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魔法の授業

「魔法ってどんな先生がくるんだろうね?」


 後ろのお姫様が聞いてくる。


「魔術主任の先生だって聞いたよ。A組の魔法はどの学年も魔法主任が担当するって言っていたから」


 隣のヨゼスが言う。

ヨゼスはいつの間にか情報を集めていて、知らせてくれることがある。

知らぬ間に恐ろしいほどの情報網を作り上げている。

情報の価値が正しく認識されていない文明が未発達の時代にこれほどその価値をわかっている人は珍しい。

どうもこの世界の人は実際の力に目を向けがちで、情報の力というものを侮っている。

時として、情報はただの力よりはるかに強いものなのに。

ヨゼスは貴族でもない平民。

それがこれほど頭がいいとは思わなかった。

試験で、武術でほぼ0点なのに筆記のみでこれほど上位に入るとは恐れ入るほどである。

一度も聞いたことがないものすら推察をして予測する。

天才というのはこういうものだろう。

それでも俺の方が圧倒的に頭はいいのだが…




 この学園では授業と授業の間は30分も取られている。

一回の授業も一時間半と長く、日本みたいにこっそり寝て時間をつぶすこともできず、ひたすら体を使い続けるのだ。毎日体育が半分ぐらいあるのと一緒だ。

ハッキリ言ってとてもしんどい。

毎回毎回ボロボロに傷だらけになりながら受けるのだ。

エリザベスやヨゼスと時間をつぶしていると先生が入ってくる。

試験の時や学園長の部屋であった時の人だ。

名前はなんていったのか…

忘れてしまった…

ハロルドさんの印象が強すぎて…


「私はキャサリンです。これから一年間よろしくお願いします」


 あぁ、そうだった…


「「「よろしくお願いします」」」


 元気いっぱいに返していて無邪気なことだ。

これが高校生ぐらいになるとけだるげになり、ほとんど返事を返してくれなくなるのだ。


「それでは皆さん。魔法修練所へ移動しましょう」


 みんなの後ろをついて行く。

魔法修練所とは闘技場と違い、円形ではなく長方形の形をした建物だ。

一方に人の立つ場所があり、その反対側に魔法を当てるための的がある。

建物全体に魔法のダメージを軽減するシステムが組み込まれているそうだがその反面物理には弱いらしい。




「ここが魔法修練所です。ここで皆さんに魔法を使ってもらいます」


 そこにあったのは横20m縦100mほどの大型施設だった。

これほどのものを作るのは相当大変みたいで、学園にあるのは4つのみだそうだ。


「どうしよう、魔法って僕に使えるのかな?」


 隣のヨゼスが不安そうに聞いてくる。


「たぶん大丈夫じゃない」


 簡単に答えるお姫様。

しかし魔法を使えるのは子供のころから英才教育を施された貴族のみ。

10歳では習うのに遅すぎで、大したものはつかえないのだ。

つまり、絶対の魔力量が足りないのだ。

俺は例外としても他の貴族は大体7~8歳に勉強し始めるのだ。

魔力が増えるには年齢の1桁か2桁かが重要になるのだ。

それによって、後々の伸びも変わってくるのだ。




 「皆さん、始める前に一言言っておきます。魔法は平民が使えるかどうかは半々です。使えなくても気を落とさないでください。ただし遅くとも半年後には魔法を使えるものと使えないものとに分ける選抜試験を行います。慢心せずに学んでください」


 あたりの空気が一気に引き締まる。

魔法を使えるかどうかは一種のステータスにもなるのだ。

ふざけていたものも顔を引き締め一言一句も聞き逃すまいとしている。


「それではレオン。魔法の発動について説明しなさい」


 俺っ!?

