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故郷

 生まれ故郷の見慣れた風景はこんな短い期間で変わるわけもなく、懐かしい景色そのままだ。

しかし住んでいる人はそうではない。

町の建物はところどころ崩れたり、壁にひびが入ったりもしている。

町の市街地は人気は少なく、いや見渡す限りでは人っ子一人いない。

しかし、家の中に押入ると、朝ごはんの具がまだ残っている鍋、皿によそわれた食べかけのごはんなど、生活感があり、ついさっきまで住んでいたであろうことがうかがえる。

「一体どこに行ったんだ?ここは辺境だし、魔法使いがくるのがたぶん遅かったから暴動は起きなかったのだが、どうやら遅すぎたようだな」

返事するものが誰もいないのをわかりつぶやく。



 そのまま町の中心部にある、俺の生家まで歩いていく。

町はどこも荒れ放題になって、元の姿を取り戻すのに何年もかかりそうなありさまだ。

ザクッザクッと石畳がボロボロになり、はげて元の土が見える道をずっと進んでいく。

かつて、数多くの冒険者が任務に行き、武具屋さんの槌をふるい真っ赤になった鉄を打つ音、娼婦の道を歩いている人に嬌声を上げるさま。

あれほどにぎやかな街がひっそりと静まりかええている。

人の世のはかないことをうつらうつら考えていると、かすかに風に乗って聞きなれた剣の打ち合う音が聞こえてくる。

この町に帰って初めての自分以外から発せられた音だ。

手掛かりになるものがあるかもしれないと急いで音源まで向かう。



どうやら音は俺の家から聞こえてくるようだ。

かすかに家が見えるぐらいまで近づくと、家の周りに驚くほど大勢の人がいるのがわかる。

どうやら打ち合っている音は1つしか聞こえないため、あの大勢の中で争っているのはたった1

人であると考えられる。






 近くに行ってわかることは1人の男をこの町のすべての人間が襲い掛かっているということだ。

ただ、1人で襲われている方が味方とは限らないので、物陰から様子をうかがう。

「お前たち、正気に戻らないか。気を持て。飲まれるな!!」

襲われている方が大声を上げる。

よく見ると確かに、襲っている方は目が濁り正気を失っているようだ。

これは襲われている方が、正しいな。

悠長に見ている場合ではなくて救出に向かうべきだな。

急いで襲われている人のところまで空中に跳躍して向かう。 

「大丈夫ですか?救援に来ました」

「おっ、レオンか久しぶりだな」

「!! カインさんですか」

「ああそうだ」

確かにその人物の顔を見れば渋い、30代前半の好男児のカインさんだった。

「えっと、邪魔だったでしょうか?」

「そんなことはない。来てくれて助かるよ」

「でも、全然疲れているように見えませんよ?」

「雑魚だから疲れるまでもないさ。ただ、あまりにも脆いから傷つけないように気絶させるのが大変なんだ。普段ならすぐ気絶するはずの攻撃を当ててもしぶとくて気絶しないから、ほとほと嫌気はさしていたよ」

操られているから生存本能が働かず、物理的に動かなくなるまで体を壊さないといけないのか。

いやな仕事だ。

「カインさん物理的に破壊した方が早いですよ」

「そうなんだがな・・・」

「ここでボロボロにしてしまうとあとで響いてしまいそうなんだけどな」

「それももっともですね」

仕方ないので気を失わせるだけに済ませ、対処していく。





 後から後から襲い掛かってくる民衆たち。

そこら辺の一般人なら余裕で対処できるものの冒険者に囲まれるとそれなりにつらい。

無表情で切りかかってくる人たちをさばいていく。

「カインさんはいつから戦っていたのですか?」

「朝からだな」

「もう10時間以上戦っているんですね」

「そんなに経っていたのか。全然気が付かなかった」

無表情で気合も上げずに襲ってくる民衆はゾンビものみたいな恐怖がある。

当身で次から次へと気絶させるうちに次第に立っている人も少なくなる。

「そろそろ終わりだな。レオンのおかげで効率がだいぶ上がったぞ。もし来てくれなかったら明日までかかっていたかもな」

そういう間も次から次へと襲ってくる。

「お!! 久しぶりの師弟対面だな」

意識をまた戦いに戻すと、ちょうど目の前にユウエルが無表情で立っていた。

「ユウエルさん!! 気を確かにしてください」

「無駄だ。気絶させないとだめだぞ」

「そんな」

「何が、そんな、だ。ぼこぼこにしてやれ」

ひどいことを平気で言ってくる。

「いいじゃないか。久しぶりの師匠対弟子の対決だ」

「わかりました。それじゃあ行きますよ」

「あぁ来い」

「「え!!」」

俺たちの驚愕をよそに切りかかってくる。

子供の時はあれほど大きな壁だったものの、俺も成長しているのかそこまで恐怖を感じない。

無茶苦茶早く感じた剣もしっかりと目にとらえられるまでになっている。

いくらでもすきを見つけられるようになっている。



「ありがとう。師匠のおかげでここまでこれた」

一瞬彼の顔がニカって笑ったように見えた。

それとも幻影だったのだろうか・・・

ユウエルの剣をはじき、返す剣の峰で鳩尾をつく。

ミシミシと骨のきしむ音がして、その場に崩れ落ちるユウエル。

彼の顔は満足そうに笑っていた。




 「いや~、感動のお別れだね」

「殺していません」

「美しいよね。師匠と弟子の熱い絆」

さらっと流される。

既に日が暮れ、夜になっている。

あの後残った相手もすべて掃討し、屋敷の中で休息をとっている。

「結局何があったんだ?」

「暗黒魔導王朝の精神錯乱系の魔法で洗脳されたようです。今国中で反乱がおこっているんです」

「そうなのか。辺境にいると全然情報が来なくてな。レオンが英雄になったていうことは知っていたが」

「そうですか。とても私にそぐわないものですがね」

「そんなことはないぞ。お前にこそふさわしい称号だと思うぞ」

【称号:英雄を手に入れました】

このタイミングでか。

カインさんが言ったことと何か関係あるのかな。

例えば一番尊敬している人に認めてもらうとか。

称号の獲得条件はいまいちよくわからない。

「なんでカインさんは洗脳されなかったんですか?」

「そりゃ精神耐s・・・いや精神をきっちり保っていたからだな」

途中で慌ててごまかしている。

それにしてもカインさんとハロルドって、全然似ていないのにどこか似ているんだよな。

共通点は2人とも強いっていうことぐらいだけど。

「とりあえずここでの鎮圧は終わりだな。もう帰るのか?」

「まさか外でつぶれている人たちの介抱をしてからでないと帰れませんよ」

「そうか。少しの間だけどよろしくな」

「よろしくお願いします」

とりあえず大半の仕事は終わったけど、まだ王都には帰らない。

様々なやらないといけないことがあるからだ。



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