操り人形からの解放
朝いつも起きる時間に目が覚める。
あの後ローブの増援もなくぐっすりと眠ることができた。
襲撃されなかったことにほっとしながら、食堂へと向かう。
今はメイドさんも料理人も全員が気絶しているため、俺がすべて作らないといけなくなる。
幸い洗脳されたのもすぐ最近のことだったので、材料も腐らずにきれいに保存されている。
適当に台所にある材料庫から野菜と燻製肉を出して、調理をする。
最も料理などほとんどやったことがないので、燻製肉をはじめに炒め、油を出してから野菜も加える簡単な料理になる。
燻製肉のいい香りが台所中に広がる。
「おぅ、レオンですか。随分いい匂いがしますね」
「はい誰のいないので、簡単な野菜炒めを」
「そうですか。私は料理が全然だめでして、任せっきりになって申し訳ありません」
「気にしないでください」
席に着き、2人っきりで朝食をとる。
「うまいな」
「ありがとうございます」
黙々と食べ、肉野菜炒めの山は徐々に小さくなる。
朝ごはんもすべて食べ終わり、カインさんが言ってくる。
「よし、これが終わったら洗脳されたものを起こすぞ」
ご飯を食べ終わった後で気絶させた人たちを起こさないといけないのだ。
長くめんどくさい作業になるが逃れることはできない。
「起きてくれ」
寝ているユウエルの肩をゆすり、起こそうとする。
いくら揺さぶろうともなかなか起きる気配はない。
一流の戦士である彼ならばどのような時でも人が近づいたら一瞬で目覚めるのに、これほど揺り起こしても起きないというのは珍しい。
「もう殴ればいい。そのままだと起きないだろう」
確かにこのままだとらちが明かないので物理的に起こすことに決める。
バキッ!!
胸のあたりを殴る。
肋骨が2,3本砕けるぐらい強くやったのでこれで起きなければどうしようもない。
「うがっ」
思いっきりうめき叫び声をあげるユウエル。
「起きましたか?」
「気持ちよく寝ていたのに何だよ。あれっ?なんでレオンがここにいるんだ?」
「ようやく起きましたか?」
「俺はなんで外で寝ていたんだ?いや、あれおかしいな全然記憶がないな」
「洗脳をされていたんですよ」
「俺がか?」
「そうです。暗黒魔導王朝の人に洗脳されていたんですよ」
「まじか、それで俺はお前に襲い掛かったりしたのか?」
「まぁそうですね」
「それは悪かった」頭を下げてくる。
「それよりも、起こすのを手伝ってくれませんか?洗脳されたことは不可避ですし特に気にしていません」
「そうか・・・それじゃ起こすか」
「軽いと起きないので注意してください」
「はいよ」
次から次へと気絶している人を起こし状況を説明する。
誰もが釈然としない顔をするものの俺の言うこと以外に説明がつかないため一応は納得した顔をする。
起こされた人がまた気絶している人を起こし、どんどん気を取り戻していく。
予想していたよりも短い時間で全員が復帰をする。
「説明をしてほしい」
冒険者のうちの1人が声を上げる。
俺も頃時だと思っていたので、前に説明するために出る。
「なんでレオンがここにいるんだ?」
「確か学園へといったんじゃないのか」
みんなそれぞれが疑問を口にする。
「こんにちは皆さん久しぶりです」
おっ!!
なんとなく空気がどよめく。
「皆さんはたった今まで洗脳されていました」
「そんな!! 誰が洗脳をしたんだ?」
「暗黒魔導王朝です。皆さん知っていらっしゃるように今彼らと戦争をしています。あなた方を洗脳したのが敵の手なのです」
あたりがざわめき、暗黒魔導王朝に対する反感の声が大きくなる。
「あなたたちは利用されかけていたのでです。私はあなた方の反乱を止めるために国から派遣されてきました」
「そうだったのか。それでこれからどうするんだ?」
「今の私は暗黒魔導王朝に恨まれているので、皆さんに迷惑をかけないように少しでも早くここを出たいと思います」
「そんな!! 今回俺たちが迷惑をかけた分次は俺たちがまもってやる」
「しかし、また洗脳をされては大変です。今回のことはいつか私が困ったときに助けてください」
「そうかわかった。だが今夜はまだ行かないでくれ。歓迎の宴をしたい」
「わかりました。まだ大丈夫でしょうから。でもわざわざ僕のためにありがとうございます」
「気にすんな。レオンのおかげで助かったんだ」
町のみんなに感謝の言葉を言われ、頭を下げられる。
宴もそこまで盛大にならず、簡素なものが行われる。
これでも一応は戦時中で大っぴらに騒いで、いざという時に対処できないと困るのだ。
酒でぐでんぐでんになる人もおらず、軽く気分を高揚させるだけにとどめる。
明日に響かない程度に早めにお開きとなる。
翌朝町中の人に見送られ、また王都に戻る。
「気をつけて帰れよ」
「気を付けてくださいね」お見送り時に2人に注意をされる
確かに行きと違い馬車がないため、時間がかかる上に暗殺者に襲われる可能性があるためはるかに厳しい旅となる。
軽く1,2週間分の食料や雑貨をアイテムボックスに詰め、準備も完璧だ。
「それでは皆さん。ありがとうございます。また会いましょう」
「こちらこそありがとう。レオンのおかげで助かったぜ」
ワイワイガヤガヤと見送られる。
町が見えなくなるまで、手を振り続ける。
ついに町が見えなくなり手を振るのをやめる。
久しぶりの故郷もあっという間の滞在だった。
今回は俺は何とか対処できたが、ほかのところは大丈夫何だろうか?
あのカインさんでさ正気を失った群衆の相手は手間取るほどなのだ。
しかしカインさんと違い、味方がたくさんいるので大丈夫だと信じたい。
ただ安易な手、つまり皆殺しなどに走らなければいいのだが。
歩いて2,3日は魔物にも、敵襲にも会うことなく無事に進む。
4日目に朝食をとっているとふとこちらに視線が向けられるのを感じられる。
「誰だ?」
茂みから見慣れた黒ローブ姿の男が出てくる。
「1人か・・・」
「・・・」
するといきなり魔法を放ってくる。
急いでその場から離れる。
「いきなり何をするんだ」
「死ね」
殺意を全身から立ち上らせ、今にもとびかからんとする。
「あまり殺したくはなかったのだが」
戦いがまた始まる!!




