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日常

戻りました。

 激しい金属と金属とがぶつかり合う音が、学園の中の闘技場から聞こえてくる。

絶え間なく続いていくそれはいつやむかもわからない。

土が踏みしめられ、キュッと鳴り、その直後に激しい音があたりに響き渡る。

闘技場にもし入るものがいたら、思わずその熱気に驚きの顔をしただろう。



 直径50mほどに及ぶ真円の闘技場の真ん中のあたりに、2つのくっついたり、離れたりする影があるのが見て取れる。

1人は長身ですらりとした体を持つ男だ。

引き締まった肉体から放たれる剣は並みの人では視認することもできないだろう。

剣を振るたびに、彼の長い輝く銀髪の髪がともに揺れ、辺りを明るくしているかのようだ。

それに相対するもう1人の影はそこまで大きくもない。

いや、体形から見るに子供と言った方がふさわしいぐらいだろう。

深い青色をした髪を持つその子供の手には、分不相応とすら言えるほどの大きさのバルディッシュが両手に握られている。

彼の黒い学生服に赤い縁取りのついた漆黒のマントは武器を持つにはとても似合わない恰好だ。

どちらにもこの場には似合わないような優雅さを持っていて、見る人に強く印象付けるだろう。




 この学園の制服を着た生徒は無言の殺気を背後から立ち上らせながら、相手にバルディッシュを振るう。

相手はそれにまともに打ち合うことはせず、バルディッシュが通り過ぎた後に攻撃に転ずる。

生徒はこれにふるっていないもう片方のバルディッシュでこれを受け、辺りに高い音が響き渡る。

幾たびにも繰り返されるこの攻防は、互角に見え、両者に決定的な違いを与えている。

生徒はついに防御をしたバルディッシュごと弾き飛ばされ、回り込まれたところで首筋に剣を突き付けられる。


「降参だ」


 渋い顔をしながら、負けを認める。

今は武術の時間でハロルドさんと打ち合っていたのだが、またもや惨敗してしまう。


「いえいえ、レオンこそとても強いですよ。だんだん差が縮まっていますよ」


 嘘を言っているのか本当を言っているのかわからない感じで返される。


「全然差が縮まっていないように感じられるのですが…」


「そんなことありませんよ。私は大人ですから」


 ふざけた答えにジト目で見る。


「ほとんどの大人にだったら勝てますよ」


「慢心しないことですよ。弱い人が強い人を負かすこともありますから」


「覚えておきます」


 闘技場の端に座り、水を飲みながら、先ほどの戦闘についての改善点をもらう。

最もハロルドが言うには、俺の技術はほぼ完ぺきなものの、単純に力がないということらしい。

とっさに鑑定で自分を鑑定するもののそこまで弱いとも思えない。

種族レベルもさらに上がって、レベル52に。

暗殺者たちとの実戦経験で前より格段に強くなったはずなのだ。

種族レベル52とは俺がレベル1の時の52倍の強さなのだ。それほどの身体能力で単純に力がないといわれるような時が来るだろうとは…

今はまだ10歳でそこまで体が発達していないものの、100m走ではおよそ15秒程度で走れるだろう。

さらにその52倍。

つまり100m0.3秒で走れ、世界記録を大幅に更新することができるのだ。

既に自分で化け物になった気分である。

でもハロルドの方が化け物であるかもしれないと思い直す。

自分の持っているスキルをすべて使っても無理なのだ。

未来視はなぜか嘘の情報を俺に与えて、幸運は正確な攻撃でたまたまという言葉を俺の辞書から消し去り、直感は常になって鳴っているため使い物にならず、魔法スキルは使用禁止のため使えず、嗅覚上昇は鉄の匂い以外嗅ぎ取れず、斧術は…


「もうすぐテストですね」


「そういえばそうでしたね」


 ほかのみんなもテストに向かい猛勉強を始めている。




「テスト形式は入学試験と同じですか?」


「とりあえず低学年の間はそうですね」


「あれよりも難しくなっているとかなりまずいですね」


「まさか、入学試験が難しいだけで、だいぶレベルは下がりますよ」


「よかったです。それなら大丈夫です」


「まぁレオンだったら一生主席を奪われることがないですよ。他の生徒がかわいそうなレベルです」


「過分なお褒め言葉です」


「いやいや、歴代最高を軽く上回ったくせに何を言っているのです?」


「たまたま他がダメだっただけではないでしょうか?」


「これでも学園は国中のエリートを集めているのですが…」


 あきれたような声で言われる。

確かにこの学園は前世の東大に入ることを軽く上回る難易度である。

しかし学園では武術でハロルドさんにかなわない以外は特に負けているものはないしな。



 武術の時間が終わった後は図書館に閉じこもり、知識の吸収に努めている。

今回暗黒魔導王朝デスペリアスが使ってきている精神魔法について調べようとするも、乗っているのは概要のみで、詳しいものはここの図書館にはないか、もしくは禁書室に保管されているものと思われる。

精神魔法は闇の方向の魔法として扱われていて、あまり良い扱いは受けていない。

確かに人の根本のところを改ざんしてしまうので当然ともいえるかもしれない。

このような暗黒の魔法としては他にも、人を生贄に使用して、強大な魔法の媒体にするものや、人を闇の力で暗黒の生物に変えるものがあるらしい。

今相手はこのような魔法は使っていないが、追い詰められた時にどう行動するかわからないので、警戒は必要だろう。

国がこのような情報をどこまで把握しているか分からないが、おそらく今回の戦の進め方を見るに、このようなことができるとは夢想だにしていないに違いない。

注意を促してもいいのだが、一介の学生の言うことに国が耳を傾けるかどうか甚だ疑問だ。

特に言っても変わらないだろう。


 このように決まりきった一日を7回繰り返すうちについにテストの日がやってくる。








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