ぐずるorウソ泣き)をして本を読んでもらっている。

実はエルザに今読んでもらっているのは絵本だ。

本当のことを言うと、歴史書、地理辞典みたいなものを読みたいのだが、もっと大きくなっても子供が世界情勢について尋ねるにはおかしい。

しかしいずれは覚えないといけないし、いつかは通る道なのだ。頭が柔らかいうちに覚える機会が欲しい。



 今、エルザの膝の上にのせてもらって絵本を読んでもらっている。

もう首も座っているのだ。 明瞭にきれいに紡ぎだされる音に意識を傾ける。

 






 昔、昔あるところにとても悪い魔王がいました。

その魔王の名前はガルガンチュアと言いました。

彼は暗黒龍バルボロス、4天王、10万にも及ぶ魔族を引き連れ人類を滅亡させようとしました。

魔王軍の圧倒的な強さに人族はほとんどの土地を奪われました。

人類は追い詰められ、最後の日を迎えようとしていました。

そしてそこに光の勇者たちが現れました。

彼らの名前はミナト クホウイン、シンジ カワグチ、マイ フルキ、ユカリ キサラギという。

彼らは滅亡寸前であった人族をまとめ上げ魔族を追い戻した。

魔王城で魔王と最後の決戦を行った。

闘いは一週間続き、山は砕け、谷ができ、砂漠ができ、水没し、雷が降り、ありとあらゆる天災が起きた。

 一週間後ついに日の光が差し込むと同時に勇者の剣が魔王の心臓を貫き、闘いは終わった。

人族は喜びに包まれた。

盛大なパーティーが城で開かれ、勇者たちと王子、王女の婚約が発表され、めでたく結婚した。

めでたしめでたし。





 これって日本の人だよな。 転生者なのかな?


 「あらあらまぁまぁ、こんなに真剣になって。楽しめましたか?こんな英雄にレオン様もなれたらいいですねぇ」

 

 エルザが優しく微笑む。


「赤ちゃんが起きるにはもう遅い時間ですよ。おやすみなさい。良い夢を!」


 エルザは扉を開け出て行った。

 

 布団にくるまれうとうとしながら考えた。


 (転生者は今回初めてだと神様が言っていたするとこれは召喚か?……zzz)






 そして生まれてから一年後、よちよち歩きでも怪しまれず、成長が早い子供と思われるぐらいになった。

そして、この一年で魔力は圧倒的なまでに増えた。魔力を毎日使い切り、回復を繰り返してるうちに新しいスキルが取れた。


魔力回復速度uplv1:魔力の回復が若干早くなる。

 

 このスキルでかなり回転効率が良くなる。

さらに魔力の量が増えていく…




 さて、家族なのだが僕が生まれてから、長男と父は一度も帰らず、次男、長女は顔を見たことすらない。

母親が3~4回ほど訪れたのみ。

いずれも、貴族の務めを果たしなさいと言われたこっきり。

それを恨んでではないが、親の務めを果たしてほしい。

母は顔も汚くないにしても、欲ににっごた目をして、醜い。

部屋に入るのはエルザのほか2、3人のメイドのみ。

(俺って嫌われているのかな? 家族はほとんど会いに来ないし、メイドもかなり、びくついているし。

優しいのはエルザのみ。グスン泣けてきた。)


 ここにいては情報もほとんど入ってこない。

情報を得るためにも本を読みたい。

エルザに父親の書斎に連れて行ってもらおう。

貴族だし、蔵書だってあるだろう。

そう思いセーネにお願いをする。


「ねぇ エルザ。本を読みたい。本を置いてあるところに連れってて。」


「私が絵本を持ってきてあげますよ。」


 くそこうなったら破れかぶれだ。

恥ずかしいけれども。


「お願い。連れっててくれないと嫌!!」


 高校生の精神に赤ちゃん言葉はかなり来る。


「う~ん わかりました。一度奥様に聞いてみましょう。」


「うんわかった。」


 先導するエルザよちよち歩きで必死についていく。

赤ちゃんになると頭の比率が大きくてかなり歩きにくい。

さすがは貴族の家。とんでもなく大きい。

歩幅も小さいため追いかけるのも大変だ。


 しばらく歩き、エルザが扉の前に立ちノックをした。

彼女の顔も心なしか少し強張っている。


「どうぞ入りなさい。」


 扉を開け中に入る。

金ぴかの置物にゴテゴテした宝石、むせかえるような甘ったるい匂い。


「エルザどうしたの?」


「奥様、レオン様が本を読みたがりなさってます。旦那様の書斎に入る許可をお願いできますか?」


「レオン、なぜ本を読みたいの?」


「貴族の務めとして必要なことかと思い、許可をもらいに来ました。」


 貴族になるつもりは全くない。そんなのは知ったこったない。

若干こちらの顔色をうかがってきたが、何もないような顔をして無視をする。


「よいでしょう。ただし決して本を汚してはいけません。」


 机の引き出しをあさり、鍵を渡してくる。

意外にも簡単にいった。

しかし鍵を見るとこの世界にしてはずいぶんと複雑だ。

 


 父親の書斎はすぐちかくにあった。

エルザがカギを開けると、本のいい匂いがする。

中に入るとたくさんの本が棚に並べてあった。


「ローラ、もう大丈夫。休憩してていいよ。」


 かなり渋るが、何とか出てもらう。去り際に


「お願いですから、汚さないでください」


 と言ってきた。


 かなり心配性だと思うが気を付けよう。

しかし出て行ってもらわないと困るのだ。

なぜならほんの一歳児が地理、歴史の本を読んでたらおかしいだろうから。


 僕の調べたい本は大きめの辞書のようなため、一歳児でも取れる下の方にあった。

あくせく引っ張り出して気づいた。

なんと本に読んだ形跡がないのだ。

貴族の見栄っ張りで買ったのだろう。読みたい人だっているだろうにもったいない…



 さて、読むか!!



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