閑話セーネ
私はセーネ。
今度の春からレンフィールド家に雇われることになった。
レンフィールド家は王国の一番西に位置している、魔物に対しての砦だ。
辺境の守護を任されている。
私の故郷は大陸の北西にあるルードの森にある小さなエルフの村だ。
村人は総勢100人ほど。エルフは少数民族のためこれでも大きい方の集落なのだ。
エルフには排他主義の人が多く、人を格下に見る。そんな風潮が嫌で私は出奔した。自由を求めたのだ。
親たちが絶対に北東に近づくなと言っていたので南西に向かう。
里を出て3日後。うっそうとした森。ルードの清涼な空気を持つ森と違い、ここは暗い雰囲気の森だ。
森を一人で歩いて行くと前方からわらわらと5,6人の薄汚い男たちが現れ立ちふさがる。
「オラオラ、金を出せや。」
カネとは何だろう?
「いやいやまてよ。この女別嬪だぜ。帰ってから犯そうぜ」
「それがいい」
「エルフなんてこんなところに来ることもないのにな」
「ほんと運がいいぜ」
「一生愛玩用だぜ」
口々にわめきたてる。
「お姉ちゃん来いよ。じっとしてれば痛くしないからよ」
「今はな、今は」
ニヤニヤ言いながら近づいてくる。
いやな感じがするので叫ぶ。
「近寄らないでください。」
「ふん、いいだろ」
無理やりつかみどこかに連れて行こうとするので魔法を放つ。
「ウィンドカッター」
近付いてきた2人の盗賊の腕が斬り飛ばされる。
「「っへ?」」
急のことで盗賊たちは何をされたかわからず戸惑う。
斬られた2人は痛みにうめいている。
「警告したはずです」
「このアマ!! てめえ!! 全員こいつを殺せ!!」
ボスらしき男が叫ぶ。短絡的な思考だ。
向かってくる盗賊にウィンドカッターを次々に放ち滅多切りにする。
そうすること1分後。盗賊たちはものを言わぬ肉となった。
気を取り直して道を歩き続ける。
道を歩きあたりが草原となったところで遠くに町が見える。
町まで歩き入ろうと思うと門の横に立っているおじさんから話しかけられる。
「ほら、通行許可証を出しなさい。カードでもいいぞ。」
通行許可証?カード?
「ないなら金でもいいぞ」
「えっとカネって何でしょう?」
「あちゃ、そこまで田舎者だったのか」
「金はものをやり取りする際に使う、価値が統一されているもので国が保証をしてくれるものだ。それを使うことでいざこざを減らしたり、保存がきくようにしてるんだ」
「そうなんですか。私持っていないんですがどうすればいいんでしょう?」
「う~む、しょうがない。私が金を貸してあげるから、中で仕事を見つけて稼いでから返してくれ。お嬢さんは悪さしそうにないからな」
「ありがとうございます。」
「5000ギルだ。ちゃんと返してくれよ。警備隊駐屯所にエクに渡せっていえば大丈夫だろう」
手のひらに銀色の貨幣が5枚。
「これでどれほどの価値ですか?」
「一日過ごせるぐらいだ。あと仕事は冒険者ギルドに行けば仲介してくれるからな」
そういわれ、道行く人に場所を訪ねながら冒険者ギルドまで歩いていく。
道を歩いている人からなめるような視線を向けられたため、足を速める。
石造りでできたギルドの中に入る。
「いらっしゃいませ~。本日はどのようなご用件でしょうか?」
統一された白と藍色の制服を着たカウンターにいる女性から話しかけられる。
「仕事を探しに来ました。」
「斡旋ね。あなたは何か特技がある?」
「特にありませんが、魔法を使えます」
「っえ?貴族の人ですか?無礼を働いて申し訳ありません」
「貴族じゃないわよ。エルフよ」
「えっとエルフでしたか。めったに見られないので失念していました。」
耳を見ながら言われる。
「魔法使いは珍しく普通じゃできないこともできるので重宝されてるんです。」
確かに魔法使いが必要な仕事は依頼料もゼロが2つ違う。
そして働くこと数日。
5万ギルを稼ぎ、エクさんにそのうちの5000ギルを返した。
この数日で仲良くなった受付嬢にとある依頼を教えられる。
________________________________________
魔法使い募集中
依頼人:レンフィールド家
依頼期間:不明
報酬:年500万ギル
注意事項:一年中住み込みで働いてもらいます。
中途解約不可
_________________________________________
破格の条件だ。
受付嬢にこの依頼を受理してもらいレンフィールド領まで行き、領主の住んでいる都市まで行く。
要塞みたいな都市にたどり着く。
ここであってるのかしら?
入り口にいた門番に話しかける。
「この依頼を受けてきたのですがここであっているのでしょうか?」
依頼書を見せながら聞く。
「ああ、場所はあっているが・・・屋敷まで案内しよう。俺じゃよくわからないからな。上のものに任せるのがいいだろう。」
その騎士に先導されついて行く。
「俺はユウエルというんだ。お姉ちゃんはどこから来たんだい?」
いろいろ詮索してくる。
後ろから見ると首筋と耳が赤くなっている。
なんでだろう?
