謁見
「すべてのお前の計算だったんじゃないのか?」
こっそりとケインが耳打ちをしてくる。
「何がですか?特に何も企んではいませんでしたが」
俺たちはいま王城の中を歩いている。
廊下はくるぶしまで埋まるほどのふわふわのじゅうたんで歩きにくく、横には様々な芸術品で一杯だ。
「何がって、今回の脱出だよ。逃げてきた生徒の人数とかいろいろなことだよ」
「さぁ、どうでしょう。多少操作をしましたけどね」
「具体的には?」
「そんな大したことではありません。逃げてきた人数の割合を若干調整しただけですよ」
「なるほど、だから貴族が多いのか」
「えぇ、貴族4に平民6になるぐらいに調整しました」
「ふ~ん。理由はよくわからないが」
豪奢な王城の中を衛兵たちにに連れられ、俺たち125人は謁見の間まで案内される。
今の俺たちは長い幽閉生活に逃避行とで薄汚れてしまい、最もこの場にそぐわない格好だ。
そして王城を初めて訪れる平民たちはあまりの豪華さにあたりをきょろきょろと見まわし、落ち着かない様子だ。
「もうすぐ謁見の間だ。くれぐれも無礼の無いように」
衛兵がひときわ立派な扉の前につくと、入る前に注意を促してくる。
俺たちは黙ってうなづく。
「それではいいな」
そういうと扉を開ける。
中にはたくさんの豪華な服装で着飾った人たちで埋め尽くされていた。
広い謁見室には興味深そうにこちらを見ているものもいれば、憔悴しきった顔でこちらをぎょろぎょろと見てくるものもいる。
基本的に扉に近い貴族ほど質素な服装をしていて奥へ行けば行くほど豪華な服を着た人が大きくなる。
ちなみに俺の父親は真ん中あたりに座っている。
居並ぶ貴族たちは謁見室の両端に設置された席についている。
そして謁見室の真ん中は何も置かれず、奥まで見通せるようになっている。
俺たちは真ん中あたりまで進み、そこで面を伏せ、片膝をつき忠誠の姿勢をとる。
「よい、面を上げることを許す。とくと顔を見せよ。われはミナス・アルディア・ローレンシアだ」
一国の主としては声が高く、威厳もあまりない。
キンキンとしていてどこか口調に媚びるような感じがする。
これがエリザベスの父か…
偉そうにふんぞり返っているがあまり覇気が感じられない。
「エリー、無事か?」
頬も緩みっぱなしになって、娘のことがとてもかわいいようだ。
「はい、お父様」
若干声が嫌そうな感じがする。
嫌いというわけではないのだろうが、めんどくさそうな雰囲気を感じられる。
娘は父親を嫌いやすいというが、これがそうなのだろう。
「怪我はなかったか?私の大事なエリーちゃん」
若干引くほどの溺愛ぶりだ。
体型としては小太りで、あまり背は高くないようだ。
顔はあまりエリザベスと似ていない。
エリザベスはどちらかというと母親の方に似ているのだろう。
偉そうにしててもかわいげはあるからな。
「王、次へと進めましょう」
「ん?そうか。では頼む」
王の隣にいる人が進言をする。
服や態度からもそれなりの地位の人であると分かる。
体格もよく、年は壮年ぐらいだろう。
立っているのも2番目の上座であり、宰相かそれに準ずる位だろう。
若干くたびれた表情で次へと進める宰相らしき人。
「このたびは誠に苦労を掛けたな。今回のことを予測できなかった国からも詫びよう」
誰の口からも否定的な意見も特に出ることなく、全員うっそりと頭を下げる。
「今回は暗黒魔導王朝デスペリアスの手によるものだ。奴らがお前たちの身代金を要求したから確かなことだ」
驚きの声が生徒たちの間に巻き起こる。
誰も彼らが暗黒魔導王朝のものだと予測していなかったようだ。
誰かが思わずといった風に漏らす。
「そんな!! 特にあそことは仲が悪くなかったはずです」
「口を慎め!! 小僧!!」
とんでもない覇気を宰相が発揮する。
腐っても国力世界第2位の国のほぼ最高権力者だ。
発言した生徒もそうでないものも一瞬で気おされる。
そこで宰相もやりすぎたと思ったのか、フッとため息をつく。
「最もその疑問は当然だと思う。だがな小僧。この世はきれいごとじゃ回らないんだ。力ないものは当然蹂躙され悲惨な目に合う。百も承知だと思うがな」
確かにその通りだ。
「お前の言っていたことが当たったな」
ケインが隣から小声でつぶやいてくる。
小声でコソコソと話しているうちにどんどん話は進んでいく。
一段と壇上にいる宰相の声が大きくなる。
「そこでだ、我々はの意見を参考に暗黒魔導王朝デスペリアスと後日戦争をすることにする」
生徒たちや、横に居並ぶ貴族からもどよめきの声が上がる。
「まじかよ、冗談じゃないぜ」
あちこちから不満の声が上がるがあまり大きくはない。
誰もうちの国が負けるとは思っていないのだろう。
だがそれでも宰相の顔は苦り切ったままだ。
おそらく大体の未来は予測しているのだろう。
次にいうことは俺を祭り上げることだろうな。
別にうぬぼれているわけではない。
今回不利に追い込まれたこちらとしては手っ取り早く、英雄を作り人気を取る傾向があるし、対外的にも全然影響のないことを示さなければならない。また俺の行動も祭り上げるのにはこれとないほどだ。
「さて、今回の救出に多大な貢献をしたというレオン・レンフィールド君はどなたかな?」
みんなの視線がサッと俺のところに集まる。
「ほう、君がレオン君か」
「はい」
何やら、満足そうにうなづき全身をなめるように見てくる。
「フムフム、これはいいな…」
何やらごにょごにょとつぶやくと俺に向かって
「きみは英雄になる気はあるかい?」
えらく直接的な聞き方をしてくる。
「えぇ、この名を好きなように使ってください」
一瞬鼻白んだようだが、一番欲しい回答だったようでニコニコになり、その準備を進めるといってくる。
戦争に必要なのは象徴。
いくらこの国が嫌いでも、一応はこの国に生まれたのだから協力はする。
いつの時代もプロバガンダ活動は大変だ…
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