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始まり

 朝のまだ早いうちカンカンと打ち鳴らされる、刃と刃がぶつかり合う金属音。青白い光が飛び散る。

俺とカインさんが模擬戦闘をやっているのだ。

年齢は9歳。身長はまだ大人とは比べ物にならなくても武術は下手な大人を圧倒する。

事実2年ほど前にユウエルとは試合をしもう勝っているのだ。

かなり接戦だったのだがぎりぎり打ち負かしたのだ。今ではかなりの勝率を誇るとは言え勝った時は本当にうれしかった。ユウエルも心の中では複雑な心境なのだろうが嫌な顔一つせず成長をほめてくれた。

自分でも申し訳ない気分になってくる。

俺だって前世で7歳の子に喧嘩で負けてしまったらかなりむなしい。

いくらその子が天才だからと言われても2、3日は寝込んでしまうかもしれない。



 

 おっと、今は目の前の敵に集中しないといけない。


「今、考え事をしていましたね」


 そういわれると同時に放たれる幾本もの剣跡。

やはり団長なだけあって他の騎士より一味も二味も違う。

圧倒的な剣速。隙の無い動き。どこから打ち込んでも対処をされる。圧倒的な体力。

この前の大氾濫の時この人を一人放り込んでおけばすべてうまくいったんじゃないかと思うぐらいの強さだった。


 ひたすらいなして後ろに下がりやられるのを防ぐ。

よけても受けてもずっと続く剣戟。

圧倒的な質量をもつ相手の攻撃はかするだけで効く。

既にどのくらい後ろに下がったのだろうか。

攻撃の間のわずかな隔にねじ込むが、余裕をもって対処される。

極限まで集中力を高める。

攻撃の先を読もうとする。

少しづつ受ける傷も浅くなっていく。


【未来視lv1を取り戻しました。】


 カインさんの攻撃の軌道がわかる。

筋肉の動きから導き出される相手の動き。

これで勝てる!!!











 結果は惨敗だ。あちこちにあざ、切り傷を作られボロボロになった。

途中で未来視のスキルを手に入れたはいいのだ。

攻撃のかなりをよけられるようになったのはよかったのだが、防御を崩せずそのままバルディッシュを弾き飛ばされ負けた。しかも予測して攻撃を避けようとするものの、さらに修正をされあまりスキルの意味を果たしていなかった。崩す手をあとから振り返ってみても全く見つけられない。その化け物じみた動きすらも本気を出していない雰囲気すらあるのだ。

一生勝てなさそうだ。それとも大人になったら変わるのだろうか。

あれほどの動きがいつかできるようになりたいものだ。




 エルザに手当をしてもらいセーネのところに行く。




 魔法は4属性魔法のスキルはレベルが2、つまり上級者レベルにまでなった。

基本的には部屋で講義を受け、部屋の中でもできる危なくない魔法で制御の練習をしているのだ。

大魔法の構築にまでもっていくイメージの仕方も習ってはいるが、セーネ曰く俺は大量の魔力を込めるだけでかなりのダメージになるためそこまで教えてもらっていない。

連発をできる小技の方だ。それでも莫大な魔力を込め放たれる魔法は小技でも脅威の威力になる。

瞬間的に魔法を構築する。



 ファイヤーボール!!


 半径10センチほどの火の玉ができる。

今の訓練はセーネに言われた魔法を1秒以内に作る訓練だ。

瞬間的な判断力、イメージ力が問われるのだ。


「ウォーターボール」


 急いで作る。

ひたすら繰り返し、体に叩き込む。

この訓練には随分慣れてきた。


「もうこれは完璧ね」


 どうやら合格ももらったらしい。

魔法は基礎とセンス、魔力量が勝敗を分ける。

今までセーネから習った魔法はかなりある。

基本のボール型、刃型、一点を集中的に攻撃するランス系、広範囲を巻き込むストーム系、散弾系、遠距離専用の弓型、防御系のシールド型などだ。

そのほかにもいろいろ形があるがそれは本人の力量次第だという。

それに属性をイメージして魔法の出来上がりというわけだ。


「私も教えることがあまりなくなってしまったわね。それじゃこれからテストをするわ。それに合格したら卒業ね」




 一度町の外まで出る。

そしていったん休憩を取り精神的な疲労を回復させる。それと同時に汗ばんだ体も吹く。

これで終わりかと思うと感慨深いものがある。




 いよいよ始まる!!


「試験の内容は1分以内に嵐を作ること。それでは始めなさい。」



 なるほど、天候を変えるほどの大魔法など今まで一度もやったっことがない今まで習ったことが合わせ、いかに応用できるかだ。

転生前、転生後あらゆる知識を引き出す。

イメージを固め、魔力を思いっきりフル回転させる。

その間に無意識レベルで幾多もの火属性、水属性の散弾を間髪なく空に打ち出す。

熱せられた高湿度の空気を風属性のストーム系で集めさらに圧力を高める。その間にも打ち続ける。

空気は明らかに雨が降る前のと同じだ。ここまでで30秒。

ここからは基本ではなく、応用力を試される。

今まで一度もやったことのない動き。台風みたいに中心に向かい回転する気流を作る。

空には真っ黒い雲ができ、巨大化していく。

魔力は残り半分を切る。

出来あがった雲の中を風属性の魔法で乱回転させ、雲の中で電位差を利用し放電をさせる。

最後に残った魔力すべてを水と火の散弾につぎ込む。

赤い光線、青の水柱が次から次へと雲に衝突する。

今にも降りそうだった雲は最後の一押しによりポツポツと雨が降る。

次第に雨は激しくなりあたりは豪雨に見舞われた。

身体はびしょぬれになり、5m先も見えないほどの土砂降り。雨が激しく地面をたたき、雷の落ちる轟音の中一言。


「合格よ」


 その声を聴き、最近はあまりなかった魔力不足による気絶をする。








 意識が覚醒する。

何か甘い香りに包まれ、暖かく柔らかいものに顔を乗せている感じだ。

誘惑を振り切り目を開けると、目の前にセーネの顔があった。

不意打ちをくらい一瞬頭がフリーズする。

そして急いで頭をどける。

顔が真っ赤になる。セーネも顔が真っ赤だ。

目を合わさずに聞く。


「合格したの?」


「ええ」


 若干声が上ずっている。


「もう来なくなるの?」


「そんなことないよ。毎日ここに来るよ。」


「好きよ」


「えっ?!」


 顔をそちらに向けようとすると頬に手を添えられ唇に柔らかい感覚がする。

セーネの整った顔が驚くほど近くにある。

一度唇を離され改めて聞かれる。


「私のことが好き?」


 もちろんだ。セーネのことははじめてあった時からずっと気になっていた。

セーネのきれいな心。純粋な心。整った顔立ち。すべてが好きだ。

セーネの形のいい瞳をのぞき込む。

瞳は不安で揺らいでいる。僕の顔も歪んでいる。


「もちろん。僕もセーネのことを愛してるよ。」


 今度はこちらから口づけをする。

しばらくの間、お互いの気持ちを確かめ合うように舌を絡ませる。

あぁやっぱりセーネが好きだ。


「毎日来るけどまだ内緒にしよう。」


「えぇ」


 この世界にまた一組のカップルが誕生した。

外は嵐もやみさわやかな青空が広がっている。

そして、月日は経つ。


これで、幼少期終わりです。

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