あほ10人のせいでまだ本当にできるのか疑われているんだぞ。


「あなた、ガツンとやりなさいよ」


「ほんと、うるさいな」


 何人かはこちらを見て頬を染めてるものもいるが、大半の目は猜疑心が残されたままだ。

一体いつになったら認めてもらえるのか…

それはともかく今は答えることが優先だ。

先生の方へと向き直り答える。


「魔法とは、魔力をもとに現象を想像力による発現を引き起こすものです」


「ええ、まさにその通りです」


 一部は理解したものもいたようだが大半はキョトンとしたした顔だ。

概念的なものなので、一度もやったことのないものには理解しづらいのだろう。

さすがヨゼスは理解をしているようでワクワクが隠しきれないようだ。


「それでは魔力を流し込んでみますので、感じ取ってください。それでは私の前に並んでください」


 次から次へと駆け寄って並び始める。


「エリザベスは魔法を使えるの?」


「馬鹿にしないで!」


 やはり王族みたいだし、相当使えるらしい。


「並ばなくていいんだよね」


「当然よ。今更。さっさと次いってほしいわね」


 それには同感だ。

俺もすでに生後1週間でマスターしたことだしな。

あるくことのように魔力循環などできる。

列を見ると次から次へと消化されているようだが誰1人として感じられるものがいないようだ。


「だめだったよ」


 ヨゼスがしょんぼりしながら戻ってくる。


「今、感じ取れた人はいなかったようですが、1週間もすれば次第にわかると思います」


 相当丁寧に教えてくれるようだが、こちらとしてはさっさと進んでほしい。

 


 隣でヨゼスが一生懸命にエリザベスにコツを聞いているのだが説明が下手すぎる。


「こう、体内に熱くなったのを、ひんやりとした感じで息をしてハッとするのよ」


 熱いのか冷たいのかはっきりしないし、あまりにも抽象的すぎる。

わかるものも分からなくなりそうだ。

はたで聞いている俺まで混乱してくる。



 40人という数は多すぎるのかあまり一人一人に時間をかけられないようだ。

おそらく武術の時間もこんな感じなんだろう、ほとんど何もしないうちに授業が終わる。

やはり学園長の言う通りに図書館で自習にすればよかったかと後悔を少しするが、そのうちわからないことも習うだろうと気を取り直す。


 エルフのセーネの知識はかなり偏っていて、水、風系統の魔法に特化していて、攻撃をするタイプの魔法もあまり教わっていない。

エルフは基本的に戦闘が嫌いで防御系統の魔法の方が発達しているのだ。

そのため、学園でもたくさん学ぶことがあるだろう。




 教室に戻りエリザべスに聞く。


「武術もあまり1人1人みてもらえなかったの?」


「当然でしょ。それともあなたは違うの?」


 どうやら付きっ切りで見てもらえてるのは俺1人だけのようだ。

かなりありがたい。





 2時間目が終わったので、昼食を食べに食堂へと向かう。

食堂はかなり混雑をしていて、並んで食事を受け取るだけでも10分ほどかかった。

俺が頼んだのはシンプルな牛のステーキに簡単なスープが付いたものだ。

ハロルドさんとやりあったときに相当血を失い、半分貧血状態のありさまだ。

ジュワッと嚙み切った時にあふれる肉汁が身体に活力を取り戻す。

程よい硬さに肉のうまみが身体に染み渡り本当においしい。

昼食を3人で堪能をしていると廊下側の方に人影がすっとできる。


「久しぶりだな、レオン」


 声がした方を見ると1人の男が数人の取り巻きを連れ立っている。

声をかけたらしい男は明るい青色の髪を持ち、母によく似た顔立ちをした男だった。


「あなたとは初めてお会いしたはずなのですが?」


「覚えていないのか?俺だ。クレランスだ」


 クレランス…

確か俺の兄さんだったような…

そういわれれば明るい青い髪に母みたいな顔って、身内に決まっているよな…

しかしまだ確かではないが俺以外の家族の髪はみんな明るい青のような気がする。

父も母もそうだし、この次男のクレランスもだ。

俺一人だけ青に若干黒みがかった髪をしている。

顔の面影も少し前世の顔も残っているし、若干転生する時に前世の顔が混じるのだろう。


「お会いできて光栄です。兄さま」


「うむ、俺もお前のような弟を持てて誇らしいぞ。ただし跡継ぎにはさせないぞ。俺が後継者だ」


 貴方次男でしょ…

完全に長男を裏切るつもりですな。

家族みんなして権力欲がすごい…


「わかってますよ、兄さま」


「物分かりが良くて助かるぞ」


 そういうと戻るぞといい立ち去っていく。


「誰あの人?」


 エリザベスが聞いてくる。


「俺の兄さんだよ」


 かなり悪印象を持ったようだ。


「ほんといやなやつよね」


 そうなのか?もう周りがあんなだから奴ばかりだから慣れきってしまっているよ。

うちの家族は特に物を無駄にすることはないが、みな傲慢そうだ。




 プンスカするエリザベスをなだめながら教室に戻る。

3時間目は自習なので図書館に向かう。

図書館はあらかじめ場所を教えてもらったので迷わずに行く。

この学園の図書館は何万冊もの蔵書が収められていてこの学園生活だけでは読み終わらないだろう。

図書館に入ると本のいい香りがする。

本を読むのは転生前から好きだったしどんな知識を身に着けることができるか楽しみだ。

 


魔法は現実にないので書きにくいです。

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