ほどなくして領主の屋敷にたどり着き、立派な扉の部屋の前に立つ。
「ユウエルです。入ってよろしいですか?」
「どうぞ」
部屋の中に入る。部屋は甘ったるい匂いがする。
中には後ゴテゴテに着飾った30後半の女性がいた。
「その人は?」
ユウエルは依頼書を手渡しながら
「依頼を受けた人だと言ってました」
「そうあなたが・・・ユウエルご苦労様。下がりなさい。」
ユウエルが退出する。
「あなたが依頼を受けてくださったのね。耳を見るとエルフのようね。いいわ歓迎するわ。エルフならはずれはないしね」
あっさりと認められる。
「依頼内容は子供たちに魔法を教えること。たぶん4人の子供を教えることになると思うわ。」
頑張らないと!!
翌日顔合わせを行う。
部屋に男の子が入ってくる。
髪は青色。短髪。生意気そうな顔だ
そんな考えは表には一切出さず。
「こんにちは、シルヴェストル。今日から魔法の先生をやるセーネよ。よろしく。」
「俺は貴族だ。命令する愚民め。一切しゃべるな。動くな。」
「えっ?」
そういわれるといきなり胸をもまれ押し倒される。
いくら世間知らずでもこれはどういう意味か分かる。
急いで引き離す。
子供なのでいくら脆弱なエルフでもなんとかなる。
「どういうこと?」
「動くなって言っただろこの愚図。黙って従え」
今まで言われたこともない罵倒に頭が追い付かない。
「お母さまに言いますよ」
「息子の俺様と他人の言うことどちらを信じると思う?馬鹿でもわかるだろう」
言いたい放題いうと
「興が覚めたぜ。つまらん」
捨て台詞を残しながら去っていく。
しばらく動くことができなかった。
親に言っても無駄だろう。
ずっと涙を流し続けた。
この前のは機嫌が悪かっただけだろうと思い歩み寄ろうとしてもまったく態度を改めようとしない。
罵倒をしまくる。
次第にいうのもあきらめる。
何とか最低限の魔法は覚えさせて卒業させた。
次はまともなのが来てくれるのを願って。
また裏切られる。
長男と似たような顔つき。
次男も長女もまた性格が腐っている。
「俺の女になれ」
「ふんちょっといい顔してるからって調子に乗って」
「俺の言うことがきけないのか?」
「あんたなんてブスよブス」
「ふん、側室に入れてやるよありがたく思え」
「なんもできないくず」
「対等だと思ってんのか?」
「私は貴族。私の方が偉いのよ」
ありとあらゆる暴言。
純粋だった心は壊れていく。
早く学園に行ってくれることを願って耐え続ける。
学園に行ってくれた時は目に涙をし、感謝した。
契約を切りたいが、中途解約は不可。あと一人残っている。これに耐えれば…
3男は5歳から始めるらしい。
今までのように8歳からでいいのに…
なぜ今更…
ノックをされ扉を開け入ってくる。
入ってきたのは5歳ぐらいの男の子。
他の兄弟と違い髪の毛は濃い青だ。
目鼻立ちも通っていてとても整った顔をしている。将来はイケメンになるであろう顔だ。
「あなたね。今度の生徒は」
「はいレオンです。これから5年間よろしくお願いします」
まともに返してくれるなんて。
そのまともが新鮮だった。
世界に色が戻ったように感じられる。
レオンとの魔法の授業はとても楽しかった。
1言えば10理解してくれる。
教えるのが楽しくて仕方なかった。
つらい2年はあれほど長かったのにこの5年は本当に短い。
毎日一緒にいるのが楽しい。
ついに私に教えられることはすべて教えきってしまった。
これ以上教えることもない。
ついに楽しい時間が終わるのだ。
別れるころになって自分がレオンに恋をしていたのだと気づく。
別れたくない!!
「一分以内に嵐を作りなさい」
エルフの長老たちですら作り上げるのに一時間もかかるほどの大魔術。
これで別れないで済む。
レオンを侮っていた。
私が教えたすべてを応用し、見たこともない方法で嵐を起こした。
私の負けだ。
最後に嫌われていたとしても告白をしよう。
このまま何も言えなかったら一生後悔する。
魔力不足に陥り気絶して、膝枕をされてるレオンの髪を記憶に刻み付けるように撫でる。
レオンが起きて飛びずさる。
「合格したの?」
「ええ」
認めたくはない。
「ここにはもう2度とこない?」
胸が張り裂けそうだ。答えを聞きたくない。
キスで口をふさぐ。
涙の味がする。でも言い切った!
もう私だけの追憶にしよう!
でも返事を聞きたい!!
「私のことが好き?」
目に涙がにじむ。
「もちろん。僕もセーネのことが好きだよ。」
その答えを聞いたとたん私の脳は歓喜によりしびれてしまった。
口づけをされ舌を絡ませる。
今度のは甘い味がした。
よかった。勇気をもっていって。
これからも一緒にいられる。
何かを言っていたがなんも聞こえなかった。
その日は一日中上の空だった。
これほどの甘い思いに浸れたのは初めてだ。
景色が輝いて見える!!
ユウエルは一目ぼれだったようです。
エルザは純粋というより世間知らずだった。
5年も一緒にいれば恋心一つわきます。チョロインではありません。




